16話

その後、先輩がもう一度遊びましょ!というのでまた滑る。

すると先輩がもう一回!と言う。


「せ、先輩!?またですか!?」


だめかしら…とすごく悲しそうな顔をする先輩。


よほど気に入ったのかなと思い、いいですよ!と言うと先輩が今度はすごく嬉しそうにする。


私は怖がったり、悲しそうにしたり、嬉しそうにしたり、いつもの生徒会で見る凛々しい先輩とは違った部分が見れて、なんだか嬉しかった。



そうして、何度目か滑り終えると先輩が満足したようなので、練習していた真白達の元へと向かった。


三人はまだ練習していたみたいで、こちらに気づくと練習を止めた。


「王子様…!楓先輩…!私少しだけど泳げるようになりました…!見てほしいです…!」


泳げるようになったのが相当嬉しかったのか、両手でガッツポーズをしながら言う真白さん。


「真白さんすごいねぇ!見せて見せてー!」


「ええ!是非見たいわ!」


私と先輩がそう言うと、嬉しそうに練習の成果を披露しようとしてくれた。


そんな真白さんを見守る。


「ゆっきーすっごい頑張ったんだよー!初めは潜るのも怖がっててね」


「そうそう!でもみんなと一緒に遊びたいからって!」


朝日と漆原さんが嬉しそうに言った。


それを聞き、私と先輩が真白さんがんばれ!と応援する。


真白さんが緊張しながら、はい…!がんばります…!と返事をすると、プールに顔をつけ泳ぎ出す。


手を前で重ね、バタ足で泳ぐ真白さん。


大体10Mほどを泳いだところで足を着き止まる。


全員で拍手をし、私はプールの中に入ると真白さんの近くに行き、頑張ったねと頭を撫でてあげた。


すると真白さんは頭を撫でられ嬉しそうにしていたのだけど、急にガクッと崩れそうになる。


私が咄嗟に支えてあげると真白さんが言う。


「ご、ごめんなさい…。安心したら力が抜けちゃって…」


「ううん。私が支えるから一緒に上がろ」


「あ、ありがとうございます…。やっぱり素敵です…」


そう言い私の腰に腕を回し、歩き出そうとしたのだけど…。


「お、王子様…。あの…ですね…」


どうしたのかなと思い、真白さんの方を向くと、なんだか恥ずかしそうにしている。


「その…ですね…」


どうしたんだろう…。


「王子様の手が…」


私の手がなんだろうと、見てみるとやっと気づいた…。


咄嗟に支えた私の手が、真白さんの…胸に置かれていることに…。


私はすぐに腰の辺りに手を移すと真っ赤になりながら謝った。


「い、いえ…気にしないでください…!それに王子様なら…いいですよ…」


真白さんが頬を赤く染めながら言った。


そんな真白さんの言葉に動揺しながらも、なんとかプールから上がると、三人が真白さん大丈夫!?と言う。


真白さんが少し疲れたみたいで…と言うと休憩することに決まった。


その後、朝日から二人共顔が赤いけど、どうしたの?と聞かれたけど、なんでもないです…としか答えられなかった…。


うぅ…。


気づかなかったんだもん…。


真白さんごめんね…。


でも、私より少し大きかったよ…。


うぅ…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る