第24話 突破
永山は来た道を最初は一人で今は新たな仲間を加えて3人で歩いていた。山間の道は死んだように静まり返っていた。
「鳥のさえずりも聞こえない」永山は洲崎神社で見た光景を思い出していた。
「この辺りの鳥類はもしかすると全滅したのかもしれない」
「一体何が起きていると思いますか」坂倉と真壁は一つの仮説を立てていた。
「この房総半島南端がパンデミックの発生場所であることは明らかだ。しかし、前回パンデミック時のSARS-CoV-2とは対応が明確に違う。政府はこのウイルスの発生を公表しないどころか隠蔽しようとしている」
「政府が発表しない理由は房総沖に墜落した謎の物体にあると僕たちは考えています。警察と自衛隊がこの地域を二重、三重に封鎖していることがその証拠です」
「君たちの推理は正しいと僕も思う。ここで起きていることを一刻も早く公表することがジャーナリストとして僕に課せられた使命だ」
「何かが近づいてくる気配がします」音に敏感な真壁が警戒の声を上げた。3人は泥脇の草藪に飛び込んだ。直後に動物の悲鳴が聞こえてきた。
緩い勾配の道から現れたのは白い防護服に身を固めた自衛隊員だった。隊員は全員89式5.56mm小銃を肩からかけていた。隊長らしき男がマイクで話し始めた。「この地域は致死性の高いウイルスに汚染されているため、外出は禁止されています。解除命令があるまでは家から出ないでください。なお、屋外で飼育されている家畜や動物は防疫上の適切な処置を行います」隊員の後に化学防護車と73式中型トラックが続いた。隊員がトラックの荷台に息絶えた柴犬を投げ込んでいるのが見えた。永山は坂倉が指差す方向を仰ぎ見た。浮遊しているのは鳥ではなく、監視用のドローンだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます