第42話 クランハウスに入ってみた

 クランに加わると立ち寄れることが可能になる場所。それが『クランハウス』だ。早速俺はクランハウスの中に入ってみることにした。


 メニューの中からクランハウスをタップするとゆっくりと視界が白い闇に包まれて行く……そして、段々とその白い闇が晴れていくと、俺は木張りの床の部屋の入口に立っていた。数歩入って、辺りを見渡していると背後から声が聞こえる。


「ここがクランハウスなんですね!」


 振り返るとマリンが一人で立っていた。


「あれ? なんでマリンが?」


「私もクランハウスに立ち寄って見ようかと思いまして……」


 とはいえ今いるのはマリン一人だけだ。残り二人はどうしたんだろう。


「ファーストとフレアは?」


「フレアがメインシナリオを進めたいとのことだったので手伝いをファーストにして貰おうかと……最初の方ならファースト一人で充分かなって。ああ見えて頼りになりますから」


「あ、ああ。知ってる……」


 ああ見えての意味が少しわからないが、俺よりも数段メインシナリオは進んでいるし、比べ物にならないくらい強い。もちろんマリンもだが。たまに雑魚狩りで野良パーティーに入ると二人の強さはわかる。最初の方どころか今日でフレアにメインシナリオを抜かれてしまうかもしれない。それくらいは頼りになる。


 と、多分マリンが比べる相手はアンバーとかなのかもしれないが……さすがに年季が違うからかテクニックも含めてアンバーとマリンたちとの差はかなりある。俺は一緒に遊んだことはないが、アンバーのクランメンバーも相当なものらしい。マリンとファーストが一緒にボス周回とかをたまにやっているらしく、話は聞いたことがある。


「まあ、ファーストが付いてるならフレアは問題無いだろ。とは言ってもクランマスターの俺が何もしてあげない訳にもいかないし、後で使いたい武器を聞いて作ってあげようかな」


 俺に出来ることは装備を作ってあげることくらいしか出来ない。ならクランマスターとして、メンバーが喜ぶことは出来る限りしてあげたい。


「とりあえずクランハウスの中を見てみるか」


 クランハウスの中には大きなカウンターがあり、向かいには何人かのNPCが立っている。このNPCは全て店員だ。


 雑貨屋、鍛冶屋、調合屋、魔法屋とめぼしい施設は全部ある。元々教会でしかクランの作る権限は与えられないからか、教会の施設だけは無い。


 クランハウス内からマーケットにアクセスすることも出来るから、街ではないマップでもクランハウスに入ればマーケットでの売買も出来る。

 実質、どのマップからでもほぼ全ての施設を利用出来るということになる。これはクランに入る大きなメリットだと思う。


 クランに入るメリットといえば、あとは、クラン専用のグループトークや掲示板、クランメンバー同士でパーティーを組んだ時の経験値等の増加だ。


 そして……


「これだな」


 独特な光を保った水晶のような玉が空中にふわふわと浮いている。触れると画面がポップする。


『こちらのコンテンツは準備中です。もう暫くお待ち下さい』


「ここからクランダンジョンに入れるみたいです!」


 とマリンが少し興奮気味に言った。。これはマリンやモヒカン野郎が話していた追加コンテンツ、通称『クランダンジョン』というものらしい。


「ああ、でも準備中とあるな……いつからだろ?」


「ネットの情報によると今週のメンテナンス後に実装されるらしいです。クランメンバーでのみパーティーを組んで潜れるダンジョンで、中に出てくるモンスターを倒して成績を競うとか……」


「なるほど」


「で、そのクラン毎の順位によって課金アイテムだったりかが貰えたりするそうですよ?」


 課金アイテムか。経験値アップやドロップアップ。身体のパーツを弄れる物とかだろうな。順位が良いほど良いアイテムが手に入るのだろう。


「へえ、よく調べてるな」


 俺はマリンを褒めると照れくさそうに笑った。


「ま、今週ってことはもうすぐだし、クラン設立するにはちょうどいいタイミングだったのかもな」


 マリンは何度も嬉しそうに頷いている。ま、求められてたのなら悪い気はしない。でも、期待に応えられるかどうか……とりあえず出来ることはやっていかないとな。


「さて、とりあえずクランハウスはこんなところかな。俺は戻るけどマリンは?」


「一緒に戻ります!」


 と俺たちはクランハウスを後にした。

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