第27話 決死

 永山は事態が急速に変化していることに衝撃を受けた。自衛隊員は屋外にいる動物をすべて抹殺している。汚染が他の地域に広がることを防ぐためだ。つまりこの封鎖地域から脱出しようとする者は誰であれ排除されることを意味していた。上空を浮遊していた監視用ドローンがゆっくりと前進して来ると3人の頭上でピタリと停止した。

「まずい。気づかれたぞ」「あのドローンには赤外線センサーが搭載されていて、熱源を感知したんだ」「バラバラになって逃げよう」3人が走り出すと同時に後方から声が追いかけてきた。

「止まれ。命令に従わなければ発砲する」最初の数発は威嚇のために上空に発射されたが、すぐにあらゆる物を薙ぎ倒すような機銃掃射が始まった。永山の耳元を銃弾がかすめた。木々に銃弾が突き刺さる衝撃音が空間を満たした。

 永山の右方で悲鳴とドサッという地面に倒れ落ちる音がした。左右に分かれて走り出した時、右の方を走っていたのが坂倉と真壁のどちらかは分からなかった。自衛隊員が何の罪もない日本国民に対して、銃を向けた事実に永山は戦慄した。このままでは、全員が殺害されるという恐怖感にとらわれた瞬間、永山の体は宙を飛んでいた。意識が深淵の闇の中に吸い込まれていった。

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