仮想現実庭園

海月

仮想現実庭園

🌒仮想現実庭園


データグローブを装着し終えるとオペレータは


しおれてた夏をもの憂くまさぐりだす


束ねられたチューブに圧縮されてたエアーが


漂うばかりだった想念を具象化しだす


滞ってたオペレータの血流がしだいに熱をおびだす


閉ざしてた両の瞼を薄く見開くのはその後



すると睡蓮の水鉢にもう電脳空間はたたえられている


さやぐ木立にも似た図形がゆらいでいる


たゆたうエメラルド色の発光放散 と点滅


ひたひたと昼のひとところに仮想の庭園が満ちている


鉢底に沈殿する泥土から浮上しだしている気泡は


わたくしという概念であり命の営為でもある


水鉢の液晶画面にオペレータの微笑がさざ波立つ



灼熱を拒む都市の一画に庭園は設けられているのか


神経細胞のシナプスにも似た高速道の騒音から遠く


それとも群衆がかかげ歩く脳塊のどれかにか


もしくは林立する高層建築の空調空間のどこかにか


過剰な自意識が光化学スモッグとなり時代を覆っている


人類の進化がたえまなく自然を侵犯している


太古からの本能よ貴方を電脳の回路へ追いやるしかない





入力された太古からの欲望が反映していた昼下がり


いつのまにやらオペレータは死の夢に入眠しだしていたようだ


脱ぎ置かれたデータグローブにつながるチューブの束は


睡蓮の葉で見え隠れに濡れたままだったが


そよぐ睫毛に似て表示画像は時にまたたくものの


露にやどった仮想現実庭園の全景は水鉢からつたい落ち


まさぐられてた一夏は再びしわみかけだし





ついにはらはらほぐれだすオペレータの骨格からは


無音にくねり落ちる臓腑が七彩にとろけだしている


睡蓮の花茎に時の水源をさぐっていようがいまいが


沁みひろがる泪なみだに蘇生した遠い夏が旋律となりだす


天頂へとゆるゆる昇ってた日がついに極めきる


それは──電離圏に隔離されてた日常が影を一気に無くす刻


🔷 🔷 🔷 🔷 🔷 🔷

これ、カクヨム参入したての2023年大晦日に公開したものです。

自分に文才というものが少しでもあるのか、否か、座標の目安にと公開しました。

詩だかなんだかわからないし独りよがり過ぎるし、受けるわきゃないとは初めから承知の上でなんですが。でも、人目にさらす意義だけは大有りって思う。自分の資質がモロに出てるから。

「文句あっか」と開き直るしか、技術もない私には言葉を綴るなんてできないもん。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仮想現実庭園 海月 @medusaion

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ