11話

お風呂から上がり現在は晩ご飯を食べようとしているところ。だったのだが…。


リビングに行くと、どうやらお母さんは未だ帰ってきていないみたい。


「お母さん…ほんとに朝日のお家に行ってるんだね…」


「そうみたいだねぇ!あっ!それでね、かずきのお母さんに頼まれたの!」


なにを?と聞くと朝日が答える。


「かずきと一緒に晩御飯を作ってほしいって!」


「えぇ…お母さんそんなこと頼んでたの…」


お母さん泊まりに来た朝日になに頼んでるの…。そして朝日の家でなにしてるの…。


「うん!ハンバーグの材料が冷蔵庫にあるみたいだから一緒に作ろ!」


そう言い朝日はやる気満々だ。


私はある程度の練習はしていたので作ることは出来る。


それに朝日も学校のお弁当を自分で作るくらい料理が得意だ。


今日屋上で食べさせてくれたお弁当のおかずも本当においしくて習いたい程だった。


これなら大丈夫かなと思い、それじゃあやろっかぁと言う。


がんばろー!と朝日が言い、さっそく料理をすることにした。


まずはお米の準備をし、冷蔵庫を確認すると、確かにハンバーグの材料があったので作ることにする。


二人で並び、朝日が玉ねぎを切り、私はビニール手袋をしてひき肉をこねていた。


ひき肉をこね終わると朝日が後は任せて!というので私はサラダを作ることにした。


そして晩御飯が完成する。


ハンバーグとご飯、サラダをテーブルに並べる。


「かんせーい!」


朝日が嬉しそうに両手を上げ言った。


「おつかれさまぁ!美味しそうにできたねぇ!」


「うん!さっそく食べよ!」


私はそうだね!と言い二人で、いただきますをした。


朝日がまずはハンバーグ食べてみてー!というので一口食べる。


「美味しい!」


本当に美味しかった。


焼き加減もちょうどよく、なにより甘く仕上がったデミグラスソースが私の好きな味だった。


ただ、お母さんが作ってくれるソースの味に似てたので朝日に聞いてみた。


「実はね…さっきかずきのお母さんが、かずきの好きな味を教えてくれたんだ!上手く出来てよかったぁ!」


「そうだったんだぁ。ありがとう朝日」


そう言い朝日の頭を撫でてあげる。


朝日はえへへ…と嬉しそうにする。


そんな朝日を見て、かわいいなぁ…と思ったのは内緒。




晩御飯を食べ終え、食器を二人で洗っている時に朝日が言う。


「えへへ…なんかこうしてると新婚さんみたいだねぇ…」


「違うと思うよぉ」


「えー。新婚さんみたいだよー」


「違うよー」


「ざんねーん」


そんな会話をしながら、終わらせると一緒に部屋に戻ることにした。



部屋で雑談をしてると、そろそろ寝よっかという話になり準備をする。


だが、ここで気づく。


私の部屋にベッドが一つ、そして予備の布団がないことに…。


「朝日…うち予備の布団ないよ…」


「うん?別になくて大丈夫だよ?」


え?という顔をしていると朝日が続けて言う。


「だってかずきのベッドで一緒に寝ればいいんだもん!」


なるほど…たしかにそれなら…いやいや、それはさすがに…と思い断ろうとしたが朝日が強引に決めると二人で一緒のベッドで寝ることになってしまった…。


私今日緊張して寝れなさそう…。




二人でベッドの上で横になると、電気を消す。


部屋の中は月明かりが照らしているだけになった。


「えへへ…かずきの匂いがいっぱいだぁ…」


朝日が私のベッドに顔を埋めながら言う。


「何言ってるの…それに今日は朝日も同じ匂いでしょ…」


「そうだったぁ!嬉しいなぁ…」


もぉ!早く寝るよ!と伝え、寝ようとしたのだが…。


朝日が今度は私の胸に顔をうずめてくる。


「ちょ、なにしてるの!?」


「うん?かずき成分補充してるのー」


私は離れるように伝えるが全然離してくれない…。


それどころか気づけば私の上に覆い被さるように乗ってくる。


「あ、朝日…重いよ!」


「あー失礼なー!私重くないよー!」


「降りてよぉ」


「やだー」


まったく降りてくれそうにない朝日。


それならと、朝日をくすぐる。


「あはは!かずきやめてー!またくすぐるとかずるいよー!」


よほど、くすぐったいのか抵抗しようとする朝日。


だが、私は降りてくれるまでやめない。


「わ、わかった!降りるからー!」


そう言うとやっと降りる朝日。


「はぁはぁ…あーくすぐったかったぁ。もー汗かいちゃったよぉ」


「はぁはぁ…朝日がなかなか降りてくれないからだよ…」


お互い必死だったのか息が荒くなっていた。


そうして、息を整えると朝日が言う。


「あのね…かずき…」


うん?と言い朝日の方を見ると真剣な顔をしている。


「私のこと抱きしめてキス…してくれないかな…」


「え!?急にどうしたの!?」


朝日の急なお願いに私は混乱する。


わ、私が朝日を抱きしめて、キ、キスするの!?え?私が!?


抱きしめられるのですら、まだ恥ずかしくて抵抗があるのに、抱きしめて…しかもキス!?


抱きしめるのはまだいい…だけどキスは…。


「だめ…かな…?」


悲しそうな顔をする朝日。


「だ、抱きしめるだけなら…でもキスは…ちょっと…私ファーストキスもまだだし…」


「それならほっぺでも…だめ…?」


「うーん…」


しばらく考えたが朝日がすごく悲しそうなので決心する。


「ほっぺなら…いいよ…」


それを聞いて安心したのか笑顔になる朝日。


こうして私は朝日を抱きしめて頬にキスをすることになった。




ベッドの上で、起き上がり二人で向き合う。


「そ、それじゃあいくね…」


「う、うん…」




最初に朝日を抱きしめることから始める。


図書室で真白さんを後ろから抱きしめることになったけど今はそれ以上に緊張していた。


朝日も緊張しているようで鼓動が早くなっているのを感じた。


私も朝日に鼓動が早くなっているのがバレてるんだろうなと思った。


朝日からは普段、私が使っているシャンプーの香りがする。


だけど不思議で使い慣れてるシャンプーの香りなのに、朝日からすると思うとすごくドキドキした。


朝日をさらにぎゅっと抱きしめる。


そんな朝日も私をぎゅっとする。


そして朝日が吐息を漏らし、かずき…大好きだよぉ…とつぶやく。


私はドキッとしつつも、耳元でありがと、と言い抱きしめ続ける。


朝日が、んっ…と反応する。


それからはしばらく抱き合い、そして離す。




さて、ここからが問題だ…。


ほっぺならいいよと言ったけどキスすることに変わりはない…。


うぅ…。今までで一番緊張するよぉ…。


緊張をほぐす為に朝日の髪を撫でると、朝日が気持ちよさそうにしている。


そして、お互い見つめ合うと朝日が目をつぶる。


月明かりに照らされ朝日の頬が紅潮しているのがわかる。


そんな朝日を見ているとなんだかすごく愛おしい。


このままだと唇にキスをしてしまいそうだったので、意を決して朝日の頬に自分の唇を近づける。


ドキドキしすぎて爆発するんじゃないかと思った。


そしてとうとう私の唇が朝日の頬につく。


朝日の頬は柔らかくなんだか気持ちがよかった。


そうして唇を離すと気づけば朝日は泣いていた。


私なにか失敗したのかと思い理由を聞くと朝日が答える。


「かずき…ありがとね…私のわがまま聞いてくれて。私かずきのこと好きになってから…かずきにしてほしいことがたくさんあって…。やっとその一つ叶ったんだ…。それが嬉しくて…。ごめんね…」


「でも私、朝日の気持ちに応えてあげられなくて…」


ごめんね…と言いかけると泣いていた朝日が笑顔で答える。


「ううん…今はいいの!でもいつか絶対私のこと大好きにさせてあげるんだからね!他の三人にだって負けないよ!」


そう言い朝日が私の頬にキスをし、抱きしめる。


そうして、今夜は朝日に抱きしめられて眠ることになった。


いつか…そんな日が来るのかな…と考えながら。

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