20.だれかの話




 地平線の向こうに二つの人影。

 先導する小柄な影と翼を羽ばたかせ寄り添う影。

 二人が目指すのは地平線の更に向こう。





 海を渡った先の大陸にある村に二人の流れ者が行き着いた。

 長旅で汚れきっていながら目も醒めるような美しい少年と。

 その少年が腕に抱く、廃人も同然な青年と。

 二人は僅かばかりの食べ物と水を村人から分けて貰うとその日の内に村を去っていった。





 少女は必死にその手を振りほどこうと全身全霊で抗った。

 行こうと叫ぶ兄に彼女は懸命に争った。

 明日嫁ぐ身で今更逃げられるわけがないし、逃げる理由がなかった。

 抵抗する少女に兄は突然頭を抱えた。そして、兄は絶叫と共に自身の白い翼を二つとも引きちぎった。





 見せ物小屋の中から手を伸ばした。

 投げ込まれる硬貨はまるで雨のようだ。

 笑う。力の限り笑ってみせる。

 それ以外に生きていく術がない。





 土を掘り返す。

 そこら中に散らばっている人骨。

 掘れば掘るほど増えていく人の骨。

 此処はかの国の城跡地。

 呪いの一族と名高い猫族の失われた国。

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星花草 保坂紫子 @n_nagisa

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