奇妙な出会い

 目が覚める。と同時にその存在を睨みつける。


「誰だ? 通報するぞ」

「あーそれはやめて!? 僕は天使!」

「は?」


 意味の分からないことを言っているそいつはベッドの横に突っ立っていた。

 華奢なからだつきに驚くほど白い肌。真っ白なスーツ姿に真っ白なベルトとネクタイ。男か女か分からない顔つきに高い声。首あたりまで伸びている髪の色は、変わった様子もなく一般的な黒さ。だが頭上には信じることのできないモノ。


「蛍光灯……」

「天使の輪っかだよ! 知らないの!? てんしのわっか!?」

「は? 何言ってんだよ。とにかくここから出て行けって……鍵かけてたはずだろ?」


 おそらく俺は夢現になっているのだろう。それか目が悪くなっているためか……

 どちらにせよ家に不審者がいることは確定だ。これが現実であっても夢であっても今すべき最善の行動は通報だろう。

 俺は枕元に置いてあったスマホを取ると慣れた手つきで操作する。


「ちょちょ、ちょっと待ってよーもー! 話くらい聞いて?」

「なんだよ何が目当てだ? 金か? 命か?」

「まーどちらかと言えば命なんだけど……」

「おけ、通報な」

「待って待ってって! 落ち着いて?」

「落ち着くもなにも俺は目覚めてから今までずっと冷静だ」

「一旦僕の話聞いてくれない? 命狙ってるならもう殺してるでしょ? ね? 凶器も持ってないし騙されたと思って! ね? ね?」

「言い方が詐欺師なんだよ……」


 目の前にいるその天使を名乗る人は手を振って何も持ってないことを示しながら笑顔でそう言っている。

 表情をコロコロと変えながら俺をなだめようとしている彼。そんな彼が動くたびに、頭上の輪っかは頭と連動しているかのように動いた。


「そんで、お前なんなんだ? なにもんだ」

「よくぞ聞いてくれたね! 僕は天使。神の使い」

「はぁ」

「そして君はじきに死ぬことになる」


 笑顔でそう告げた自称天使はそういうと「よろしくね?」と言って手を差し伸べた。

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