第19話 生意気な司

 カフェを出た俺は優奈と奈々とで忙しい時間を過ごした。


 奈々はいきなり服屋さんに俺を連れてきて、似合いそうな服などおすすめしてくれた。


 奈々がほぼ強制的に買わせるものだから、結構金を使ってしまった。


 それと、美容室にも行かせて陽キャお兄さん美容師に髪を切ってもらったり、髪のセッティングの仕方などを教えてもらったりした。

 

 悠生と大志はあまりオシャレなんかに興味がなかったため、俺もウニクロで売っているものを適当に買うだけだった。

 

 しかしこの二人と一緒にいるだけで、まるで自分が別の人間になるような感がした。


 奈々は変わった俺を揶揄うように終始ニヤついていて、優奈はなぜか周りの女性をめっちゃ睨んでいた。


 最後には、俺がいつ桐生家に行くのか、その日付を決めた。


 んで、一日たった今日、おしゃれな服を着て髪をセッティングしてから大学へ行くと、


「司!お前どうした!?」

「ほお……これはこれは大変身を遂げたでござるか。司くんが遠いところへ……悲しい」


 いつも連んでいる悠生と大志が目を丸くした。

 

 ちょっとおしゃれな服を着て、髪いじっただけなのに大袈裟だ。


「んだよ。ちょっとオシャレしただけだろ?俺はどこにも行かないから。大志、次のアニメ上映会いつやんの?」


 と、俺がいうと、アニオタの大志は頬を緩める。


「司くんが好きな時でいい」

「わかった。アイン送るから」


 そんな俺と大志との会話を聞いて悠生も頬を緩める。


 俺は彼らに向かって言う。


「今日の昼休み、学食じゃなくて新しくできたうどん屋にしようか」


 俺の提案に二人はドヤ顔で言う。


「僕は寿司がいい!!」

「俺はチー牛!」


 全部違うだろ……


 まあ、俺たちらしくていいけどな。


X X X

 

 今日の講義は午前までで、二人とは食後にお別れして俺はバイトをするべくメイドカフェに来ている。


 メイトたちに挨拶をして休憩室の中に入ろうとする俺。


 ちょっと早めにきちゃったから人はおそらくいないのだろう。

 

 と思ってドアを開けると、


 そこにはこの店の看板メイドであるゆみさんがメイド姿で携帯をいじっていた。

 

 やがて彼女は俺の存在に気がつき、



「あ!司くん!?なになに!?めっちゃイケメンになったけど!?どうした?」

「い、いや……ちょっとしたイメチェンと言いますか……」


 立ち上がって興奮気味に俺に迫ってくるゆみさん。

 

 俺は困り顔でいても、彼女は一歩も引かない。


「司くん元がいいからオシャレしたら絶対モテると思ってたよね〜」

「い、いや……それほどでもないですよ。普通ですから」

「ふふふ!さて、好きな女の子でもできたかな?」

「す、好きな女の子……そんなのいませんよ!」


 そう。奈々は俺を揶揄うのが好きな子だし、優奈は守るべき存在だし、楓さんとか俺と住む次元自体が違いすぎて恐れ多いというか……


「へえ〜いないんだ」


 明るい表情のゆみさんは目を若干細める。それから何かを思い出したかのように目を丸くして言う。


「そういえば、司くんってこの前の飲み会参加しなかったよね?あの時めっちゃ盛り上がっちゃってね!」

「は、はい……」


 参加しなくて大正解だった。


「司くんも加わったらもっと楽しかったなと思ってて、ほら、私、司くんとあまり話してなかったし、だからね」

「は、はい……」

「今度、一緒にご飯でも食べない?


 看板娘から二人でご飯を食べないかと誘われた。


 もし、この会話をキッチンで働く陽キャ先輩スタッフがいたら殺す勢いで俺を睨むだろう。


 まあ、断ってお……


「えっと、日付いつにしようかな……あ、土曜空いてる!ねえ、司くんは今週の土曜日大丈夫?」


 断ろうとしたが、それより先にゆみさんはスマホを見て日時を決めようとしていた。

 

 土曜……


 優奈、奈々、ありがとう。


 断る名分を俺に与えてくれて。


「俺、その時は約束がありまして……」

「え?」

「あ、すみません。俺、着替えてきます」


 と、言って俺は脱衣所に入った。



ゆみside


 ゆみはいなくなった司を思い出して顔を引き攣らせる。


「私からのデートの誘いを断った?」

 

 悔しそうに唇を噛み締めたのち、スマホを見る。


 彼女はアインを立ち上げた。


 すると、そこには




 


 数えきれないほどの男たちからメッセージが届いていた。


 キッチンで働く司の先輩スタッフを含め、実に陽キャでイケイケしそうなプロフィール画像の男たち。


 ゆみは、数多くのメッセージを一瞥したのちつぶやく。


「司くん、

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