第6話

 「夢みたい! ずっとゲームができるなんて! 」


 「また新作アニメ。もっと見よう」


 「ねえ? あっちの映画館行こう! 」


 さっきみたいに、僕とメトラさんが好奇心の車両のど真ん中を歩いていると、こんな声があちこちから聞こえてきた。幼稚園児くらいの子から、僕ぐらいの中学生くらいまでが中心で、いろんな娯楽に触れていた。


 「好奇心……」と僕は小さくつぶやいた。


 「はい。みなさん、子供のままの感性で、ここにある餌を楽しむことができます」


 「餌? 」


 「そうです。好奇心の車両に永遠にいてもらうための餌。この子たちは、すべてを忘れて、今夢中になっているのです」


 さっきまで恐怖を感じるくらい元気だったメトラさんが、ここではなんだか悲痛な表情でいるように思える。この光景を見て、自分事のように、子供たちを眺めているみたいだ。


 不気味、そして不思議。


 「あっ。ですけどね? ちょっと遊ぶくらいなら、問題ないんですよ? どうです? だいちくんも、気晴らしに何かしてみては? 」


 メトラさんが、まるで僕の近所のお姉さんかなんかみたいに言ってきた。いや、僕もう子供じゃないよ、って思ったけど、15歳はまだ子供か。




 じゃあちょっとだけ、と少し探検すると、昔ながらの玩具がたくさん置いてるコーナーがあった。ほかのゲームとかと違って、そこにはほとんど人はいなかった。特に、僕と同じくらいの年齢の人はなおさら。


 「? もしかして、あちらが気になるのですか? 」


 「はい……」


 そして、僕はなぜか、けんだまだったり、お手玉だったりで、まるで取りつかれたように遊んだ。その間、何故か僕は懐かしい気分になっていた。


  


 


 ……こんな感じで、好奇心の車両を見終わった後も、僕たちは他の車両に足を進めて、数々なイベントにあってきた。鬼に襲われたり、会社で働かされたり、スポーツやったり。



 そして約150車両を経験した時には、もう4年の月日が経っていた。驚いて休んでの繰り返しで、僕は精神的にもかなり疲れいた。まあ、普通の反応だよね。ちなみにメトラさんは出会った頃と変わりなく、基本的にずっと笑顔だった。


 ただなんだかんだで、僕はこの人をものすごく頼りに、そしてかなり信頼していたんだけどね。


 


 さて、最後に訪れたのが、記憶の車両。なんか、一気に狭くなったというか、普通の蒸気機関車の中身に戻ったというか。えっと………ここ運転席?


 ごちゃごちゃ機械が詰められてて、それを操作しているおじさんがいる。


 「メトラさん? ここは一体? 」


 「はい。さっきも言いました。記憶の車両です。……じいや! 」


 彼女がそう呼びかけると、おじさんがゆっくり振り向いた。


 「おお? なんじゃって、おおメトラ! 」


 「久しぶり」


 「そうじゃのおって……ん? 隣にいるのは、なっ! 」


 するとおじいさんは突然声を荒げた。


 「おい! ぼうず! ここにきてはいかん! 苦しむことになるぞ! 」


 「え? 」


 僕は思わず反射的にメトラさんを振り向くと、その時には、だんだんと視界がぼやけていた。目の前に黒い点が増えていって、思考も途絶えていく。


 気が付いた時には、僕は意識を失っていた。




 

 





 

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