第24話 エピローグ編④ 友達の家族

--------------カウントダウン 残り9日--------------



【AM 9:00】


リノちゃんちまでうちから走って5分で到着。

インターホンを押そうとしてふと見ると門の横のカーポートに車が停まってた。

リノちゃんのお母さんが病院から帰ってきたんだ!


ピンポンピンポン


「リノちゃああん」


ピンポンと同時にリノちゃんを思いっきり大声で呼ぶ。

中からドタドタと足音が聞こえてきた。


「あ、ハナちゃん、どしたのぉ?」


「リノちゃんおはよう。えとお母さんに話した?」


「うん。今話してたとこ」


玄関からリノちゃんのお母さんが顔を出した。


「あら、華ちゃん、おはよう。ちょうど良かったわ。今、莉乃から話を聞いたんだけどもう少し詳しく聞いてもいいかな」


そう言ってリノちゃんのお母さんに家に招き入れられた。

私は家族会議の話をした。

リノちゃんのお母さんは食事をしながらキチンと聞いてくれた。


「なるほど、そういう事ね」

「お母さぁん、ハナちゃん達と一緒に行こうよぉ」

「おばさん、病院は休みにならないんですか?」


私は気になってた事を真っ先に聞いた。

おばさんはコップに入った麦茶をゴクゴクと飲み干した。


「うん。華ちゃんち一家とご一緒させてもらいましょうか」

「お母さん!ホント?」

「やったぁ!リノちゃん! あ、でも病院…」


「大丈夫よ。病院はね、昨日の総理の会見後はちょっとパニックになったけど、今朝から患者さんの退院ラッシュなの。患者さんの家族からも問い合わせが凄くてどんどんと退院させているわ。普段なら退院の手続きに時間がかかるけど、あと10日で地球が終わるのに手続きなんて必要ないでしょ。うちの病院はそんなに大きい病院じゃなかったからそれほど重篤な患者さんもいなかったし」


「そうなんだ、じゃあお母さんもう休み?」



「うぅん、ちょっと3時間ほど仮眠してからもう一度行ってくるわ。退院する患者さんの手伝い。夕方には戻ってくるから」


「あ、じゃあリノちゃんは荷物の用意とかした方がいいよ。お姉ちゃんに必要な荷物一覧貰ったからLAINEに載せるね」


「あ、華ちゃん、それおばさんにもちょうだい」


「私がお母さんのLAINEに貼っとくー」


「お母さん病院の帰りに必要な物を買ってくるわ」


その後リノちゃんのお母さんは寝室に寝に行った。

リノちゃんは私がLAINEに貼った一覧を見て荷物の準備を始めると動き出した。

私はカノちゃんとこに行く事にした。

あ、その前に途中で伊勢屋さんに寄らないと!




伊勢屋さんはもともと老舗というか割と古いお店で外から見ると店内は薄暗く開いてるのか閉まってるのかわからない感じだ。

扉に手をかけると鍵はかかっていないのでガラガラと横に開けた。


「こんにちわぁ……こんにちわあ! あの!やってますかぁ」


ビクビクしながら声をかけた。

店の奥の方に向かって声をかけるとガラス戸を開けて中からおばあさんが出て来た。


「いらっしゃい」


「あ、すみません。あの、今日、やってますか?」


一応ガラスケースの中や上にはいつものように和菓子が並んでいる。


「はいはい、やってますよ」


「よかったぁ。あと10日、あ、9日だからお店閉まってるかと思った」


「ああ、ねぇ?あんな事急に言われてもねぇ? で、何にしますか?」


「あ、大福10個とどら焼きも10個、それと…あ、お金足りるかな」


慌てて財布の中を確認した。


「ふふふ。今日はいいよ。お客さんほとんど来ないから。棄てるの勿体無いから持っていきな」


笑いながらおばあさんはそう言って、大福やどら焼きの他に日持ちしような和菓子を袋にいっぱい詰めてくれた。


「うわ!夢のようだよ。ありがとございます!」


ズッシリと重い伊勢屋の紙袋をぶら下げて今度はカノちゃんのうちへ向かった。


カノちゃんはお父さん、お母さん、自衛隊で働いてるお兄さんの蓮さんと弟の蒼くんの5人家族だ。

お父さんが観光バスの運転手で昨日は遠方に仕事だから今日の昼頃に帰ると言ってた。


スマホで時計を確認するとまだ11時前だった。

お父さんは帰ってきてないだろうな。

そう思いつつカノちゃんちのインターホンを押す。


ピンポーン


横開きの玄関がガラガラと音を立てて開くとそこにはカノちゃんのお父さんがいた。


「ん?花音の友達か? かのーん、友達来てるぞ」


「あ、ども、すみません」


いきなりお父さんが出ると思わずあたふたとしてしまった。


「だぁれー? ハナちゃん?リノちゃん?」


奥からカノちゃんの声がだんだんと近づいてきた。

廊下の先からカノちゃんが顔を出した。


「ハナちゃん!どしたの?」


「あ、いや、気になって…来ちゃった」


「あはは、あ!あの話、お父さんにしたよ。お父さんも賛成だって!」


「え!ホント?よかったぁ。あれ?でも、カノちゃんのお父さん昼すぎって言ってたのに早かったね」


「おう、あんな総理の話を聞かされて呑気に旅行を続ける客はいないさ。会社やお客さんの意向も確認してUターンする事になって、今朝早くにホテルを出発したんだよ」


「そうなの。だから1時間くらい前にお父さん帰ってきた。それでハナちゃんから聞いた話をして、お父さんも賛成だって」


「あ、でもでも蓮さんは?」


「あいつは自衛隊だからな。一応あいつにも連絡したが、

『自衛隊は有事の為の自衛隊だ 今こそその真価を発揮する時』

とか何とか返してきたな」


カノちゃんのお父さんはゲラゲラ笑っていた。


「でもその後LAINEで『後で合流するから先に出発してくれ 間に合わなかったら穴の先で落ち合おう』とか、もう〜しかたないなーって感じ」


「そっかぁ、そうなんだ。蓮さんすごいね」


「まあねぇ、私もお兄ちゃんのそんなとこは好きだよ。実際は結構ヘタレだったりするんだけど」


「ちょっとあなた達、いつまで玄関で話してるの。華ちゃんいらっしゃい、入ってちょうだい」


「あ、おばさん、こんにちは」


おばさんに挨拶しながらふと思う。

地球滅亡まであと9日なのに何かいつもと変わらないなぁ。


居間に通されるとそこに蒼くんがいた。


「あああ!伊勢屋だ!」


蒼くんは私が持っていた伊勢屋の袋に目敏く気がついた。


「あ、そうだそうだ。さっき伊勢屋さんでいっぱい貰ったの」


そう言って袋から大福やどら焼きを出した。


「コラっ 蒼はもう、華ちゃんごめんなさいね」


「あ、いんですいんです。こんなに食べきれないから」


「やったぁ」

「もう!蒼はぁ」


カノちゃんは表面上は蒼くんを怒りつつも嬉しそうにどら焼きを手に取っていた。

私はリノちゃんのとこでしたのと同じ話をカノちゃん一家にもした。

そして荷物一覧をLAINEに貼ってある事を伝えた。



スマホを見ると家族LAINEの方に未読があったので開いた。

お父さんからはガソリンゲットして、あと他の買い出しに行くとの書き込み、お姉ちゃんからは一緒に出発する全員と情報共有するため、今夜集まるべきと、お母さんは真由香おばさんとこの荷物整理がもう少しかかるとのこと。

やっぱり車に荷物が入りきらないと愚痴カキコミがあった。


私はそのLAINEを見せて、今夜集まれないかカノちゃんのお父さん達に聞いた。

それとリノちゃんにもLAINEで知らせた。


リノちゃんからすぐに『OK』の返信があった。

カノちゃん一家からもOKを貰えた。

私のスマホの家族LAINEを見てたおじさんから驚きの提案も貰えた!



「会社から自由に使っていいって言われてな。今、裏の駐車場に停めてあるんだ」


何とおじさんの観光会社がバスをくれるって言ったからおじさんは乗って帰ってきたそうだ。

カノちゃんが裏口から案内してくれた空き地には観光バスが停まっていた。

大きな、しかも立派な二階建てバス!!!

あんぐりと口を開けて見上げていたら、おじさんが横にやってきた。


「華ちゃんのおばさん一家の荷物も積めるぞ?」


急いでお母さんにLAINEで知らせた。


そのあとはお姉ちゃんが作った必需品荷物一覧をもとにカノちゃん一家は荷物をまとめていった。

予備のガソリンや飲料水、米や缶詰のように重たい物はバスの車体の下にある荷物入れへとどんどんしまっていく。

家族の荷物や生活品はバスの二階部分へ。

カノちゃん達は一階部分に乗るそうだ。


「二階部分にはまだ空きがあるから華ちゃんのおばさんとこの荷物も入るぞ」


カノちゃんちがバスを出してくれる話をLAINEでした後お姉ちゃんからもし可能なら持って行きたい追加物資一覧が書き込まれた。

それを見たおじさんと蒼くんは買い物に行った。

店が開いてるかわからないのでもしかしたら遅くなるかもと言い残して。


私はカノちゃんとおばさんが詰めた荷物をバスに運ぶのを手伝った。

蓮さんの荷物も必要最低限は持っていくそうだ。

蓮さん、本当はきっと家族と一緒に行きたいだろうな。


そうしているうちに日が暮れてきた。

私はカノちゃん一家を連れてうちに戻った。

地球滅亡まで10日のうちの貴重な2日目が終わるぅー。






--------------地球滅亡まで残り8日と数時間--------------

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