学園犯罪対策部

Joker

支配者のいる学校

 この学校には支配者がいる。


「や、やめて!」


「はぁ? お前そんな事言って良いの? コッチは男三人だぜ?」


「な、なぁもう我慢できねぇよ!」


「さっさとやっちまおうぜ!」


「いや……や、やめて……」


 薄暗い体育館の倉庫。

 そこで女子生徒を囲む三人の男子生徒。

 第三者が見れば何となくどんな状況は理解出来るだろう。

 男子生徒が女子生徒を囲っていかがわしい事をしようとしているなんてことは言わなくても理解出来る。

 女子生徒からすれば絶望的状況だ。

 助けは来ず、男3人に力でかなうはずがない。

 だから女子生徒は今から訪れる地獄をただ待つしかない。


「へへ、じゃぁ早速スカートから脱がしちまうか?」


「さっさと向いちまおうぜ」


「楽しみだねぇ、今回はどれほど楽しめるか」


 じりじりと女子生徒に近寄る男子生徒達。

 そんな男子生徒に怯える女子生徒。

 そして、そんな場面に出くわして助けに入ることが出来ずにいる臆病な僕。

 最初にも言ったが、この学校には支配者がいる。

 それがこの三人だ。

 三人の親は資産家だったり、大会社の重役だったり、政治関係者だったりと社会的に地位の高い人物だ。

 この三人に関わって良いことなんて何もない。

 それはこの学校にいる生徒全員が知っている。

 前に三人の傍若無人な態度に教師が注意をしたことがあった。

 教師は翌日には学校を解雇になっていた。

 正義感の強い生徒は三人に向かって立ち向かったこともあったが、ボコボコに痛めつけられて引きこもりになった。

 そんな過去を考えると三人に関わって何があるか分からない。

 そして、シンプルに怖い。

 彼女とはそこまで仲良くないし、こんな場面には出くわしたのは単なる偶然だ。

 僕がこのままここを去っても女子生徒も三人も気が付かない。

 でも、彼女がこのまま酷いことをするのを見過ごすのも後味が悪い。

 どうしたら……。


「へへへ、大人しくしろよぉ~」


「いや! やめて!!」


「おい暴れんなよ、足抑えろ」


「いやぁぁぁあ!!」


 僕は無力だ。

 こんな場面に出くわしても何も出来ない。

 漫画ならここで出て行って女子生徒を助けるのだろう。

 でも僕は足が動かない。

 どうしても考えてしまうんだ、ボコボコにされて追い詰められて、引きこもることになるのでは無いかと……。

 

「ごめん……」


 僕は謝罪しか出来ない。

 このまま彼女の事を見て見ぬフリをするしか出来ない。

 

「泣いたってもう無駄だぜぇ~」


「やだやだ! いや!」


「無理やりってのはやっぱり興奮すぎゃふっ!」


「あ? おまえ何寝てぶはっ!!」


「え? お前ら一体な……誰だお前!?」


 泣き叫ぶ女子生徒の声と気持ちの悪い三人の様子が変わった。

 僕は恐る恐る中の様子を確認する。

 すると、そこには学ラン姿の一人の男子生徒が立っていた。

 ブレザーが制服であるうちの学校からしたら、学ラン姿のこの男子生徒が別な学校の生徒であることは一目瞭然だった。


「はぁ……やっぱりクズはどこでもクズだな」


「な、なんだおまえ! こ、こいつらに何をしやがげふっ!!」


 学ラン姿の男子生徒は無言で三人の中の最後の一人に蹴りを入れる。


「あがっ! うっ! あっ! やめっ! あがっ!!」


 学ランの男子生徒はそのまま無表情にうずくまった男子生徒に蹴りを入れる。


「なぁ、おい、さっさと、くたばれ、よ!」


「あっ! も、もう……や、やめっ……ぐがっ!!」


「お前もやめてって言われてやめなかったろ? 同じことを俺はしてんだよ」


「はぁ……はぁ……な、なんなんだお前! テメェ俺が誰だか知ってぐはっ!!」


「しらねー」


 話している途中に今度は顔に蹴りを入れた。

 やりすぎじゃないか?

 そんな事も思ったが、相手はあの三人と思うとそんな考えは直ぐ吹き飛んだ。

 あいつらがやって来たことを考えればこんな暴力は優しい方だ。


「う……うぅ……」


 とうとう声も上げられなくなり動けなくなってしまった。

 残りの二人は気絶していて、学ランの男子生徒はそのまま最後の一人の上に座り、スマホを取り出して何かを読み始める。


「えっと……岡本伸二(おかもと しんじ)17歳。親は大企業の重役で学校には多額の寄付をしている。父親は息子の不始末は金で解決して、自分も立場を利用して会社の金を横領して良い汁をすすってるタヌキ親父か……親が親なら子も子だな」


「な、何で……お前が、俺の名前……を……」


「知ってるさぁ、君達三バカの噂は俺達組織の間でも有名だからね。だからこうして俺が派遣されてきたんだよ。君たちにきつーい罰を与える為にね」


「ば、罰だと!? ふざけるな! こんなの傷害事件だ!」


「どうぞー、したいなら後で警察に行くと良い。でも絶対にお前の望む展開にはなれねーよ」


「な、なんだと……お前一体なんなんだよ!」


「さぁな。さて、そろそろお前らの回収がくるな」


「か、回収だと!?」


「あぁ、お前らみたいなアホを更生させる施設に回収されんだよ。反省するまで帰ってこれねぇから覚悟しろよ」


「な!? そ、そんな施設に行くわけ……」


「お前の意思は関係ない。お前は女子生徒に対して性的暴行、男子生徒に対しては精神的に追い詰め、教師を退職に追いやった。十分な罪がお前にはある」


「そ、そんなの……おかしいだろ! 親父がそんなの許すはずない!」


「お前がいくら権力者の息子でも関係ない。俺らの組織はお前の親さえも抑え込めるほどに力を持ってる」


「んなわけ……」


「さぁ、お迎えだ」


 学ランの男子生徒がそう言うと体育館の倉庫に8人ほどの人がぞろぞろと入っていく。

 黒いスーツを身にまとい、三人の手足を縛って目隠しをしてそのまま何処かに連れていった。


「むー! むぅー!! むぅ!!」


「まぁ、更生して帰って来いよ」


 学ランの男子生徒は三人を見送った後、残された女子生徒の方を見た。


「今日見たことは誰にも言うな。それと明日からあいつらは学校に来ないから、学校には安心してくるように、以上」


 学ランの男子生徒はそれだけ言うと体育倉庫を後にしていった。


「おい、隠れてる奴。お前もだ」


「ひっ! は、はい!」


 バレていた!

 ま、まさか僕もボコボコに?


「よし、ずっとそこにいたなら助けくらい呼んでやれよヘタレ」


「……そ、それは……」


「じゃぁな」


 そう言って学ラン姿の男子生徒はその場をさっていった。

 あの生徒は何者だったんだろう?

 そして、彼の言った組織ってなんなんだ?

 学校が平和になった代わりに僕の中には謎が残ってしまった。


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学園犯罪対策部 Joker @gnt0014

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