7話

屋上での一件を終え、不安が残ったが今は気にしてもしょうがないと思うことにし、午後の授業が始まるのを待っていた。


すると隣の席の漆原さんがしまった…と呟いた。


どうしたのか気になり理由を訪ねるとどうやら次の授業の教科書を忘れてきてしまったようだ。


漆原さんが転校2日目で忘れ物とか先生に目をつけられちゃうかな…と落ち込んでいる。


別のクラスの朝日に借りにいこうにも、まもなく授業が始まる時間だったので、それなら私の教科書一緒に見ようよと、提案する。


うちの学校は二人用のスクールデスクの為、席を寄せても先生に教科書を忘れたことがバレるようなことはないだろう。


漆原さんは嬉しそうに、お願いしますと言うと席をこちらに寄せてくる。


そして先生が教室に入ってくると同時に授業開始のチャイムが鳴った。


こうして午後の授業が始まったのだが…。



授業が始まりしばらくすると漆原さんが先生にバレないように小声で話しかけてくる。


「ねぇかずっち…教科書一緒に見ようって言ってくれてありがとね…」


私も小声で返事をする。


「どういたしまして。それに先生に怒られたらかわいそうだし」


「うん…かずっちはやっぱり優しいなぁ…」


そう言いながら微笑み、こちらを見てくる漆原さんに少し照れ顔を背けると漆原さんは、あー照れてるーかわいいーと言い微笑んでいた。


またしばらくすると漆原さんが席をこちらへと寄せてくる。教科書が見えにくかったのかなぁ、と思っていると右肩になにかが軽く触れた感覚があった。


気になり横を向くといつの間にか漆原さんが肩が触れるまで近づいてきていた。


それに驚き小声で漆原さんに質問する。


「漆原さん…?なんか近くない?」


すると漆原さんはそう?という顔をする。


屋上での一件以来少し警戒しすぎているのかなと思い、気にするのをやめて、前を向き授業に集中することにした。


だが今度は机の上に置いていた右手がなにかに包まれる感覚があった。


気になり右手を見ると、漆原さんが私の手を握っていた。


「う、漆原さん…!?なんで手を握ってるの…!?」


「かずっちの手ちっちゃくてかわいいから触りたくなっちゃった…」


「あ、ありがと…でも恥ずかしいから放して…」


「えー…放さないとだめ…?」


「お願い…」


「はーい…」


そう返事をするとやっと放してもらえた。


漆原さんがしょんぼりとしているが気にしたら負けだ。


それにしても午前中はいつも通りだったのに屋上の一件以来、漆原さんがやたら積極的になっている。


どうしたものかと考えていると漆原さんがノートになにかを書いているのが聞こえた。


真面目に授業を受けることにしたのかなと思っているとノートをこちらに寄せ、書いていた文字を指差して見せてくる。


えーと…なになに…




キスしていい?




声を出しそうになった。


なんとか耐え、返事を書くことにする。


だめ


また漆原さんが返事を書いている。これがしばらく続く。


ほっぺは?


だめ


おでこも?


だめ


けち!


はずかしいもん


抱きついていい?


今はやめて


あとでいっぱい抱きつくからね


ここで返事に失敗したことに気づいたのだけどもう手遅れだった…。


そして漆原さんは満足したのか最後に耳元で


「大好きだよ」


と囁くと授業を真面目に受けた。


私は授業が終わるまでずっと赤面していたのは内緒だ。


そして、授業が終わり休み時間にいっぱい抱きつかれたのは言うまでもなかった…。

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