第52話

「ちょっ、カーラさん鑑定っ鑑定っ!――あと、ニーナは攻撃の余波からハンネを護ってあげて!」

「あ、うん。鑑定ね、わかったわ!」

「――え? え、ええ、任せて!」


 ぽかんとしていたニーナも――俺の声でやっと我に返ったのか、大きな盾でハンネを護るように立つ。ハンネが一瞬臭そうに顔を歪めていたの、俺は見逃さなかったけど――我慢して。


「――ぇ?」

「カーラ、鑑定結果が出たのか!?」

「……出たけど、これはミスかも。聞いた事もない〈ギフテック〉の能力……」

「お前は最初からミスしかしてねぇよ!――良いから、説明キャラらしく出た結果を教えろ!」


 俺はもったいぶるカーラを急かすように声をかけた。


「君、ボクの恨み覚えておいてよ。――〈ギフテック〉名は……『同人の神』。効果は――……二次創作顕界?――もう、本当になんなんだよこれ! 訳が分かんないよ!」


 ……それ、多分だけど――俺の世界で夏と冬を中心に神と崇められる人達が持つ能力だ。

 多分だけど、幻想魔法よりも――原作に近いか、個性的に変化出来るのだろう。


「二次創作で神作家や神絵師が実際に創り出した存在と同等って事か……。そりゃ妄想を浮かべる幻想魔法より、優秀で具体的な能力を持つわけだわ」


 なんたって、『同人の神』が創り出した物だからな。

 とは言え、検証して能力を確かめる必要があるな……。

 今の状態では、シムラクルムとの戦いでどちらが勝つかは見えない。

 更なる改善ができるならすべきだ。

 何事もPDCAサイクルに基づいていかなければいけいない。日本語にすれば計画、実行、評価、改善を繰り返して、業務を改善していくものだ。

 計画はできてる。なら、次は実行してもらうか――。


「なぁキメラさん」

「……へ?」


 呆然としていたキメラさんに俺は声をかける。


「ちょっと、こういって欲しいんっすけど。できるだけ可愛く――」


 そう言って、俺は耳打ちする――。


「……そんな事で良いの?」

「十分っす」

「わかったよ、暁くんが言うならやってみるね」

「あさます。――おい、マリエ! この稚いショタを見ろ!」


 俺がそう言うと、邪龍・ニーズヘッグに変身している元プリースト、マリエは鎌首ギュンと勢いよくもたげてこちらへ視線を向け――。


「――マリエお姉ちゃんっ、そんな悪い奴に負けないで! 僕、何も出来なくてごめんね……?――僕には一生懸命応援することくらいしか出来ないけど、ずっと応援してるからね!」


 王子様のような見た目と声をしたキメラさんの声で――邪龍・ニーズヘッグは天を仰ぎ――涙を流した。


『急性尊み中毒……っ』


「「「急性尊み中毒!?」」」


 謎の発言に驚愕したわ!

 しかし、より元気が出たのか、ニーズヘッグは先程の比ではない力で暴れ回り――。


「なん、なんなのだこの力は……ヌァアアアっ!?」


 シムラクルムは遂に銃火器を破壊され、吹き飛ばされた。

 ニーズヘッグ――マリエは壁深くに顔がめり込んでいた。

 ……今この瞬間、二次創作顕界とかいう魔法が解けたらめっちゃ面白い絵面なんだろうなぁ。


「ああ、マリエ……。ご先祖様まで……。おかしな夢か、幻であって……」

「ハンネ、大丈夫かしっかりしろ! 現実を見るんだ!」


 ハンネが頭痛そうに蹲っているが――ニーナは一定距離以上は近づかずに心配の声をかけている。……ニーナも、大変だよなぁ。


「懸命な判断だなぁ……。自分の臭いが3つ目の頭痛の種になるかもだし」

「暁っ! あんた、言っちゃいけない事を言ったわね!」


 涙目のニーナが唇を震わせてこっちを見てきている。

 何て言うか、早く臭いが取れれば可愛いんだよなぁ……。

 可愛い面を沢山みてるから、もう初対面の時みたく猛獣と勘違いしたりはしないだろうし。

 いや、そんな事言ったらうちのパーティメンバー全員、もうちょっと普通なら可愛いのに……。

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