ep7/空猫ノ絆(後編)


「よく時間を稼いでくれたリゼータ。後は僕に任せてくれ」


 さわやかな笑みで呼びかける、金髪碧眼きんぱつへきがんの大剣使い。

 彼こそが【天剣のゲルト】の二ツ名を持ち、帝都最強と名高い霊刃士ブレイダー空猫ノ絆スカイキャッツのリーダーにして、帝都のみならず、世界中から注目を集める新時代の英雄である。


 その姿は眉目秀麗びもくしゅうれい威風堂々いふうどうどう才色兼備さいしょくけんびの完璧な貴公子と形容するに相応ふさわしい。

 ゲルトが肩に担ぐ黄金の大剣には、優雅ゆうがな天竜紋が浮かび上がり、煌々こうこうと黄金の輝きを放っている。やがてゲルトの視線が、上空を舞う仇敵きゅうてき射貫いぬいた。


「全く……随分ずいぶんと調子に乗ってくれたね。でも、もう君は終わりだよ」


 迂遠うえんな死の宣告を告げられて、歪蝕竜ツイストドラゴンがビクリとすくみ上がる。

 狂戦化している歪蝕獣ツイスターとはいえども、恐怖は感じるのだろう。しかしすぐにじ気を振り払って、戦意を取り戻そうとする。しかし――


「やっとすきを見せたな」


 『ズシャァァッ!!』影のごとく忍び寄っていたリゼータが、気を抜いていた歪蝕竜の隙を突き、背後からその醜悪しゅうあく片翼かたよくを斬り落とした。


「グゲ4エ)(エdgljエ#オアrhgaskエ6ェ%gadェ0%23\\ェッ!!?」


 激痛と混乱に悲鳴を上げ、錐揉きりもみしながら墜落ついらくしていく歪蝕竜。

 そして盛大な地響ぢひびきと共に、泥にまみれた水煙が舞い散った。


 やがて水の煙幕が晴れれば、瓦礫がれきの海に歪蝕竜が横たわっていた。

 右眼と左翼を失った、上空からの落下もともなって満身創痍まんしんそうい。不規則な痙攣けいれんを起こしながら、全身からも青黒い粘液ねんえきを噴き出しており、もはや戦闘不能なのは明らかだった。


「ギ5o……ギ8dギ)…ギギッ……!」


 力無く身を起こす歪蝕竜ツイストドラゴンの前に、金色こんじきの断罪者が立ちはだかる。

 ゲルトが持つ大剣には、彼が信仰する創界母神そうかいぼしんアルメイダが刻まれており、ゲルトはその精緻せいちなレリーフに祈りを捧げた後、母神の意志を代行するかのように厳粛げんしゅくに言い放った。


「悪逆非道の歪蝕竜よ。母神のなげきを知れ。そして己が罪を地獄で悔い改めるがいい」


 すると大上段にかかげられた大剣から、荒れ狂う烈風と黄金の光流が巻き起こる。

 天竜紋の加護によって、その力を肥大化ひだいかさせ、さらに地・火・時の三大神霊にささげた祈祷きとうによって、絶大な破壊力を秘める霊技を顕現けんげんさせる事を可能にしたのだ。

 荒れ狂う力の奔流ほんりゅうの前に、リゼータたちは吹き飛ばされないように身構える。

 そして、あまりの巨大な力を前にした歪蝕竜は――己の死が眼前に迫っているというのに――魅入みいられたように動けなかった。


極斬流霊剣術奥義きょくざんりゅうれいけんじゅつおうぎ――森羅万象斬しんらばんしょうざん!!」


 そして一際眩ひときわまばゆい黄金の閃光と共に――時空を突き破るがごとく、流水のごとくなめらかに、天翔あまかける竜のごとく勇壮ゆうそうに――断罪の剣が振り下ろされた。

 それこそが、かつて地上最強とうたわれた極斬流霊剣術の奥義――森羅万象斬。

 この世にある全て。万物を断つと云われる、一子相伝いっしそうでんの超絶技であった。


 『――――キイィィィィィィン……!』


 んだひびきと共に、歪蝕竜の身体が真っ二つに斬り裂かれる。

 すると間もなくして、その断面から黄金の火炎が噴き上がった。


「グ&ゲ4エ%エエゲ%ゲ#ゲエ9エ)^エェ99ェェ`:ェ8ェ*ェ”ェ99ッ!!???」


 『ボオオオォォォン!』天まで届くような火柱の中、もだえ狂う歪蝕竜ツイストドラゴン

 それでも瞳に憎悪をたぎらせながら、空猫ノ絆スカイキャッツの面々を呪うようにめ付ける。

 しかし抵抗も虚しく、歪蝕竜の肉体は徐々に炭化し――その生命力を失っていった。




 歪蝕竜が滅びると同時に、帝都を覆っていた黒雲が晴れていく。

 そうして風雨が止むと、輝く太陽と共に、突き抜けるような青空が姿を現した。

 陽光に浄化されて瘴気しょうき霧散むさんすると同時に、首魁しゅかいの敗北を悟った歪蝕獣ツイスターたちが一斉に退却を始め――やがて帝都のあちこちで、どきが響き渡った。


 今回の魔獄獣災スタンピードにより、帝都中の建築物が損壊し、多くの人命が失われた。

 しかし、十二年前の獣災に比べれば、その被害ははるかに少ない。それを双手を上げて喜ぶのは、全ての者に出来るわけではないだろうが、ともあれ――もはや獣災は過ぎ去り、帝都は壊滅的危機を乗り越えたのだ。


空猫ノ絆スカイキャッツ! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆! 空猫ノ絆!』


 帝都のいたる所から、怒濤どとうのごときシュプレヒコールが沸き起こる。

 それはあまりにも熱狂的な様相ようそうで――号泣しながら声を上げる者、血を吐きながらも叫ぶ者、たかぶりすぎて全裸で踊り出す者までいた――誰もがこぞって空猫ノ絆を賞賛していた。


 すでに市民には伝わっていた。今回の伝説的偉業の立役者が、空猫ノ絆スカイキャッツであることを。皇帝すら見捨てた自分たちを救ったのが、彼らであることを。

 終わりなき歓喜の咆吼ほうこうと共に――空猫ノ絆の衆望はしゅうぼう限界を越えて、もはや信仰の域まで達しようとしていた。



「みんなお疲れ。しかしこれはまた……すごい歓声だな」


 壊れたように騒ぎ立てる市民を遠目に見ながら、戸惑とまどった様子で口を開くゲルト。そんな彼のかたわらには、未だに燃え続ける歪蝕竜の死骸しがいがあった。

 死骸を囲むように空猫ノ絆が集結していたが――すでに戦いは終わったというのに――アローゼ、ラピア、ジルミードの三人の表情は暗い。リゼータも緊張した面持おももちだった。

 そんな仲間たちの様子を見て、気まずげな苦笑を浮かべるゲルトだったが、リーダーの責務を果たさんとばかりに会話を切り出した。


「さて……歪蝕竜を迅速じんそくに討伐し、獣災を最小限に食い止めた偉業を祝して、このまま宴会になだれ込みたい所だけど――まだ、喜びにひたるのは早いだろうね。

 怪我人を救助したり、崩れた建物に閉じ込められた人を助けたり、すべきことはいくらでもある。今や空猫ノ絆は帝都を代表する探獄団ダイバーズであり、英雄とたたえられる立場にある。それを理解した上で、恥ずかしくない行動を……」


「ゲルト。悪いけど……少し黙ってて」


 今後の方針を指示するゲルトを押し退け、口火を切ったのは年長のアローゼだった。

 話しをさえぎられて面食らうゲルトを尻目に、沈黙するリゼータへと振り返るアローゼ。

 その琥珀色こはくいろの瞳には、強い怒りと悲しみが浮かんでいた。


「リゼ君……一体全体いったいぜんたい、さっきの戦い方はどういうつもり!? 貴方、一歩間違えたら死んでたのよ。いつも言ってるじゃない……自分を犠牲にするような戦い方はしないでって!」


 怒りに褐色かっしょくの肌を紅潮こうちょうさせながら、強い語調で問い詰めるアローゼ。

 問題の焦点しょうてんとなっているのは、リゼータが独断で歪蝕竜と交戦を開始したことだ。

 いくらリゼータが手練てだれの戦士とはいえ、一歩間違えれば絶命する危険な戦いを挑んだことを、アローゼは心の底から心配し、恐怖し、そしていきどおっていたのだった。


「そーだよ、リゼ兄のバカチンっ! 何であんな無茶したのさっ!? あんなイカれた化物を一人でしのごうとするなんて……あたい、心臓が止まると思ったんだぞ! 大体、リゼ兄ぃはいつも無茶しすぎなんだっ!」


 そして心を痛めていたのは、アローゼだけではない。

 続いてラピアも、み付きそうな勢いで抗議を始める。リゼータをにらみ付ける鋭い大眼おおまなこには、今にもこぼれ落ちそうな位に涙がまっていた。

 

「そうです……リゼータはもっと自分を大事にするべきです! そもそも、なぜ歪蝕竜を我々だけで討伐しようなんて考えたんですか! もっと低リスクの戦法があったはずです! あんな戦い方は絶対に認めません。反省してください!」


 更には、普段は物静かで口数の少ないジルミードまでもが参戦する。

 よほど感情がたかぶっているのか、その色白の顔は赤く染まり。大切な仲間を失うかもしれなかった恐怖のせいか、その細い肩は小刻みに震えていた。


 三人はリゼータを囲い込み、烈火のごとくリゼータを糾弾きゅうだんする。

 しかし感情を昂ぶらせる三人とは対照的に、リゼータは耐えるように――まるで何かを隠しているかのように――静かに口をつぐんでいた。


 そんな状況を見かねて「皆、落ち着いて聞いてくれ」と、仲裁ちゅうさいに入るゲルト。

 それから少しだけ興奮が静まった頃合いで、己の推論すいろんを語り出した。


「僕も単独での戦闘はダメだと思うけど、リゼータには目的があったんだろう」


 アローゼが「目的って……何よ?」いぶかしげに声を上げた。


 ゲルトはリゼータに向き直ると「なぁリゼータ。君が歪蝕竜ツイストドラゴンの単独撃破なんて危険をおかしたのは、更なる功績を求めたんだろ? 恐らく……神還騎士団アルムセイバーズへの入団を絶対的なものにするために」なかば確信した様子で問い掛けた。


 それを聞いたラピアが「えっ……!? でも、あたいら誰にも突破できなかった雷乱禁域サンダーガーデンを攻略したじゃんか。それで入団って決まったようなもんじゃなかったのかよ……?」困惑こんわくした様子で周囲を見回した。


 皆が沈黙する中で、ラピアの疑問にゲルトが応じる。「普通なら決定的だろうね。でも、リゼータはそれでも不安だったんだろ?」


 やがて思い至ったのか、ジルミードがハッと口に手を当てて「それって……ひょっとして……」と呟きながら、その目線をリゼータの手元に向ける。そこには幻罪紋カースマークがあった。


 そしてついに観念したのか、リゼータは「全く……ゲルトにはかなわないな」と弱々しくつぶやくと、覚悟を決めた様子で告白を始めた。


「……ああ、そうだ。俺は罪紋者だからな。国教である母神教で忌み嫌われている罪紋者が、神還騎士アルムセイバーになるなんて前代未聞の出来事だ。並大抵の功績では、その常識を打ち破るのは難しいと思ったんだ。

 だが、そのせいで無茶をして……心配させてすまなかった。そして俺の我侭わがままで、皆を危険に巻き込んでしまったことも謝らせてくれ」


 そう言って、リゼータは深々と頭を下げる。

 だが、ゲルト以外の三人は瞠目どうもくし、凍り付いたように動けなかった。

 そうさせたのは驚愕きょうがくであり、それぞれが己の不明を恥じていたからだ。

 これほどまでにリゼータは苦悩していたというのに、何よりも近しいはずの自分たちが気付けていなかったのだから。


「これからもお前たちと一緒に居たいあまりに、ついつい欲が出てしまったんだ。最善を言うなら、俺が空猫ノ絆スカイキャッツを抜けるのが、一番話が早いんだがな……」


 リゼータが自嘲気味じちょうぎみに呟くと「そんなこと言わないでよっ! リゼ兄ぃのバカっ!」と、涙を流してラピアがけ出し、リゼータの厚い胸板を小さな拳で何度も叩いた。


 アローゼは力無くうつむき「……ごめんなさい。リゼ君がこんなに苦しんでいる事に気づけなかった。一番付き合いが長いはずなのに……本当に自分のことばかりで、ダメね私」と悔いながら、褐色かっしょくほほを静かにらしていた。


 ジルミードも真珠しんじゅのような涙をこぼして「……本当に私は愚かですね。こんなんじゃ仲間失格です……!」と嘆き、己を強く責めていた。


 まるで己が罪人かのように悲嘆ひたんに暮れる三人の姿を見て、慌ててリゼータが言葉をけようとするが、その前にゲルトが口を開く。それはいつくしむような声色だった。


「……なぁ、リゼータ。チームを抜けるなんて悲しい事を言わないでくれ。君がいたから僕たちはここまで来れたんだ。

 空猫ノ絆スカイキャッツは君がいなきゃ、空猫ノ絆じゃない。僕たちは一心同体で、最高のチームで――それこそもう家族みたいなものじゃないか」


 ゲルトのその言葉に、アローゼもラピアもジルミードも、皆が力強く同意する。

 四人から熱い眼差まなざしを受けながら、リゼータはしばらく呆けたように立ち尽くす。やがて感極まった様子で、声を震わせながら心からの感謝を口にする。


「みんな、ありがとう。本当に良い仲間を持って……俺は幸せ者だよ」


 そして、いつもは仏頂面ぶっちょうづらのリゼータが――心の底から幸せそうに笑った。


 リゼータのまぶしい笑顔をびて、ゲルトは照れくさくなって目をらし、女性陣はたまらずほほを染めてしまう。

 それから女性陣は身を寄せ合い「リゼ君ってば……ズルいわ。うっ……鼻血が出そう」「リゼ兄ぃって、普段あんまり笑わねーもんな……破壊力がありすぎだって」「あんな顔されたら、もう何も言えません。やっぱりリゼータは女の敵です」などと、小声で文句をささやき合った。


 場が落ち着いたのを見計らって「おっほん!」と、ゲルトが大きく咳払せきばらいをする。そして皆の視線が集まると大仰おおぎょうに両腕を開き、芝居じみた口調くちょう空猫ノ絆じぶんたちの勝利をたたえ出した。


「さぁみんな。湿しめっぽい話はこれくらいにして、未来に視点を向けようじゃないか。僕たちは超最高位の歪蝕竜ツイストドラゴンを討伐するという大偉業を果たしたんだよ? 

 ほら、聞いてごらんよ。この帝都市民の僕たちを称える歓声を。あそこまでしたのに、僕たちが神還騎士団セイバーズに入れなかったら暴動が起きるよ? 

 ただでさえ今回のことで、王侯貴族も教会も評判は地にちるだろうから。市民からの敵意の矛先ほこさきかわす為に、僕らの人気を利用したくなるに違いないんだ。

 ここまで条件がそろえば、もう決定的さ。絶対に――空猫ノ絆スカイキャッツは神還騎士団に入れる」


 ゲルトが語る未来予想図には、確かな説得力があった。

 耳をませば、未だに市民たちが喝采かっさいの声を上げている。それと同時に、自分たちが達成した偉業の大きさに思い至り、空猫ノ絆の五人は感慨深かんがいぶかげに青空をあおいだ。


 するとリゼータが「よし! なら今夜は前祝いだ。アジトに帰ったら、盛大にごちそうにしよう。みんな何かリクエストはあるか?」そう明るい調子で切り出すと、仲間たちがワッと色めき立った。


 ラピアが目を輝かせながら「本当っ!? じゃあオレは、コカトリスの照り焼きが食べたいっ!」と、小さな身体を飛び上がらせて要求する。


 アローゼは悩ましげな表情で「アタシはねぇ……デビルポテトのサモサが食べたいわ! 帝国ビールもつけてね!」と、今夜の晩餐ばんさんに想いをせている。


 ジルミードはほほを赤く染めて「そっ、それなら私は……ユニコーンミルクで作ったクリームシチューが食べたいです」と、恥ずかしそうに注文する。ちなみに、ユニコーンのミルクシチューは、子供が好きな食べ物の代表格である。


 最後にゲルトが「ふふふ……じゃあ僕は、黒毛ミノタウロスのローストビーフを。バルザーク産の三十年もののワインも頼むよ?」と気取った口調でリクエストすると――みんなが少しだけイラっとした。


「まかせておけ。腕を振るって作ってやるさ」


 リゼータの力強い言葉に、子供のように大はしゃぎする四人。

 と言うのも、リゼータは長年の付き合いから、全員の好みを知り尽くしているからだ。そして腕前は、一流料理人にも匹敵ひってきするのだから。

 そんな彼が、全力で料理を振る舞ってくれると言うのだ。歓喜しないはずがない。


 そうやって和気藹々わきあいあいと勝利の余韻よいんひたっていた――その時だった。



「むっ……!?」


 いち早く異変に気付いたのは、やはりリゼータだった。

 『グジョジョジョジョ……!』突如、黒炭化していた歪蝕竜ツイストドラゴンの肉片が、妖しく蠢動しゅんどうを始めたのだ。それから肉片は瞬く間にふくれ上がり、グロテスクで巨大な竜頭を形作った。


「ギ#ギグギ$イィ&\##ィ8ィィ()$ィ2"……!」


 地に伏す醜悪な竜頭が、怨嗟えんさに満ちた鳴き声を上げた。

 再生が不完全で所々に皮膚が存在せず、赤黒い筋肉に血管と頭蓋骨ずがいこつき出しになり、止めなくぬめついた青い血を噴き出している。

 見るからに瀕死ひんしだが、それでも瞳にはギラギラと報復の意志が輝いていた。


「て、てめぇっ……! 往生際おうじょうぎわが悪すぎ――」


 そうラピアが悪態あくたいを終える前に『バクウゥゥゥ!』と竜頭の大顎おおあぎとが開かれた。

 さらされた口腔こうくうを目にして空猫ノ絆は、混乱と戦慄せんりつに襲われる。

 そこには爛々らんらん魔光まこうを放つ――どれほどの呪詛じゅそを重ねたのか――限界まで圧縮された霊力が輝いていたからだ。

 捨て身の意趣返いしゅがえし。想像を絶する憎悪と狂気の前に、全員は死を覚悟した。 


「くっ……みんなせろっ!!」


 それでも気力を振り絞り、いち早く動いたのはリゼータだった。

 しかし、その必死の叫びを嘲笑あざわらうように。気が触れたような高笑いを上げながら。


「ギャJFヒヒ6#ヒA9")$$ヒヒヒ~#O%~:G}}ヒィィ}?+*ィィィ!!!」


 歪蝕竜ツイストドラゴンはぶくりと風船のようにふくれ上がると――エネルギーを暴走させて自爆した。


『ズゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォン……………!!!』


 この日一番の爆音と共に――荒れ狂う雷獄が、周囲一帯を焼き尽くしたのだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


〈作者コメント〉

どうも。クレボシと申します。

集団の会話は難しいですね。キャラの印象づけが上手くいってれば、読んでいてもスラスラと頭に入ってくるんでしょうけど。

応援・感想・評価などをつけて頂けると嬉しいです。

誤字脱字の報告もしていただけると助かります。

※タイトル(ABYSS×BLAZER)はアビスブレイザーと読みます。ブレザーじゃないですよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る