第45話

 クレイがギルド本部に行くと驚きを持って迎えられる。

 村人からもらった討伐の証明書を受付嬢に渡すとカウンターの裏が慌ただしくなる。

「と、討伐証明書ですね。懸賞金は現金で?」

「いえ。ギルドの口座に」

「かしこまりました」

 この瞬間、クレイは五百万ゴルもの大金を手に入れた。

 それだけではない。

 受付嬢は新しいギルドカードを差し出す。

「テストクエストを攻略されましたので、ランクがルーキーからブロンズに上がります。こちらが新しいギルドカードです」

「あ、ありがとうございます!」

 ブロンズマークが付いたギルドカードを受け取るとクレイは喜んだ。

「おめでとうございます」

「やったね」

 アリアとマリイもその後ろで笑い合う。

 ブロンズランクになれば受けられるクエストも一気に多くなり、なによりギルドが存続しやすくなる。

 資金もでき、これからの仕事も確保しやすくなり、エンブレムは順風満帆だった。

 だが、それが気にくわない者もいる。

 その様子を見ていたメイジーはすぐさまブラッドファングに戻り、ライルへと報告する。

 ライルは怒りのあまり持っていた万年筆を握り潰した。

「ギアゴーレムを倒しただと……? あのクレイが?」

「みたいですねえ」

 メイジーはクスクスと笑う。

 想定外だったライルは苛立ちを隠さない。

「おのれ……! これでマリイを取り戻すことが難しくなった。役立たずの分際で俺の邪魔をしやがって!」

 ライルは殺気立ちながら机を叩いた。

 どんっという大きな音がギルドに響く。

 ライルの肩にエレノアが手を置いた。

「優秀な亜人はマリイの他にもいるわ。今はもっと上を目指すことを考えましょう。どうせ彼らはついて来られないもの」

 エレノアの進言は正しかったが、ライルはさらに苛立つ。

「分かってる!」

 ライルは勢い良く立ちあがると乱暴にドアを閉めて部屋から出た。

 残されたエレノアとメイジー。

 メイジーはくすくすと笑う。

「怒ってますね」

「ええ。でもマリイ一人失ったくらいで計画に狂いはないわ。色のない世界は確実に近づいてきてる。しばらくクレイくん達は気にしないでいいはずよ」

「でも上がって来たら面倒ですよ?」

「その時は消えてもらうわ。わたし達のためにもね」

 エレノアは不敵に笑い、メイジーは面白がった。

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