第1話 定期検診

…Codeメンテナンス完了。

システムを再起動します。


「翠ちゃんメンテナンス終わったわよ。定期検診お疲れ様。」

メンテナンスの終了と同時に、聞きなれた声が聞こえてきた。


「んんっ…」

目を開けると見慣れぬ天井、ふかふかのベッド。

そういえば定期検診を受けに来ていたんだった。


定期検診は「Code」に問題が生じていないか定められた機関でチェックを行うことであり、国から定められた制度のことだ。

「Code」は既に日常生活には欠かせないものとなっているので、検診はとても大切である。


「高島先生、今回の検診も特に問題なし?」

先生は私が小さい頃から「Code」のお世話をしてくれている専任の女医さんで、

とても優しい先生だが、時には厳しい面もあって、私にとっては第二の母のような存在だ。


「相変わらず適合率は低いけれども、特に数値には問題ないわよ。安心してちょうだいな。」

適合率が相変わらず低いのは気になるけれど、特に問題はなかったようだ。


「ちなみに適合率はどれくらいだったの?」

心の中では"聞いたどころで結果はいつもと変わらない"と思ってはいるが、聞いておきたくなるのが人間である。

増えているのがわかっていても、体重測定の結果が知りたくなるのと似ている気がする。


先生は苦笑いをしながらこう言った。

「平均適合率21%だったから、前回と大して変わらないわね~。」

世間一般的な適合率が60%以上のことを考えると私の適合率はかなり低い…生まれつき低い体質だから仕方ないのだろうか。


低いからといってそこまで大きな問題があるわけではないが、適合率が高い人と比べると、Codeの処理能力が低い傾向にある。

現在の生活では旧時代に存在していたPCの代わりにCodeが使用されているので、昔の言葉に置き換えると、私は低スぺPCということだ。


「まぁ、将来的に難しい業務を行う仕事に不向きなだけで、日常生活には特に影響ないから別にいいけどさ~」

生まれつきの問題のため多少慣れてはいるが、検診の度に平均よりも低いという現実を突きつけられると多少悲しくはなるものだ。

可能であればこの"適合率"という項目だけ消し去りたいと思っている。


そんな私を気遣って先生はこう言ってくれた。

「適合率については残念だったけれど、Codeも体も健康で、特に不自由がないならそれだけで幸せじゃない!」

確かに先生の言っている通りだ。健康が何よりの幸せである。


その後日常の相談を軽くしてもらった後に、施設を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る