第9話 説明を受けました。もっとわからなくなりました。
「ガチャって…この場所はソシャゲの中なのか?」
「違うなの、現実なの、リアルなの、ライフが無くなれば死ぬなの」
「今生き返るって!」
「それは初戦で2人撃破しているからなの、魂をプールしているからなの」
グンは言葉に成らなかった。初日、確かにこの場所に連れて来られ、戦闘をし、2人の命を奪っている。
(魂のプールって何だよ!!相手を殺して奪えっていうのか!!!)
顔を赤くし、怒りを顕わにするグン。そんなグンにメイは冷静に告げる。
「これは魂をベットした殺し合いみたいなものなんよ、解って欲しいなんていわないんよ、それがこの場所でのルールなんよ、死んでもグンは生き返れるんよ、それだけ理解するんよ」
「理解…理解って、随分冷めてるな」
「当然なんよ、メイにとってグン以外はどうでもいいんよ、相手を殺せばグンの生存率が上がるんよ、それなら殺して魂だって使ってやるんよ」
「メイ……」
メイの言動も行動も、やはりグンには理解できない。
「ごめん、ちょっと席を外す」
「うん、行ってくると良いんよ」
「はいなの」
部屋に戻り、テラスに出る。
雄大な自然の景色を見れば、少しはこの心を癒してくれるかもしれない。そんな考えだった。
(ダメだな、まったく気持ちが落ち着かない……。なんだよそれ…人を殺して養分にでもしろって言うのか!?殺されて誰かの養分になれって、そう言ってるのかよ!!!)
グンの気持ちはグチャグチャだ。
”グンはメイが守るんよ”
焦点の合わない目で景色を眺めていたグンの心にその言葉が響いて来る。
(メイはどうして俺にそこまで拘るんだ…)
解らないことだらけのこの場所、2日間過ごして少しは覚悟を決めた、決めたはずだった。
どれだけ佇んでいただろう。
(解らない事だらけ、少し解りそうな気もしたのになぁ…もっと解らなくなった)
グンは決意を固め、己が両手で拳を作り握る。
握った拳は震えている、そんなグンの胸中に浮かぶのは彼女の顔。
(それでも!そう、それでもだ!一つだけ理解できることが有る、メイは俺を裏切らない!それだけは覆らない!絶対にだ!なんでそう感じるのかも解らない!!)
グンを見つめる真っ直ぐで力強い彼女の瞳。
(俺はあの瞳だけは信じられる!何もわからない、何も出来ないかもしれない、それでもメイだけは信じる!メイだけは守って見せる!メイが俺を守るというのなら、俺がメイを守るんだ!)
たった3日、されど3日。
過ごしてきた時間は関係ない、彼女だから、メイだから信じる。共に、一緒にこのゲームの終わりまでメイと……グンはそう心に決めた。
「早かったんよ、次のゲームまで引き籠ると思ってたんよ」
「はは、それも有りかもな、だけど決めた事を宣言したくて此処へ来た」
「なんよ?」
「メイは俺を守るといったな?」
「言ったんよ、当然なんよ」
出会った時からメイは終始そう言っている。だが、グンはソレを拒絶した。
「それは無理だ」
「!!なんでなんよ!!?」
「俺は君と一緒に戦うからだ、守られるだけでいるつもりは無いからだ。俺がメイを、君を守るからだ!!俺はメイとこれから先も一緒に居たい。ずっと共に、一緒に居よう。君だけを死なせるなんて出来ない。一緒に戦って、死ぬ時は一緒に死のう。それが俺の宣言だ」
唖然とグンを見つめるメイ。
「アタシは、メイはグンがすべてなんよ?生きて欲しいんよ?」
「俺もだ、俺もメイに生きて欲しい、この先もずっと一緒に居て欲しい。メイだけ死ぬなんて考えられない」
「メイのすべてはグンのものなんよ……」
「俺の、身も、心も、すべてを奪ったのはメイだ、責任取ってくれ」
両目から大粒の涙をこぼし泣き出してしまうメイ。そんなメイをグンは優しく見つめる。
ゆっくりと跪き、彼メイの手を取る。
しっかりと目線を合わせグンはメイに告げる。
「メイ、一緒に生き残ろう。このゲームの終わりまで二人で生き残るんだ、それで俺の花嫁になってくれ」
「うん、うん、花嫁さんになるんよ!お嫁さんになるよ!グンの奥さんにしてなんよ!」
泣きながら飛びついてくるメイを、優しく受け止めるグン。
先の見えないこの場所、健やかなる時も、病める時も、死ぬ時も一緒だと。二人は誓いのキスをした。
「ごちそうさまなの~お腹いっぱいなの~、口から糖分が一杯出て来るなの~」
もっともその一部始終を見ていたルリはお腹いっぱいで口から砂糖を吐き出していた。便利なアバターは画面の中で本当に砂糖を吐き出している。
「これからも甘い空間は発生するぞ?頻度もかなら高く発生するぞ?」
お互いの手を、恋人繋ぎにしたままそう答えるグンと、照れくさそうにしているメイ。
「ぁぃ、覚悟しておくなの~、それじゃあガチャの説明再開からでいいなの?」
「おう、頼むは」
ルリの説明はこうだった。
ガチャのレアリティはN・R・SR・SSRの順になっている。
排出内容については、武器・防具・生活用品・キャンプ用品やサバイバル用品、薬などもある。
当然そのレアリティが高いほど性能も上がって行く。
魂のプールについては、1個で1回の魂ガチャが引ける。自分の命に代える事も出来る故、排出されるガチャ内容はSSRより上、いわゆるLRクラスとの事。
生き返る回数も魂とイコールになる、3個プールしておけば3回生き返れるのだが、ここでグンは気になった事をルリに聞く。
「なあルリ?この魂のプール、対象者はどっちなんだ?」
「当然の質問なの、回答はどっちもなの!」
「へぇ~」
「母様はまるで自分は対象外みたいな言い方をしてたなの、そんな事は無いないなの~。それは母様も知ってるはずなの(ニヤリ)」
「へぇ~(ニヤリ)」
二人はメイをニタニタと見る。メイは顔を真っ赤ににしたまま焦りだす。
「聞かれなかったんよ!聞かれれば答えたんよ!」
「うん、メイは俺に生き残って欲しくてそう言ったんだろ?」
「うっ、そ、そうなんよ…」
バツが悪そうに俯くメイ、両手で彼女の手を包み込みグンは優し気に答える。
「でも、これからは2人の事を考えて欲しい、俺の言いたい事解るよね?」
「はい、なんよ」
うるうるとした瞳でグンを見つめるメイ。
「はいは~いなの~、また砂糖が生成されてるなの~話を続けるなの~」
画面の中で砂糖に溺れるルリ、すでに顎まで砂糖は到達していた。
「魂プールについて一つ提案が有るなの」
「「提案」なんよ?」」
「そうなの、母様の種族については父様は当然しっているなの?」
「それはもちろん知っている、ヴァンパイアだろ?」
「それであってるなの、でもその性質については聞いているなの?」
首を傾げ考えるグン、そういば日中日差しのもとでも平気そうだった。吸血されると眷属とかゾンビになるって話も聞いた事はある。2日続けて吸血されたが身体に変化はない。
「それについてはさっぱり解らんな」
「しょうがないなの、父様の思うヴァンパイアと母様の言う吸血鬼は違う存在なの」
「うえ!?マジか」
「当然なの、父様の世界で言うヴァンパイアはある意味死人なの、身体が冷たいなの、血流もないから汗もかかないなの~」
言われてメイを見る、赤くなる顔、温かい体温、昨日の夜は……、いろいろと……、であった。
「母様は吸血族というだけなの、その身体は人とそんなに変わらないなの」
「じゃあ吸血族の特徴ってなんだ?」
「う~んなの、人より力はかなり強いなの、身体能力が高いなの、牙を経てる行為はエッチなの、吸血は事態はワインを飲む感覚なのなの、でも血液から接種した生命力を利用する事ができるなの、ケガを治したりもできるなの」
「マジか、そんなに人と変わらな…、ん?そういや開放がどうとか昨日言ってたような」
昨晩メイに襲われた時、彼女は痛みに耐えかねて何かを言っていた。
「それはキーワードなの、蓄積した力を解放するための
「へぇ~、それなら毎晩吸血してもらった方がいいのか?」
そう言いながらメイを見るグン。それは毎晩セッ〇スしようと言っているのと同意義である。
そんなグンを慌てて止めるメイ。
「ダメなんよ、血がなくなっちゃうんよ、快楽に溺れちゃうんよ」
「安心してなの、昨日のゼリーはそれはもう色々な効果があるなの、現に父様は今普通にしているなの」
「あ、言われてみれば筋肉痛も貧血も無いな」
「思う存分ヨガるがいいなの~!」
画面の中で両手に扇子を持ち、踊っているルリ。背後には花吹雪まで舞っている。そんなルリを見て、グンは、ルリがかなり下品である事を理解していた。
「あれ?吸血族って子供はどうやってるつくっているんだ?」
「あ~あれなんよ、オスが弱い人族のメスを孕ませてくるんよ、生まれて来る子供は吸血族か人族のどちらかに成るんよ、同族のメスはその存在がかなり強いからオスが尻込みするんよ、恐怖対象なんよ、メスはメスで吸血行為が好きなだけなんよ、人のような繁殖行為は滅多にどころかまったくしないんよ」
昨日その繁殖行動をノリノリでやってきた奴がそう
「そうなの、父様が今日の昼まで母様に注いだ白い血液も吸収吸収なの、避妊も妊娠も自在なの」
「……」
真っ赤になって両手で顔を押さえるメイ。
「うん、上も下も満たされて大満足なんよ♡」
ちょっと何いってるか解らないですね。
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