第3話 姉妹の絆 家族の思い

 翌日はジリジリ痛む額に耐えながらネイヴ(会衆席)の片付けと掃除におわってしまった。後…

 次の日の陽が登ってから私は1匹の犬を洗っていた。胡麻色紫の裏白だね。教会の奥庭にある水瓶の近くでゴシゴシと。

 教会の玄関の建付けが昨日の騒災で悪くなり開いてしまっていたようで中に紛れ込んできた。悲しそうに泣いて外に出ようとしない。1日粘られて根負けし神父に相談の上、世話は私が全面的に見ることを条件に一緒にくらすことになった。ちょっと匂うから洗っている。

「ぜいじょざばぁ」

 泣きながら獣人狼族の幼女シュリンが路地を通って奥庭に来た。

「おねえちゃんいないの。まってもかえらないの。さがしてもみつからないのー、シュリンきらわれたのかなー、ワァーーン」

 溢れる涙を手で拭っている。

「ギュッとしたいのにいないの。どこいったのかなぁ」

 私は顳顬に冷や汗が流れるのを感じた。


 暫くして泣き止んでくれた。そうしてそこに犬がいることがわかったよう。

「ワンワンさん!どうしたの」

「これからここで一緒に住むんだよ」

「いいなあ、聖女様とでしょ。私、シュリンだよー」

 シュリンは犬に近づいていくと抱きついだ。

「お近づきのギュッだよー、これでワンワンとお友達、もう一度ギュ」

 赤毛のシュリンと犬が抱き合っている。同じぐらいの体格で大きな毛玉ができてしまった。

 するとシュリンは頭を離し、

「おねえちゃん」

「シュリンのお姉さんじゃないよ。名前だってオネエでないしインプって名前つけたんだよ」

「お姉ちゃんだよ。この、この胸のドンドンいう音はお姉ちゃんだよ。寝る時にギュとしてくれて聞いてるもん」

 シュリンは再び心音を聞こうと抱きしめて犬の胸に潜り込んだ。顔を上げてシュリンは告げる。

「お姉ちゃん。セリアンお姉ちゃん! セリアンお姉ちゃん!ギュッとできたよぅ」

 すると淡い光が周りから滲み出できた。犬と獣人狼族を包んでいく。この光は一昨日に巨大化したセリオンを食らった光。大きな光球になって、すぐ弾けた。

 あちゃー 私は自分のマスクに手のひらをつけて天を仰いだ。

 弾けた後は何もなかったではない。赤い大きな毛玉がある。シュリンとセリアンだったりする。

「たった3日あぁ 罰になんないよ」

 私が願い出た罰は'nova nativitas' 新生 生まれ変わり。でも同種じゃない。セリオンは犬になったんだ。獣人と違い犬は吠えるだけで喋ることができない。言葉の意味も理解できない。近くにいても何もわからないしできない。苦行だよね。

 もう一つ願い出したのか'プロバージョン'猶予' 慈悲だね。もし、近しいものが姿かたちが変わったのに見つけることができたら、罰を解いてあげてと、

 シュリンちゃんすごいわ。一発ヒット。解けちゃった。

 いいなあ家族。私にはないもの、羨ましいなあ。

 私は裸でいるセリアンのため、せめてシーツぐらいと勝手口に向かう。そして振り向き、2人を見ながら、手を組んで主と教祖たる初代聖女様に感謝を送った。




 後日、守護令嬢レディコールマンがパラスサイド教会にきた。意匠の凝ったマスクをつけて。

「共にこの都市をまもりましょう!」

 即、お断りを入れさせて頂きました。


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