#10 仕事と休息(3)

 最後に。仕事とは、休息という豊かな報酬を得るためのものだ。

 いい仕事をするためには休息が必要で、休息を楽しむためには仕事をしなければならない。


「休息がにならないように気をつけなければならない。石は、激流にもまれ雷に打たれている間はその威厳を保っているが、流れが静まり嵐が過ぎると、草に覆われ、苔や菌類に侵食され、塵の中へとき込まれる。とは、花崗岩のベッドで息をひそめているカモシカのものであり、飼料の上でぼうっとしている牛のものではない」[8]


 ベストを尽くしたとき、私たちは安心して結果を待つことができる。


「これらのことをよく理解した人は、軽い心で生き、簡単に手綱を握る。何があっても静かで、これから起こりうるすべてのことに期待し、すでに起こったことに耐える。このような人を妨げるものがあるだろうか。——貧しさに耐えろというのか? やってみるがいい。貧乏人の役をうまく演じる者を見つけたとき、貧乏がどんなものかわかるだろう。私に権力を与えるのか? ならば、権力もそれゆえの苦労もやってみよう。私を追放するのか? 私がどこへ行こうと、そこは良い所だ」[9]


 仏教徒は、将来さまざまな罰を受けると信じているが、徳の最高の報酬は涅槃(ニルヴァーナ)である。これは、最後にして永遠の安息を意味する。


 アシュマネゼル王(Ashmanezer)が安息を訴える感動的な言葉は、現在パリにあるシドン人の石棺に刻まれている。


「わが治世の十四年、雨(ブル)の月、シドニアの王タブイスの子アシュマネゼル王は次のように宣言した。——私は、時間より前に奪われた、何日も続く洪水の息子である。偉大な王は沈黙し、神々の息子は死んだ。私は自分で建てたこの墓所で眠る。支配者たちとすべての人へ勧告する。誰もこの安息所を開けてはならないし、財宝を探してはならない。私たちに財宝はないからだ。私の安息の長椅子を持ち去ったり、この安息所で私の眠りを乱して、私たちを悩ましてはならない……。安息の墓を開く者、安息の長椅子を持ち去る者、この長椅子の上でわたしを悩ませる者、これらの者に故人との安息はないだろう。彼らは墓に葬られることもなく、子も種もない……。彼らには、地下の根も地上の実もなく、太陽の下で生いている間の栄誉もないだろう」[10]



(※)雨の月(the month of Bul):ユダヤ暦の月。古代バビロニア暦に由来し、バビロン捕囚まではブルと呼ばれた。現在の10月〜11月ごろ。




 怠け者は、休むことが何であるかを知らない。

 よく働いたあとの休息は、単に肉体を休ませるだけではない。

 さらに重要なのは、心の安らぎを与えてくれる。

 最善を尽くしているなら安心して休むことができる。


「神の意志にこそ、私たちの平和がある」[11]


 そのような安らぎの中で、心は真の喜びを見出すことができる。


「ケアが眠ると、魂(ソウル)が目覚める」


 若いうちは、努力や闘争のアイデアが刺激的で楽しいものだ。

 しかし、年月が経つにつれて、平和と休息の期待と見通しが徐々に広がっていき、そして——


「最後の夜明けが灰色に落ちるとき

 人生の苦難と安楽がすべて完了する

 働く者は知っているが、遊ぶ者は知らない

 休息が甘美であることを」[12]



【原作の脚注】


[1] Gray.

[2] Jefferies.

[3] Tennyson.

[4] Emerson.

[5] Morris.

[6] Coleridge.

[7] Goethe.

[8] Ruskin.

[9] Epictetus.

[10] From Sir M. S. Grant Duff’s A Winter in Syria.

[11] Dante.

[12] Symonds.

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