白羽舞は尾けてみる
『唯、今日はどこに出かけてるの?』
考える前に、身体が先に動いていた。
送ったラインを眺める私の呼吸は少しだけ荒い。
返事が待てなくて、私は目を逸らして服を着替える。
私はどうしてか、昨日から変だ。ずっと変だ。
私の中に、何か不純物が取り巻いている様な気がしてならない。
その不純物が、私の抱く感情の答えなんだとしても、受け入れられなかった。
だって。なんでか、こんなにも心臓は苦しいのだから。
受け入れたら、更におかしくなってしまいそうだった。
でも──いや、だから、唯の返事は気になってしまって。
着替えを終えてスマホに戻れば、それは既に届いていた。
目を逸らしたい思いではあったけど、目をやる。
『今日は友達と駅近くのモールに行ってるよー』
友達。……友達?
恵が、友達?
そう意識すると、心臓の音が聞こえる。
何も分からない。分からないのに。
『分かった』
私はそれだけを送り、半ば飛び出す様な形で家を出た。
持ち物はスマホのみ。けど、なんか重く感じる。
多分、寝起きだからだろうか。
あ。そういえば、家の鍵、ちゃんとかけたかな。
パッと浮かんだそんな疑問は、割とどうでもよかった。
※
『今はどこにいるの? モールのどこに?』
送った文章を見返して、あぁ、なんかストーカーみたいだなって思った。
モールの一階でウロウロと回っているのも、どこか不審者じみているし。
なんでこんなことしてるのだろうか、と自問してみるけど。
返ってきてくれる答えは、いつもおんなじで。
まぁきっと、アレだな、私。
やっぱりシスコンになってしまった。と解釈すべきなんだろう。
少し癪な感じがするけど、それ以外に考えられない。
恵と行動していることが、心配で。だから。私は、今、こうして変な行動をしている。
誰だって妹が変なヤツと行動するのは、心配になるものだろう。(恵、ごめん)
そう考えると。ほんの少しだけ楽になれた。
『今? 三階のフードコートにいるよ! お昼ご飯食べてる!』
スマホに目を落とすと、返事はいつの間にか来ていた。
私の足は無意識的にそこを目指す。足早に、地面を蹴って、エスカレーターを上って。
二階から三階に移る時に、少しだけ慎重に。羽織ったコートに身を隠す様に進む。
フードコートの少し離れた場所から、視界の先に移る人物を一人一人吟味しながら。
足を一歩一歩と進め、周りから当てられる奇異な目を弾いて。そして、唯を見つけた。
あぁそれと、私の友人である──恵を。この場合は、唯の友人と言うべきなのか。
だがまぁ、やはり見間違いでは無かった。
唯がお昼に一緒に家を出たのは、恵であり。
つまりは、唯は恵のことを友達と言い表したという訳で。
本当に友達なのか? と疑いたくなるが、どうやら本当らしい。
笑顔を向け合って、楽しそうに談笑しながら。昼食のパスタを啜っていた。
唯は。私以外にも、あんな風に笑うらしい。まぁ、いいんだけど。ほんとに。
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