#5 友人の祝福(感想)

 『19世紀の異端科学者はかく語る』電子書籍化にともない、カクヨム版は序文を残して削除しました。規約の関係でURL載せませんが、書籍版タイトルは『十九世紀の異端科学者はかく語る: ダーウィンの愛弟子ラボックの思想と哲学 -The Pleasures of Life-』です。


 電子書籍版を出したからといって、小説投稿サイトを軽んじるつもりはまったくなく、棲み分けしつつ執筆活動を展開したいと考えています。


 そこで、ここから先は、翻訳文を引用しながら訳者主観で「感想と解説」を投稿しようかと。


「翻訳者だって、ひとりの読者として感想書きたい!」


 そんな主旨で、好き勝手に語ります。


(※引用文は改稿前のもので、書籍版とは異なる場合があります)





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#5 友人の祝福(感想)

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 タイトルを「祝福」としましたが「恩恵」や「ありがたみ」でも良かったかも。

 今回のテーマは「友達」と「友情」について。

 それから、いい友達の作り方と維持する方法について。




> 犬や馬を選ぶ場合、血統や性格や躾の状態を調べたりして細心の注意を払う。

> ならば、友人選びはそれ以上に重要だ。

> 友人関係によって、私たちの人生全体が善にも悪にも、多かれ少なかれ影響を受けるのに、ほとんど偶然に任せてしまうことが多すぎる。



> 積極的に悪いことをするわけではなく、意図的に私たちを迷わせるわけでもないが、自分では何の努力もせず、自分の心をないがしろにして、会話をつまらない雑談や単なるゴシップに向ける人たちが非常に多く散見される。

> 体裁を気にして何かをひけらかさなくても、工夫次第で会話は有意義で楽しい時間になると理解していないようだ。




 ラボックの友人論・友人選びは「馴れ合い」とは違うみたい。

 心に刺さる至言が続きます。




> 何かを学べない相手などほとんどいない。

> たとえ何も学べなくても、知的な質問による刺激や、暖かい思いやりで、私たちを助けてくれるかもしれない。

> しかし、どちらもないのであれば、その人との交流は、付き合いと呼べるものであっても単なる時間の無駄であり、そのような人に対しては「もっと良い他人になる」ことを願って、距離を置いてもよいだろう。



> 多くの人は友人関係は偶然の産物だと信じている。

> 接する人すべてに礼儀正しく、思いやりを持つことは正しいことだが、その相手を真の友人として選ぶかどうかは別の問題だ。



> 近所に住んでいるから、同じ仕事をしているから、同じ路線を歩んでいるから、などという他愛もない理由で、その相手を友人にしようとする人がいる。

> これほど間違った友人作りはない。(中略)

> 「友情の偶像やイメージ」に過ぎない。




 淡々と、ある意味「厳しい」言葉が並びますが、私はとても腑に落ちました。

 暇つぶしや人数合わせや、寂しいからという理由の友達付き合いは、私もいらないと思うから。




> すばらしい友人が人生の幸福と価値を高めてくれることは間違いない。

> その一方で、私たちは基本的に自分自身に依存しなければならず、誰もが自分自身の親友であると同時に、自分自身が最大の敵でもある。




 一方的に、自分が「友人を選ぶ」だけではなく、友人に選ばれるために努力する(媚びる意味ではない)ことも説いています。




> もし、他人や相手のことをどう思っているかを互いに知っているとしたら、パスカルは「この世に四人の友はいない」と断言している。この言葉は強すぎると思うが、ともかく四人のうちの一人になるように努力しよう。

> そして、友人を作ったら、その人を大切にしよう。




 今回「#5 友人の祝福」の締めくくりは、友人との死別に絡めて——、




> 友人を、彼らが「持っているもの」ではなく、「ありのままの姿」で選ぶとしたら。私たちが「友情」という大きな祝福を受けるに値するとしたら。

> 友は不在の時も、死んだ後も、いつまでも私たちと共にいて「記憶の琥珀」の中にとどまってくれるだろう。




 最後の一文がとても美しい。

 本章のタイトルをどう訳すか迷いましたが、やっぱり「友人の祝福」がふさわしいと確信しました。

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