第4話 愛情

 共同生活と言うのはそう楽ではない。もちろん意見のすれ違いも起こる。これはどうしても逃れられないものだ。だが、相手が幼馴染で彼女の場合は少し違うかもしれない。

 とある休日の昼下がり、僕はベランダにでてみた。

 3階のベランダにしては街がよく見える。

 太陽という発光物質はこちらを厄介なほど刺してくるし、人通りは少ないもののたまに通ってくる人の動きに若干押されそうになる。

 そんなほのぼのとした雰囲気の中、あるおかしなことに気づいた。

 洗濯物が干されていなかった。

 彼女が家にきて以来、家事は交代制というルールをもうけた。

 彼女がこの日の洗濯の順番のはずなのに、洗濯物は干されていない。

 少し心配になって彼女の部屋に駆け込んだ。朝はいっしょにご飯を食べたから起きていると信じたい、そう思っていた。

 彼女の部屋にそっと入ると彼女はすーっと息を立てながら壁によたれかかって寝ていた。

 寝ていることを問いただしたいが、別のものが僕の目を奪った。

 きめ細やかでさわったら崩れてしまいそうな肌に、透き通った茶色の髪、起きてから着替えていないのか、もこもこでいかにも気持ちよさそうな衣に身を包んでいる。 

 いかにも女子という格好だ。

 それを見ると、彼女をいじめていたことがなおさら恥ずかしく思える。彼女は当時のことを忘れてしまったのではないかとさえ思った。

 彼女は頭を少しばかり揺らしながらすやすやと気持ちよさそうに寝ている。それをみていると、こっちも眠くなりそうだ。

 僕は微笑みながら部屋を後にした。

 本当に厄介なものだ。眺めていると、可愛げに見えてしまって放っといてしまう。これが、愛情というものなのだろうか。そんなことを考えながら、夕日に溶けていった。

 「おっはよー!朝だよ!!起きてー!!!」

朝から元気良くて、うざいのか可愛いのかわからない。だが、起こしてくれたことだけは感謝している。そんなのも、多分他人だったらうざいんだろう。きっと愛情があるから。その愛情を探し求めて、彼女と生活をしているといっても過言ではない。

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