第20話 感染爆発(6日目)
房総半島南端で発見された疫病は驚異的な速度で広がり始めていた。それはまさに感染爆発と言えるものだった。海上自衛隊館山航空基地に急遽設置された臨時医療施設には感染した患者が次々に運び込まれていた。感染防護服に身を包んだ医官があらゆる抗ウイルス薬や抗生物質を試したが病状の進行を止めることは出来なかった。延命をはかるための対症療法も効果が無かった。
患者の多くはエボラ出血熱のようにあらゆる場所から出血する。しかし、出血した鮮血はすぐに未知のウイルスによって食い尽くされてしまう。残った患者の肉体は手足から急速に壊死していった。それは、まるで体の中にある火種が着火して、燃え上がったようだった。
横田基地から派遣されたウインター少佐は埼玉県の陸上自衛隊化学学校からこの最前線の医療施設に詰めていた。このウイルスは間違いなく人類が生み出した最悪、最恐のウイルス兵器だと少佐は確信を深めていた。
このウイルス兵器を上回るウイルスを米軍も早急に開発しなければならない。そのためにはCDCより先にあらゆるデータの収集が必要だった。このウイルスが人体にどんな変化を及ぼすのか、目の前で激しい痛みに苦しんで死んでいく患者もウインター少佐にとっては、貴重な人体実験に過ぎなかった。
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