2050年のスポーツ

川野遥

第1話

「何だって、君はサッカーを自分でやりたいと言うのかい!?」

 大仰に驚く声が教室中に響き渡った。どよめきの声が上がり、周囲の人間が「こいつは気が狂ったのか?」という表情で、申し出た少年を眺めている。

「サッカーでなくてもいいんだ。例えば野球とか、バスケットとかでも…」

 少年はおずおずと言うが、言われた方は手厳しい。

「僕は今まで、君のことを親友だと思っていた。しかし、今の言葉は聞き逃せない。君は今の発言で自分が差別主義者であると宣言したようなものだ。もう一度同じ言葉を繰り返すなら、僕は君との関係を切る!」

 断言するような物言いに、拍手が沸き起こる。教室内にいる誰もが、どちらの味方をしているかは一目瞭然であった。

「……!」

 少年は逃げるように走り去った。

「待つんだ! 君は一度、病院に行った方がいい!」

 反対していた少年は、心底心配するように手を伸ばしたが、少年は振り返らず走り去っていった。


 ここは2050年の日本。

 スポーツをプレーする人間が消え去った世界。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る