11.めんどくさいので都市の水路を丸ごとトイレに!


 

「ふふ、タイトルからして不穏だわ」



「わかってるなら何とかしてくださいよっ!!」



 突っ込みを超えて悲鳴のような声を上げるアールは無視よ。



 さて、冗談はさておいてずっと考えていたのも事実。

 上下水道の整備と簡単に口にしても、それを実行するにはとてもじゃないが物資に人的資材。なにより時間が足りないと。



 だからこそ、上水道と下水道を完全に分けて管理しようと考えた。



 そんな中、私が目に付けてのはこれ!!



「ぱんぱかぱ~ん。魔法ありの異世界名物、まーせ~き~!」



 青いたぬきが降りてきたような気がする。(僕はたぬきじゃない!!)



 この世界の魔石は魔獣を殺して手に入るなどといったものではなく、特殊な水晶型鉱石に魔法を封じ込めて魔力を補充すれば何度でも使えるというもの。作るのに錬金術師と魔法使いの二人が必要なうえに元となる水晶型鉱石もちょっと高め。しかし、考えている内容のすべてを満たそうとするのであればもっとも確実かつ安価。時間短縮にもなるので必須だ。



 やることも単純明快。

 生活用水用の水路と衛生問題の原因である糞尿を流す用の側溝の二つを完全に分けて作るということ。



 生活用水用の水路を外延部と都市の少し大きめな通りのみに整備し、糞尿を投棄するためのU字型側溝をすべての通りに作る。水路は川から水道橋で引っ張ってきた水を通し、側溝には水を張らない。川から引っ張ってこれる水の量にだって限界はあるし、欲張りすぎれば全体に水がいきわたらないどころか川が枯れてしまう。だからこそ、各所に水を作り出す魔石を設置するのだ。



 つまり、都市サイズの『水洗』である。ガチャ、ジャー。



 一応言っておくと、使うのは魔石なのでそんな音はしない。



 流すのは毎日朝晩の二回。上層部から順番に、側溝の各地に設置されている魔石を起動していって、最終的には下層よりもさらに下の土地に作った貯水、浄水施設で処理してから川に戻すというもの。普段は投入口となる場所以外は蓋をしておいて、蓋をどけての全体の掃除は一週間から一月の間に人を雇い入れて定期的にやるつもり。貧民対策の一環として職業斡旋にもなるしね。



 肝心の魔石の魔力は、住民から分けてもらうつもりだ。

 この世界では生きているすべての生物が魔力を持っている。ただ、それを使うための術を学べないし、学ぶ余裕のない住民にとっては宝の持ち腐れ。魔力をもらうときに少しの疲労感を感じることはあるだろうが、そのおかげで清潔に過ごせるのなら安いものだろう。実質、住民側の持ち出しはないに等しいのだから。



「正直、関係のないごみを捨てられたりする可能性が高いから怖い部分もあるんだけど、通りに投げ捨ててるよりはましでしょ」



 臭い物に蓋をする。ではないが、住民たちの意識改善。常識改善はなかなかに難しい。

 どんだけ口酸っぱく言おうが、法律で罰せられるようにしたって守らない人間は守らない。10に対して3~4は守らないぐらいの感覚で為政者はいるべきだ。



「そういう守らない人間ほどクレーマーになるんだけどねぇ」



 おっと、前世での仕事で経験したアレコレの黒い愚痴が出ている。



 しかし、ようやくここまで考えがまとまった。

 下層に作る貯水・浄水施設。ここが一番ガブリエラとしては重要なことなのだが、そこにこぎつけるまでの道筋を立てられないので話にならない。



 前世の知識、今世の知識とあるもの。

 都市計画の話をしているとどうしても軟水から離れてしまった。



「といってももう一つのメインイベント。公衆浴場を作るっていう大仕事が残ってるけどね。まだまだやるぞー!!」



 衛生問題の解決。

 貴族庶民問わず認識を改めるためにもやらなければならないことは多い。  


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る