第38話 巨大化した生物

 目の前を横切って行ったのは、巨大化したミズウオだった。体長が2mを超える大型深海魚だが、今のは10m以上あった。生息域は水深1,500mぐらいまでなのに6,000mで生きていることが信じられなかった。

「生物がすべて巨大化している」宮島と立川が同時に驚きの声を上げた。

「南極のような水温が低い場所では生物が巨大化することが分かっています。でもこんな深海では元々生物が少ないので、こんなに巨大化することはあり得ないはずです」深海探査の経験が豊富な橘には異常な光景の連続だった。

「あれは何だ」大型深海魚ソコボウズが悠々と泳いでいた。

「巨大化したミズウオと同じかそれ以上に大きい」

「無人探査機よりはるかに大きい」宮島と立川は近づいてくる巨大な生命体に初めて恐怖を覚えた。それは連なったピンク色のクラゲだった。

「カノコケムシクラゲの群体です。でも普通は1つが10㎝くらいの大きさです。でもこれは50㎝くらいある。触手にからまれないようにしないと」橘は数百mはあろうかという群体を避けるために無人探査機を上昇させた。

 深海底のあらゆる生物が異常な巨大化を始めていた。橘はあることに気がついた。巨大化した生命群は同心円のように拡がっていた。円の中心に何かがある。

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