#8 家庭の喜び(感想)

 『19世紀の異端科学者はかく語る』電子書籍化にともない、カクヨム版は序文を残して削除しました。規約の関係でURL載せませんが、書籍版タイトルは『十九世紀の異端科学者はかく語る: ダーウィンの愛弟子ラボックの思想と哲学 -The Pleasures of Life-』です。


 電子書籍版を出したからといって、小説投稿サイトを軽んじるつもりはまったくなく、棲み分けしつつ執筆活動を展開したいと考えています。


 そこで、ここから先は、翻訳文を引用しながら訳者主観で「感想と解説」を投稿しようかと。


「翻訳者だって、ひとりの読者として感想書きたい!」


 そんな主旨で、好き勝手に語ります。


(※引用文は改稿前のもので、書籍版とは異なる場合があります)





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#8 家庭の喜び(感想)

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 今回のテーマは『家庭の喜び』で、前回『旅の楽しみ』と対になる内容です。




> 旅立つときと、帰宅するとき。どちらが楽しいかといえば……


> 家に座って、ロマンチックで信頼できる航海や旅行の古い二つ折り本を読む。

> 髭を生やした熟練の旅人が主人公だ。古い田舎の家の炉端でカーテンを引いて、戸外ではちょうど風が吹いていて、読んでいる川のせせらぎや森の伴奏が聞こえている——これは、おそらくこの世で最高の瞬間だ。




 『#3 本の賛歌』と『#4 本の選び方』でさんざん語り尽くしたのに、ラボックは本当に読書が好きなんですねえ。




> 私たちは、自宅の炉端にいながら無限の可能性を確保することができる。

> まず、季節の移り変わりは、すべての家庭を豊かにする。

> 春の柔らかな緑、夏の豊かな葉、秋の華やかな色合い、冬の繊細な装飾など、窓から見える景色はどれほど違うことだろう。(中略)

> 毎日が絵に描いたような美しさの連続で、その種類は尽きることがない。

> 空の美しさから喜びを感じる人がいかに少ないかということは、驚くべきことだ。


> 私としては、夕方になると部屋を閉め切る習慣——外には何も見るべきものがないかのように——を、いつも残念に思っている。


> 私は、太陽や月を崇拝する人たちを不思議に思ったことはない。




 ジョン・ラボックの父(ジョン・ウイリアム・ラボック)は天文学者なので、天体観察に思い入れがあるのかも。このページでは省きますが、本編では「夜空を見上げると星々が助言をくれる」話なども出てきます。


 下記の詩がすごく好み……。



> 夜はなんと美しいのだろう!

> 夜露のような新鮮さが静寂な空気を満たしている。

> 霧も雲もなく、斑点も汚点もない。

> 天国の静寂を破り、

> 渾身の輝きを放つ神々しい月が

> 紺碧の深淵を転がってゆく。

> その安定した輝きの下には

> 砂漠の輪が広がっている。

> 天を包む丸い海のように。

> 夜はなんと美しいのだろう!




 それから、家庭に欠かせない女性について。

 作者は19世紀の人だから、古めかしいジェンダー観に感じるかもしれませんが。




> 母や妻、姉妹や娘を愛したことのある者なら、聖クリュソストモスが女性を「必要悪、自然な誘惑、望ましい災難、家庭の危険、致命的な魅力、 絵に描いた病気」と表現するのを、驚きと哀れみなしに読むことはできないだろう。


> 野蛮な暮らしの中で女性がどれほど苦しんでいるかを考えると恐ろしい。

> 知的なギリシア人の間でさえ、稀な例外を除いて、女性は家庭という楽園を司る天使としてよりもむしろ家政婦や遊び道具として扱われてきたようだ。


> 北アメリカのアルゴンキン語には「愛する」という言葉がなかったため、宣教師が聖書を翻訳する際に、新たな言葉を考案せざるを得なかった。

> 愛のない人生、そして愛のない言葉とは何だろう。



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