第4話「もう戦うしかない!(改稿済み)」


「っはぁ、っはぁ、っはぁ!!!」


 タッタッタ!

 森の中に響き渡る足音、そして漏れる吐息。


 ドタドタドタドタッ!!!

 そして、それすらも凌駕する大きな足音が後ろから鳴り響いていた。


「お、おいおいおいおいおい、まじかまじかまじかぁああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼‼‼‼」


 そう、俺こと14才の元貴族レオンは今、魔物の森にて出会う初めての魔物に追いかけられていたのである。




 遡ることつい5分前。


 サバイバルを行う上で大切な火をスキルによって生み出すことに成功し、ついは水を作らなくてはいけないと酸素と水素の結合反応の研究をひたすらやっている最中だった。


 水を受けとるカップをその辺の葉っぱで作り、手のひらに生み出した酸素と水素を数メートル先に浮遊させ、そこにマッチの火を投げ入れる。


 今の俺ができる最大限の合わせ技でようやく水を作り出せるようになったというのにというタイミングだったのだ。



 ガルルルルルルルルルルルッ。



 まさに、前世の記憶で言うと牙をむき出して威嚇してくる狼のようだった。

 気が付けば、それは俺の背後から近づいていた。


「え?」


 この時、その気配に怯えてすぐさま逃げ出せばもっとうまくできていたかもしれないが小一時間も魔物とまったくと言っていい程出会わなかったことで生まれていた余裕なのか、俺は胸の内にある知的好奇心、いらない興味心で振り向いてしまった。


 目と目が合う。

 鼻息が俺の素肌を突き破る様に突き抜け、背筋をゾワっと襲う寒気。

 

 思わず、叫ぶことすらも出来ず、その鋭い目つきに睨まれて体が固まった。


 そこにいたのは貴族として邸宅に住んでいたときに魔物図鑑で見たことがある魔物だった。


 その名前は確か……『白狼ホワイトウルフ』。


 特徴的なのは名前にもある様に身体を包み込んだ白い体毛。


 14歳の俺の身長を軽く凌駕し、目算で大体2メートル。


 外国人の身長レベルの高さに、まるで蔑んでいるかのように睨みつける凛々しい瞳。口からはみ出た牙とゴワゴワとしているたてがみでもはや威嚇する必要もないくらいに俺はちぢみあがっていた。


 兄たち曰く当たり前に倒せるレベルの魔物だっだ気がするが、生憎と俺は違う。


 何もできない無能な子供、レオンだ。


 もちろん、俺は目の前の脅威に恐怖心を感じずにはいられなかった。


 怖すぎる。あまりにも怖い。


 俺の人生史上一番怖かった人ランキングに入る中学時代の部活の顧問『斎藤先生』といい勝負なくらいだ。


「……あ、あはははは」


 まずは秘儀、苦笑い&愛想笑い。


 こういう場合はとにかく反省してますみたいな笑みを浮かべれば機嫌を取り戻してくれる。一旦は動きを止めて、優しくその瞳を見つめ返して、そのまま頭をポリポリ掻いちゃって~~。


『ガゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』


 ————と、そんなわけなかった。


 俺の笑みにキレ散らかしたのか、遠吠えと咆哮を兼ねたかのようなうめき声を上げて、前足を蹴りだし、その巨体を俺の頭上へ飛びあげる。


 やばい。

 俺の体は救難信号を繰り出していた。


「まてまてまてまて、ちょっ!!!」


 振り絞った力でなんとか飛び退き、奴の方に視線を戻すとさっきまで俺が経っていた場所は跡形もなく小さなクレーターが出来ていた。


 あぁ、これは死ぬ。俺は死を覚悟しながらその場を走り出し――――


 ――――今に至るわけである。


 幸いなことに俺の体はなぜか前世よりも動けていた。足も見違えるほど早くなり、体力も年にしてはあるおかげか疲れを感じることなく5分間はしりつづけることが出来ていた。


 なんだかんだいじめられながら走り込みだけはしていただけはある。レオン様様だ。


 まぁ、こいつも同じくらい早いし、体力あるんですけど。


『グォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオルァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!』


「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼‼‼‼‼‼‼」


 





 俺と白狼ホワイトウルフの鬼ごっこも終盤戦。

 さっきまでそれなり余裕ぶっこぬいて走っていた俺も今度の今度こそ死を悟っていた。


 なぜなら、俺は今断崖絶壁の岩の壁を背に追い込まれていたからだった。


「うわぁ……やべぇ」


『グゥゥゥゥゥゥッ!!』


 腹を空かせ、喉を鳴らし俺の動向を探りながら一歩ずつ歩み寄る白狼ホワイトウルフ。壁に手を付き、もはや動けない俺は足りない頭で考えを巡らせていた。


 奴の弱点はなにか。

 確かだが……ひ、火、そうだ! 白狼は火属性魔法に弱い!


「はは、さすが子供の頭。思いだすのが早いわけだなっ」


 って、何喜んでるんだよ! 俺はあれだぞ! 魔法が使えないんだぞ!


 弱点も分かってる。だけど、魔法が使えない。

 そんな俺ができるのはたった一つしかない。

 

 そう、俺にあるものは————固有スキルの【科学サイエンス】のみ。


「ははっ。まじかよ、ここで実践になるなんてなぁ……」


 笑みがこぼれる。

 命を取るか取られるかの世界。


 やられるくらいなら、いっそやってみるほうがいい。


 片手をパチンとならし、火を生み出す。


 その極限な世界で俺は笑っていた。


 ワクワクする。

 こんな高ぶりいつぶりだろうか。


 胸を襲う騒めき。

 うごめく感情がポイント張った背筋を柔らかくする。


「科学の叡智ってやつを思い知らせてやるしかねえな……‼‼‼‼‼」


 そして、次の瞬間。


 渾身の一撃。


 右手に生み出した火に、左手に生み出したガソリンをかける。


 手首を捻らせ、燃え上がる炎を風上から風下へ。


 動き出した白狼目がけて、一気に噴射させる!!!!


「——お、出た!!!」

 

 膨れるように盛り上がった豪炎の赤い筋が視界を埋め尽くし、奴にぶち当たる。


『グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』


 響き渡る白狼の悲鳴。

 苦しむようにもがき、その姿が鮮明に見えたかと思えば次の瞬間、黒焦げになったそれが目の前に横たわっていた。



 

 



<あとがき>

 1日2話投稿していくつもりです。

 時間は昼過ぎの12:30と夜の21:03にしていこうかなと思っていますが何か指摘などあればコメントしていただけると幸いです!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る