第40話 召喚

 CH-101ヘリコプターが館山海上自衛隊航空基地から飛び立つと永山の顔にやっと安堵の表情が浮かんだ。永山の両隣には笠原研究員と山科一等陸佐が座っていた。二人の表情は険しかった。事態はあらぬ方向に変化を続けていた。

 宮島一等陸佐と立川一等海尉が乗船している海洋丸が突然、消息不明になったという一報は衝撃だった。この予期せぬ事態の説明に三人は召喚されたのだった。三人が召喚される2時間前に海洋丸では非常事態が起きていた。

 サルベージ船海洋丸では謎の物体を安全に引き上げるための作業が進んでいた。無人探査機かいこうを水面下10mまで浮上させて、ウインチで吊るした格納容器にマニピュレータを操作して、水中で格納しようというのだった。格納容器が密閉されていればウイルス汚染は防げるはずだった。

 海洋丸に引き上げられた格納容器は防護服で感染対策をした宮島一等陸佐と立川一等海尉によって、さらにウイルスが漏洩しないように厳重に密閉対策を施した。格納容器は護衛艦いずもに要請したヘリコプターで埼玉県陸上自衛隊化学学校に搬送する予定だった。

「やっといずもからヘリが来たな」曇り空の中、ヘリコプターの重厚なローター音が近づいてきた。立川はそのローター音が護衛艦いずもに搭載されているSH60J/K哨戒ヘリコプターでもMCH-101輸送ヘリコプターでもないことに気がついた。雲間から姿を現したのは国籍不明の攻撃型ヘリコプターだった。

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