最終章:安土姫ノ神

第24話 暗闇ノ中ヘ➀

 その日の放課後。

 未来くんと凪沙の働きでクラス会議が行われた。場所は2年3組の教室。無藤真白を含め、今日登校していた全員が参加した。会議と言っても、余裕のあるものではない。俺を含め、みんなの顔は灰色だった。それでもみんなが集まったのは現状をどうにかしたいと強く思っているからだろう。

 

 まず、話されたことは、なぜ委員長と副委員長の2人は朝早くに学校に来て、そして死んだのか。

 これに関してはすぐに朝比奈さんと未来くんの科学部コンビが解決してくれた。


「委員長の制服ポケットからという紙が出てきた。これは毎年学園祭の準備を円滑に進めるためにまず委員長が個人で考えるもので、今日の朝に副委員長に一旦相談しようと思ったんだろ」

「そして、2人は厄災に巻き込まれたってわけね」


「勝手に話を進めるなよ? まだ厄災って決まったわけじゃねーし、今回は2人同時だ。可能性を絞るな」


 美和くんが立ち上がって抗議する。

 未来くんと朝比奈さんは絶対的な反論を出せずに、黙り込んでしまっている。


 俺は、このタイミングしかありえないと思い、真白の背中を押した。


「あっ、あの! 私……今までの、全部が厄災だって証拠、持ってます。このPCの中に……」


 クラスの目線が一気に真白に集まった。美和くんを筆頭に急に学校に出てきて何事だと言いたげな顔をしていた。俺は、このままだと真白が何かとフリな展開になりかねないと察し、事情を汲み取ってくれそうな白馬くんと凪沙にSOSを表す視線を送った。


「み、みんな! 真白がレイナと同じようにあの日の記憶が丸々抜けてるの知ってるだろ? そ、それで昨日? かな……。彼方くんがなんとか奇跡的にその証拠に繋がるモノを見つけてくれたんだよ、な?」

「あ、ああ! 凪沙、真白のPCと前のスクリーン繋げてくれないか?」

「承知した。みんな! 今、いろいろと思うことはあるかもしれないが、真白を信じよう」


 凪沙の一声で美和くんはおとなしく席に着いてくれた。


 教室の明かりが消され、5分少々の動画が始まった。

 

 2年3組の教室、中央にいる女の子2人。

 真白と幽夏と思わしき女の子が横に並んでゲームをしていた。画面には見えないが、近くからもう一人の女の子の笑い声。おそらくレイナさんのものだ。

 そして。

 ソレは起きてしまった。ゲームに夢中の真白の隣で銅像のようにピクリとも動かなくなった幽夏さん。そう思った次の瞬間、全身が萎み枯れ、2つの悲鳴とともに動画は停止した。覚悟はしていたのだが、実際に見るのはこれが初めてであったため、動揺の胸の鼓動が全身を駆け巡った。



「この動画をレイナと幽夏と撮っていたってこと……ずっと思い出せなかったの。でも、彼方のおかけでみんなに見せることができた……。厄災の瞬間を」


「…………」


 厄災をずっと否定していた美和くんに白馬くん、凪沙、夜、耕太くん、さくらさん、早瀬さんは大きな口を開けて動画が終わった白のスクリーンをただただ見つめていた。


「凪沙くん、」

「わかっている。反論は無いよ、賢人。委員長たちが最後に……私たちが1つになるチャンスをくれたのかもしれない……」

「…………」


 真っ先に否定してくるはずの美和くんと白馬くんも、凪沙らしくない弱々しく悲しげな顔を見て、静かに納得しているようだった。


「私のせいで遅くなっちゃったね……」

「……ありがとう、真白」


 そして……ありがとう。委員長……副委員長、クラスをまとめてくれて。


「……進めてくれ。賢人」


 次に、話にあがったのは、2という点だ。

 





「今日が約束してた締め切り日だな、彼方くん。話してもいいか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る