第41話

「――よし、ゴブリン部隊の隊列は突っ切ったわ! 暁、戦える!?」

「ごべ……もうちょい」


 ハンネが必死にキュアで回復してくれているが――正直、結界で受けた持続的ダメージがでかい。足に受けた矢よりもデカい。


「あ……。鏃に毒が塗られてたみたいだわ! 毒も回ってる!」

「うっそぉ!?」

「私も、ハンネと回復に加わります! 教官も後方から来てるみたいです!――ニーナさん、挟み撃ちにしましょう!」

「わかったわ!」


 ニーナはゴブリン部隊の隊列最後方であろうから地点から――ランスと盾で突進し次々とゴブリンを葬っていく、そしてカーラは――。


「うわぁあああ、待ってニーナ! ぼ、ボクを置いていかないで!」

「おいおい!――おま、身分詐称してたんか!? ゴブリンに押されてるとか、クソ雑魚じゃねぇか!」

「そんな事ないよ!――ボクは何でも出来るんだから、『解毒』、『キュア』!」

「でも、お前……1匹も倒してねぇぞ!? 自分の回復しながらニーナの後ろ走ってるだけじゃねぇか!」

「この世界に合わせて能力を縮小する必要があったんだよ。――『神撃』! ああ、効かない!」


 そうして見た事もない――おそらくだが、レアな魔法まで使い始めた。


「でも、飛べるのを飛べなくしたり、世界の容量に合わせて色々と選択とか調整するのが面倒で――全部の能力を持って来たらこうなったんだよ!」

「それ――完全に『器用貧乏』じゃねぇか! 戦闘で1番使えねぇヤツだぞ!?」

「戦闘で1番使えないとか、ボクに対して1番言っちゃいけない事だよ!?」

「うるせぇなんちゃって戦乙女がッ! こっちだって『不運体質』とか言うので絶賛苦しんでんだよ!――あれ、そういえば唯一まともそうな〈ギフテック〉『女性パーティーメンバーの強化』は……効果出てんのか?」

「そんなの、天啓レベルに合わせて効果が変わるに決まってるじゃん! モンスター1匹も1人で倒したことのない君の天啓レベルなんて――まだ6だよ、小学生レベル!」

「俺の特訓の意味は!? 天啓レベル順調に上がってるって――さては学園長、お世辞を――」

「――ちょっ……。なんか天上からスライムが落ちて……口はダメッ! 口には入らないで!」

「何だ、そっちで何が起こってる!? クソ、土煙のせいで視界が……っ。風魔法で土煙を――余計に土煙が舞っただと!? 畜生、威力不足か!――おい、そっちはスライムまで出たのか!?」


 俺が余計な事をしてしまったが――我がパーティで回復担当の二人は責めることもなく回復魔法を使ってくれている。


「――集中して、今は毒の回ってしまった暁さんの回復を……っ」

「よりによって膝関節に鏃なんて……っ。集中、集中よウチ……。突っ込んだら負けよ……」


 ハンネ、なんかすまんね。

 色々と突っ込みたいだろうが――これでも、俺達だって真剣なんだ。


「ぶはっ……窒息する、助け――ごぼぼ……ッ!」

「教官、大丈夫!? 今、助けに行くわ!」

「――ちょっおい! そっちで勝手に盛り上がんな!」


 鉱床に積もっていた土煙が舞っているせいで全く見えないが――スライムに襲われていたカーラを、合流したニーナが救いに向かった事だけは伝わった。


「――……ぉえ、ぇえええ……゙くっさっ!」

「――おま、今さ、吐いただろ! 臭いで嘔吐して、スライムごと出したな!? 命の恩人に対してそれはないだろ!?」

「……゙な、゙な゙にヴォ、言っで゙る゙のがな……っ。ボグバ、ズ゙ラ゙イ゙ムが゙ノドば゙いっだばんじゃで、で゙だ゙だゲ゙ェ゙エ゙エ゙エ……っ」

「――絶対に鼻摘まんで話してんだろお前ッ!? 人としての最低ラインを容易く更新していくの止めろ!」

「……あかつきぃ。私……」

「ニーナも弱々しい声出すなって! ドキッとするだろ!?」


 ああもう、大丈夫かよ、このパーティーは!? 色々と心臓に悪い!

 社会人になってドキドキするとな、『恋』より『心臓病』とか『自律神経の異常』を疑うんだよ!

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