第3話 聖剣は腐ってたよ

 フフフ、遂にこの日がやってきたよ。


 今の僕は12歳だよ。そして、母上が渋々しぶしぶながら、成人の儀式を受ける事を了承してくれたんだ。

 伯父上は10歳の時に受けてもいいって言ってくれたんだけど、母上の猛反対によって受けられなかったんだ。


 でもそんな母上も今の僕ならばと受ける事を了承してくれたよ。

 僕は12歳にして身長172cm体重60kgン長最大28cmまでに長したんだよ。


 そして、フウマ家の成人の儀式は聖剣の間に入る事らしいんだ。やっとこの目で聖剣を見る事が出来るんだ。僕はワクワクしてるんだよ。


 で、僕は今【聖剣の間】の扉の前に居るんだけど、部屋からはオドロオドロしい気配が漂って来てるんだ。な、何があるのかな? 聖剣の筈なんだけどな……


 一緒に来てくれてる伯父上も母上も何も感じてないようだ。僕だけ感じてるみたいだから、僕は怖じ気づいてないと見せかける為に、落ち着いた様子を演出しながら、恐る恐る扉を開けたんだ。


 そこに広がる光景に僕は絶句したよ……


 だってむき出しの地面に12本の木刀が突き刺さっていたから。そして、長年放置された影響でどの聖剣も朽ち果てる寸前だったんだ。

 僕が感じたオドロオドロしさは聖剣自体から発せられていたよ。

 怨嗟えんさの声が僕に聞こえたんだから間違いないよ。


『ここから出してくれ〜』

『何という仕打ちじゃ〜』

『力も出せずに朽ち果てるのか〜』

『選ぼうにもココでは選べぬわ〜』


 …… …… 聖剣たちの声が僕に聞こえる。僕は母上に聞いてみたんだ。


「母上、どうして聖剣は地面に突き刺さってるの? それに、ココは湿気対策もされてないから、既に聖剣が朽ち果てそうに見えるけど、大丈夫なの?」


 僕の質問に母上がニコニコしながら答えてくれたよ。


「コジロウ、聖剣とは突き刺さってるものなのよ。コレを抜く事が出来るのが選ばれし者なのよ。そして、聖剣は湿気なんかで朽ち果てたりしないわ。選ばれし者が手にした時には完全な姿になるのよ。ホラ、コジロウも感じるでしょう? 聖剣の聖なる力を!?」


 いえ、母上。僕が感じているのは聖剣の負なる感情です…… でも僕はそれを言わずに聖剣の一本一本に手を触れさせたんだ。


『おおーっ、お主、我らを造った者と同じ手を持っておるな。頼む、我らの器を造り、我らを移し替えてくれいっ!!!』


 12本の聖剣からその声が届いたから、僕は母上と伯父上に素直に伝えたんだよ。


「母上、伯父上、ココにある聖剣はもうダメです。既に朽ちようとしてます。そして、聖剣から僕は頼まれました。新たな聖剣を造って聖剣の魂を新たな聖剣に移し替えなくてはなりません。僕は今から直ぐに取り掛かります。伯父上の領地にエルダートレントが居ましたよね? 今からちょっと出かけて素材を手に入れてきます。その素材で新たな聖剣を造ります」


 言うだけ言って僕は返事を聞かずに走り出したんだ。今の僕には母上も伯父上も追いつけないからね。唯一僕に追いつけるのは……


「コジロウ様、お供致します」


「マユ、よろしくね」


 そう、僕の専属メイドにして僕の初めてを貰ってもらう予定のマユだよ。そして、前世の妻でもあるんだ。残念ながら、マユにその自覚は無いけどね。

 マユは僕より8歳年上だけど、何代か前の先祖にエルフが居たらしくて老化は普通の人よりもかなり遅いらしいんだ。だから僕はマユと今世でも夫婦になるつもりだよ。


 僕とマユは駆けに駆けて、伯父上の領地には昼過ぎに到着したんだ。そして、魔集の森の奥地に向かった。

 出てくる魔物や魔獣は全て躱してたどり着いた奥地には、エルダートレントがその巨体を誇っていたよ。そして、僕とマユを見るなり襲ってきたんだ。


「マユ、必要なのはあの枝を12本だよ。必要本数が揃い次第撤退するからね」


「コジロウ様、分かりました」


 僕とマユへ襲いかかる枝は太くて硬い。けれども面白い特性があって、その枝を躱して枝同士が打ち合うように仕向けると、どちらか片方がポトリと落ちるんだ。

 その特性を利用して、僕は必要本数を獲得したよ。


「マユ、撤退だ」

「はい、殿しんがりはお任せ下さい」


 こうして最高の素材を入手した僕は序に魔集の森を探索して魔漆も手に入れて屋敷に戻ったんだ。


 伯父上と母上からはお叱りを受けたけど、無事に戻ってきたし素材もちゃんと手に入れたから、僕は無事に成人として認められたよ。

 でも、僕は聖剣を造らないとダメだから、出来るまでは伯父上に領地を見ていて下さいとお願いしたんだよ。

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