第5話 空の異変

「坂倉、この観測データ、ちょっと見てくれよ」天文観測を趣味にする真壁は友人の坂倉にパソコンの画面を指差した。坂倉も数値解析を得意にするアマチュア天文観測家だった。

「なんだよ。また新しい彗星を発見したのか」坂倉はパソコンに表示された画像とぎっしりと並んだ数値を眺めて言った。

「この画像に写っているわずかな航跡、なんだと思う」「隕石じゃないのか。かなり小さいな」「俺も最初は隕石だと思った。でも途中から落下スピードが急激に落ちている。変じゃないか」

「そうだな。隕石じゃない物体か。面白そうだ。データを解析してみるか」二人のアマチュア天文家はこの謎の物体の正体を明らかにするため、世界中の天文台が公表しているデータとネットワークでつながったアマチュア天文家からデータ収集を始めた。膨大なデータ解析には長時間を要するが、二人のアマチュア天文家にとっては、苦痛などではなく好奇心に包まれた至福の時間だった。

 データ解析作業に没頭した真壁は疲れ切って、ソファに倒れ込むようにして眠りに落ちた。坂倉は眠い目をこすりながら、計算結果の検証を行なっていた。

「真壁、起きてくれ。こいつは隕石なんかじゃない。計算によるとこの物体は西太平洋に落下したのは間違いない」

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