#6 詩(1)
歌い手は、芸術が無駄でないと訴えることができる。
人々の心を揺さぶる歌は、それ自体が行為なのだから。
——アルフレッド・テニスン
***
プルタルコスいわく、シュラクサ包囲戦でアテネ軍が惨敗した後、「エウリピデスの詩を暗誦できる者を惜しんでシチリア人を助け出した」そうだ。彼は「エウリピデスのおかげで救われた人たちがいた」と語っている。
「ギリシャ人の中でも、シチリア人が特に愛した詩人はエウリピデスだった。島に上陸したよそ者から、エウリピデスの作品の小さな資料や断片まですべて拾い集め、互いに喜んで伝え合った。ある者は主人にエウリピデスの詩を教えたおかげで権利を与えられ、またある者は戦後に放浪していたときにエウリピデスの詩を歌って軽食を手に入れたと言われている」
現在の私たちは、詩(Poetry)のおかげで生かされているわけではない。
だが、別の意味で、多くの人が詩に生かされた恩義がある。
疲労や悲嘆や不安に押しつぶされそうなとき、ホメロスやホラティウス、シェイクスピアやミルトンを手に取ると、しだいに雲が晴れて、神経の軋みが治まり、疲労に代わって力がみなぎると自覚し、落胆の闇から再び人生の光が輝くのを感じたことがどれほどあっただろう。
ジャウエットは次のように語っている。
「プラトンは『国家(Republic)』から詩人たちを追放している。詩人は感覚と結びついている、感情を刺激し、理想的な真理から三度も遠ざかっているという理由からだ」
(※)ジャウエット(Jowett):オックスフォード大学の英語教師で行政改革者、神学者、聖公会の聖職者。プラトンとトゥキディデスの翻訳者。
この点において、プラトンの『国家』が理想的な国だと認める人はほとんどいないだろうし、多くの人は、フィリップ・シドニー卿(Sir Philip Sidney)の次の言葉に同意するだろう。
「もしあなたが詩の音楽を愛する惑星に耐えられないなら……。私はすべての詩人に代わって、あなたが生きている間は、愛に生き、ソネットの技巧を欠くことで好意を持たれないようにする。そしてあなたが死ぬとき、墓碑銘がないために、この星からあなたの記憶は消えるだろう」
(※)ソネット(Sonnet):十四行詩。ヨーロッパの代表的な定型抒情詩で、技巧的な押韻が特徴。
詩は、しばしば絵画や彫刻と比較されてきた。
シモニデスは「詩は語る絵であり、絵画は無言の詩である」と語っている。
クーザンは「詩とは、芸術の最初の作品である。無限を最もよく表しているからだ」と語っている。
そしてまた、
「芸術はある面では孤立しているが、あらゆる素材から恩恵を得ていると思われる芸術分野がある。それは詩だ。詩は、言葉を用いて絵や彫刻を作り、建築家のように建物を建て、メロディーとミュージックをある程度結びつけることもできる。詩は、すべての芸術を一つに統合する中心である」
真の詩とは、絵のギャラリーだ。
絵や彫刻は、見たことのない対象について、どんな描写よりも鮮やかに生き生きとしたイメージを与えてくれる。しかし、一度見たことのある対象については正反対で、詩人が見せてくれるものに多くの見どころがある。
表現も自然も、私たち自身が認識できない見どころがきっとある。
物体は芸術家によって、行動は詩人によって、最も鮮やかに私たちの前にもたらされる。[1]
例えば、女性の美しさを例に挙げてみよう。
どんな描写でも、どれほど苦労し、どれほど冷淡に見えるか。
偉大な詩人たちはこのことを認めている。たとえば、ウォルター・スコットが『湖上の美人(The Lady of the Lake)』を読者に理解させようとするとき、何も言わなくても、彼女の振る舞いを淡々と述べてから、次のように付け加えた。
「ギリシャの彫刻でさえ、ニンフ、ナイアード、グレースよりも洗練された容姿や愛らしい顔の女性を彫ったことはない!」
(※)ニンフ(Nymph):森などに住む少女の姿をした妖精
(※)ナイアード(Naiad):少女の姿の水の精
(※)グレース(Grace):貴婦人
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