36話 漆原夏海

打ち上げの次の日、学校が終わり、私は夏海と以前行ったデパートではなく、ショッピングモールへと向かっていた。


それは、なぜかというと…



ー お昼休み 屋上 ー


お弁当を食べ終わり、みんなでデザートを食べていると、朝日が質問する。


「ねーねー!みんなの好きな甘いものってなにー?」


「ケーキ!!!」


私は即答した。


みんなが、答えるの早すぎー!と笑う。


だって好きなんだもん…。


「かずきはケーキだけどみんなはー?」


再度、朝日が質問をすると、それぞれが答える。


まずは、雪。


「わ、私はカステラが好きです…!牛乳との組み合わせが好きで…!」


そう言い、視線を下に落とすと、がっくりとする雪。


みんなは、んー?という顔をしていた。


私だけは雪の理解者だからね!がんばろ!


と、心の中で雪の気持ちを察し、応援する。


そして、次は楓さんが答える。


「わたくしは、マカロンね!今度本場フランスから取り寄せた物を持ってくるわね!」


楓さんの言葉にみんなで、喜ぶ。


ちなみに、私はマカロンも大好きです!


次は夏海が答える。


「私はチョコアイスかなぁ!前にかずっちと一緒に食べたら、大好きになっちゃって!」


それを聞き、みんなが一斉にこっちを見て、ずるい…と言う。


うん…。今度みんなで一緒に食べようね…。


最後に、朝日が言う。


「私は、クリームパンだなぁ!部活終わりによく食べるんだぁ!」


みんなが、クリームパン美味しいよねー!と盛り上がる。


ちなみに、私もクリームパン大好きだよ!


こうして、甘いものの話をしていると、夏海が突然叫ぶ。


「甘いもの食べたいー!今日みんなでクレープ食べに行かない!?」


「私は今日生徒会休みだから行けるよ!」


「行きたいー!けど、今日から部活なんだぁ…」


「行きたいです…!でも、今日は図書委員のみなさんとの約束が…」


「行きたいわね!だけど、今日は従姉妹が遊びに来てるのよ…」



こうして、私と夏海以外は予定があった為、みんなとは今度絶対行こうね!としっかり約束して、今日は二人だけでクレープ屋さんがある、ショッピングモールへと向かっていたのである。


ちなみに、その後は楓さんの従姉妹の話で盛り上がったけど、それはまた今度。



ー 現在に戻る ー


ショッピングモールへと向かっている途中、夏海がすごく嬉しそうにしているので質問する。


「夏海、すごい嬉しそうだけど、そんなにクレープ食べたかったの?」


「それもあるけど…!今日は、かずっちと二人だけの初デートだからね!嬉しいんだぁ!」


それを聞き、私も嬉しくなり二人で手を繋ぎながら歩く。


しばらく歩いていると、歩道橋を渡ろうとしてるおばあちゃんを見かけたので、一旦手を離し、夏海と一緒に支えてあげながら渡った。


おばあちゃんがお礼を言い、あなた達は良い娘達だねぇ、と笑顔で褒めてくれ、さらにはお饅頭をくれた。


それから、おばあちゃんに手を振り別れると、また夏海と手を繋ぎ、歩き出す。


また、しばらく歩いていると、今度は別のおばあちゃんに道を訪ねられる。


おばあちゃんもショッピングモールに行きたかったらしいので、一緒に向かうことにした。


ショッピングモールへ着くと、おばあちゃんにお礼と、あなた達は優しい娘達だねぇ、と笑顔で褒められる。


それから、おばあちゃんとまた手を振り別れると、夏海と手を繋ぎクレープ屋さんへと向かったのだけど…。



途中で、すごく困った顔をして、今にも泣きそうな女の子を発見する。


どうしたのか理由を訪ねると、どうやらお母さんとはぐれたみたいで、最初は迷子センターへ連れて行ってあげようとしたんだけど、女の子が、お母さんさがすー!と泣き出してしまい、一緒に探すことに。


なんとか、お母さんを見つけると、女の子も笑顔に戻り、お母さんもすごく感謝してくれた。


二人に手を振り別れると、辺りはすっかり暗くなっていて、急いでクレープ屋さんへと向かう。


だけど、もう閉店時間になってしまい、今日は諦めるしかないね、と話し、帰ろうとした時だった。


突然、背後から話しかけられる。


振り返ると、ショッピングモールまで道案内をしたおばあちゃんだった。


なんだか、落ち込んでるけどどうしたんだい?と訪ねられる。


理由を話すと、それならこれをあげるよ、と言いクリームあんみつを二つくれる。


さすがに悪いからと断ろうとすると、さっきのお礼だから気にしないの、と言うおばあちゃん。


お言葉に甘え、受けとるとお礼を言い、手を振り別れる。


どこかで食べて帰ろうかと、話していると今度はさっきの女の子とお母さんに話しかけられる。


どうやらお礼をするために私達を探していたらしくてケーキが入った箱を手渡される。


私達はお礼を言い、受け取ると手を振り別れる。


そして、近くのベンチに座り、夏海と話す。


「今日はいっぱい良いことしたねー!」


「うん!それになんだかいろいろ貰っちゃったね!」


クレープを食べられなかったのは残念だったけど、貰ったものを見ると、助けた人達の笑顔を思い出し、二人で微笑んでいた。


すると、夏海がふと言った。


「私が、かずっちを初めて見かけたのも、人助けしてる時だったなぁ!」


「あー!そういえばそうだねー!」


「あの時から、かずっちのこと好きになって!ほんとよかったなぁ!」


「好きになってくれてありがとね!」


「かずっちだーいすき!」


そう言い私を抱きしめる夏海。


「私も大好きだよー!」


私も負けじと抱き返す。


そして、二人で抱き合っていると夏海が照れながら言う。


「ねぇ…かずっち…」


「ん?どしたの?」


「あのね…ここで…キス…しない?」


「ここで、するの!?」


私は突然のことで驚いた。


「うん…。だめかな…」


「恥ずかしいけど…わかった…」


そう伝えると二人でベンチに座ったまま、顔だけ向き合い、見つめ合う。


月明かりに照らされた夏海はいつも以上に綺麗で鼓動が早くなる。


辺りは静かで、胸の鼓動が聞こえてしまいそうだった。


誰かに見られてしまうんじゃないかと、考えた。


だけど、夏海とキスをしたいと思い、それ以外考えられなくなる。


「それじゃあ…するね…」


「う、うん…」


そう返事すると、夏海が目をつぶる。


肩にそっと手を置き、顔を近づけた。


夏海は私が近づいてくることを感じ取ったのか、緊張し震えている。


私も徐々に近づくにつれ、緊張から震えてくる。


さらには胸の鼓動も早くなる。


顔が熱くなり、呼吸もしづらい。


だけど、今はそんなことを気にしてられない。


夏海とキスをしたい。


その一心で唇を近づける。


そして…


夏海の唇と私の唇を重ねる。


不思議と唇を重ねた瞬間、震えが収まっていた。


心が幸せな気持ちでいっぱいになる。


夏海の柔らかい唇に唇を重ねていたいと思った。


ずっと、こうしていたかった。


名残り惜しいけど離す。


夏海も同じ気持ちだったのか、あ…、と言葉を漏らす。


もう一度しようかと思った。


だけど、今は二人で余韻に浸る。


「私も…かずっちとキス…できたんだね…。嬉しいな…」


「うん…私も嬉しいよ」


お互い照れて顔が見れないでいた。


しばらくすると、夏海が笑顔で感想を言う。


「あさっちが言ってた通り、かずっちのキス優しいね!」


「そうなのかなぁ…」


「うん!それにこの唇!柔らかくて気持ちよかったよ!」


そう言い夏海は私の唇をツンとする。


「や、やめてよぉ…」


「かずっち照れてるー!かわいいー!」


「もー!やーめーてー!」


お互いが笑顔になると、いつまでもここにいるわけにはいかないので、二人で立ち上がり歩きだす。




途中、夏海が、ほっ!ほっ!と言いながら大股で歩き、振り返ると私の前に立つ。


「ねーねー!かずっちー!」


「うん?どうしたの?」


「これからもいっぱいキスしようねー!」


そう言い私の唇にキスをする。


「うん!いっぱいしようね!夏海!」


突然のことで驚き、恥ずかしかったけど、はっきりと気持ちを伝えた。


その返答に夏海も喜んでくれて、二人で仲良く手を繋ぎ、帰宅する。


こうして、今日夏海との初めてのキスが終わった。

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