第5話「こんなの助けるしかない!(改稿済み)」


「や、やった……のか?」


 俺の科学スキルによって編み出した火炎放射によって丸焦げになった白狼ホワイトウルフは目の前で倒れた。真っ黒になり、焼き肉屋に行ったときにする炭火のような匂いがして、俺は生唾を飲み込む。


 恐る恐る近づき、ツンツンと脚でつつくも全く動く様子がなく、どうやら俺は魔物との戦いに勝利したようだった。


「はぁ……」


 一気に緊張から解放されたせいか、膝がガクンと落ち、岩の壁に背中を持たれるような形で俺はその場に座り込んでいた。


 ドシッとくる疲れ。


 どうやらアドレナリンが出ていたらしく、かなり体力を消耗していたようだ。


 まぁ、よく考えてみれば俺はまだ10才。あんなにもでかい魔物と対峙して渡り合えただけでも凄いものだろう。


 ただ、きっとシュナイダー家の人に言っても『雑魚ごときに5分逃げてた? 馬鹿言うな! 貴様の家の名前を忘れたのか?』とか言われそうだし、今まで比べる相手がおかしかったと思いたい。


「ふぅ……まぁでも、これで初の魔物狩りだ!」あ、そうだ。ステータスって変化してるのかな」


 ふと、ステータスのレベルの存在を思い出し、俺はその場に手を出して呟いた。


「ステータスっ」


――――――――――――――――――――――――――


〇レオン・ゲネシス・シュナイダー

 年齢:10

 種族:人間(元貴族)

 性別:男

 魔法適性:0/5

 魔法属性:なし

 オリジナルスキル:【科学サイエンス

 Lv:2

 MPマジックポイント:0/0

 SPスキルポイント:998/1504

 STRストレングス:8

 DEFディフェンス:9

 INTインテリジェンス:1689


〇スキル技(科学)

燈火マッチ】【火炎放射】【水生成すいそけつごう


―――――――――――――――――――――――――――――――



 やっぱり……。


 見ての通り俺のレベルが上がっていた。

 レベル1からレベル2へ。


 ゲームで言うと最初のスライムを倒してステータスが多少上がる程度なはずなのだが、INTが100近く上がり、SPの上限がさっきより500も上がっていた。


 ただ、それ以外に関してはさほど変化はなく、MPは相も変わらず0だし、STRとDEFはそれぞれ4ずつ上がっている程度。


 おそらく、俺の得意分野であればあるほどステータスの値が上がりやすいらしい。


 それに……スキル技?


 こんな欄、さっきまであったっけ? いや、多分なかったよな。

 でも書いてあることは——俺がさっきまでに習得したスキルを用いた科学的な反応の一覧、だよな?


 マッチと火炎放射に水生成。


 なんか、カッコイイ技名からただの名前もあるし、この条件はよく分からないけど。


 まぁ、見やすいからいいか。


「……これ、どうしよう」


 見下げるとそこにへたっている白狼ホワイトウルフの亡骸。無残にも散った姿がずっとそこにあるのも少々申し訳ないというか、見るに堪えないし、どうにかしないといけないな。


とか、あるんだろうか?」


 その直後だった。


 俺の目の前にさっき表示させたステータスのホログラムとほぼ同じ大きさのものが映し出されたのだ。


「っ⁉ な、なんだ……っびっくり、したぁ……」


 目を凝らして表示されている所を見てみると


「——アイテム、ボックス」


 おいおい、マジか。

 あるのか、アイテムボックス!

 異世界ファンタジー作品あるある、主人公だけ馬鹿みたいにデカい容量のアイテムボックスを持っているって言うあの!


―――――――――――――――――――――――――――――

<アイテムボックス0/4>

――――――――――――――――――――――――――――


 って、んなわけないか。

 表示させたアイテムボックスに書かれていた容量はたったの4つ。まぁ、よく考えてみれば分かることだった。初めて魔物を倒してレベルまで上がって感覚がおかしくなっていたのか、自分の事を見極められていなかったようだ。


 俺がまだあの邸宅で魔法の勉強をしている時言われたじゃないか。アイテムボックスって言うのは魔法の魔力量を表す一種の指標だと。魔法適性が高いものほど強い魔物を狩ることができるため、それに応じて容量が大きくなるって話だったはずだ。


 無論、俺の魔法適性は0。勿論のこと、魔力量は微塵もないわけでそれはアイテムボックスがでっかいなんていうなろう主人公特有のことが起きるわけが無かった。


「っまぁ、4つあるだけでも凄いか」


 ため息交じりに足元で転がっている白狼の亡骸を収納する。ポカンッと音がして、消えてしまい、アイテムボックスの中に「・白狼の亡骸」と記載が増えた。


「お、ほんとに入ったのか」


 魔法魔法ってなんか記憶があるから慣れてたつもりだけど、普通に考えたら凄い機構だよなこれ。あの女神さまも俺に不思議なスキル預けてくれたみたいだし。


 にしても、この世界にはまだまだ俺の知らないことばかりだ。

 もっともっと学ぶ必要があるようだな。


 って、魔法学院に入れなかった俺への皮肉かなこの状況。

 

「……俺の考えすぎだな」


 まったく、一人ぼっちで暗い場所にいるとちょっとおかしくなってくる。ここは朝まで休憩するための寝床でも探しに行かないとだな。



 しかし、そんな魔物の森の夕暮れ時。


 まさに俺がその場に立ち上がった直後だった。


「きゃあああああああああああああああ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」


「っ⁉」


 誰かの悲鳴が耳に聞こえた。

 声の高さからして女の子だろうか、鮮明に聞こえてくることからおそらく距離はかなり近い。


 誰かが、近くで何かに襲われている?

 なら……見捨てて、おけるわけもない、か。


 行くしかない。そう思い立ったらすぐだった。


「っくそ!」


 どうしてか動く体。


 いつから発症したか自分でも分からないお人よし病は今でも続いていたようで、瞼を閉じて開いたときには俺は地を蹴りだしていた。


 


 


 

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