異世界に行きたい

「おい。そこ邪魔なんだけど」


 学校の昼休み中、突然後ろから俺の肩を押される。


 こいつの名前は川崎光星かわさきこうせい。このクラスの中心的存在なんだが……


 あることをきっかけに俺は嫌われてしまった。まぁ、あれを後悔はしていないからいいんだが、あれから目の敵のようにされていてずっと嫌がらせをされている。


「ごめん……」


 俺は横にずれて謝る。別にこれくらいなら怒ることではない。


 俺が一度陰湿な怒って事をされたときに怒ってしまったときは、証拠もなく先生も居なかったため俺が結局悪いというようなことになったのだ。


 クラスの奴らは見てたみたいだが次は自分かも。と恐れて言ってくれなかったのだ。


 まぁ、気持ちはわかるので他の奴らを恨むことはないが。


「チッ」


 川崎が舌打ちして俺の横を通っていく。


「光星~。まだ怒ってるの~?」


 三人ほどの女子が川崎の後ろを追いかけていく。


 この女子の名前は前田美来まえだみく。川崎の彼女と噂されている女子とその取り巻きだ。


 というかなぁ。舌打ちなんて俺がしたいくらいだよ。


 普通に教室の席に座っていただけなのに。


 もう何ヶ月もこんな状況だ。学校では一人ぼっちで過ごしていてクラスの奴らは俺に話しかけてくることはない。


「はぁ~」


 思わずため息をつく。


 いっそ、異世界に転移とか起きてくれねぇかなぁ。


 この世界に未練なんてないし。なんてな。そんなラノベみたいな展開起きるわけないんだけど。


 そんな事を考えていたその時、ドクンッと心臓が一度だけ弾けたみたいになり激痛が走る。


 それとほぼ同時に突然教室の地面が光りだす。


「何だこれ?!」


 誰か男子の叫び声が聞こえてきた。 


 光り始めてから数秒程したあとだろうか。


 目を開けることも出来ないほど眩しくなる。


 その時俺の体の中をなにか冷たいものが通り抜けた感覚があった。


 なんだ?!と思い周りを見渡そうとして目を開くとそこはもう教室ではなかった。


 なにかの建物のようではあったが明らかに石レンガのようでできている上にとても古いように見える。


 先程まで教室に居た奴らは近くにいるようで他の奴らも聞こえてくるが教室にあった物はなくなっていた。


 ドサッ


 俺は椅子に座っていたことを思い出したがすでに遅く椅子もなくなっていて尻餅をつく。


 その時に気付いたが足元にはゲームに出てくるような魔法陣が描かれていた。


「ここはどこだ……というかさっきまで教室に居たじゃねぇか……」


 みんなの声を代弁したような川崎の声が聞こえてきた。


「おいっ、誰かのいたずらかおいっ?!早く名乗り出ろよ!」


 そうクラスの男子の一人が叫び始める。


「これは異世界……じゃ」


 クラスのオタクがぼそっと喋る。


 その声を聞いた川崎がオタクに掴みかかる。


「おい、お前はなにか知ってるのか?」


「ぼ、僕は何も知らないです!!で、でも何か小説なんかに出てくる異世界召喚みたいだなぁって思って……、足元に召喚陣というか魔法陣のようなものもありますし……」


 その言葉を聞いたクラスメイトたちは今更魔法陣に気付いたようで何人かは飛ぶように魔法陣の上から離れる。


 俺もちらっとは思ったけどそんなラノベみたいなこと本当に起きるわけ……


「ステータスなんかが見えれば異世界って皆に分かりやす……」


 オタクがそう喋りながら突然目を見開き口を止める。


「異世界なんてそんなゲームみたいなことあるわけ無いじゃねぇk」


「ステータスと言ってみてください!!そうすれば意味がわかります!!」


 少し止まっていたと思ったオタクは川崎に言うと同時に周りの皆にも聞こえるような声で言う。


 ま、まさか見えるわけ……


「ステータス」


 俺は半信半疑ながらも期待しながらそう呟いた。



 

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