9.まずはレンガ作りです



 都市づくりなんて一口に言って必要になるものは多い。

 とりあえず人材集めだけど、そっちはだん、だん……旦那さまっ!に任せてる。あーもう、今も言い慣れないわね。私に求められてるのは、こうしたいという案。そしてそれを実行できるかどうか、実行するに必要な資材と人はどれくらいなのかが旦那さま任せなのだ。



 実際、この世界に来てから勉強はたくさんしたけれど、体を鍛えてはいないし貴族としての幅広い人脈作りも……失敗した感じは否めないのよね!商業利益的な人脈はばっちりだからいいのよ!それも両親や侯爵家のコネをバンバン使ってるけどさっ!



「いいのよ、私は権力チートの女なんだから」



「奥様!!いじけてる暇があったら手を動かしてください!!」



 アールに怒られた。

 最近はいつものことになったけど本当に強くなったなぁ。昔は私の言動に一喜一憂してたのに。可愛かったなぁ、あの頃のアールは……。



「お・く・さ・ま・?」



「ひゃい!!」



 猛烈に手を動かさせていただきます!!あ、声に出てない。



 とりあえず、レンガをたくさん、それはもうたくさん焼こうと思っている。



 欧州における都市づくり。それはレンガを作っているのと変わらないとすら思っているくらいだ。

 同時に、レンガを作るときに混ぜるものを一つ増やそうと思った。



 貝灰を。



 某国民的リフォーム番組でも有名な、漆喰やレンガなどに混ぜているアレだ。

 都市を形作っているレンガそのものに簡易消臭効果を持たせれば多少はましになる、かもね?程度の改善だ。消臭に当たって必要なのは根本的な衛生観念改善と、それを市民が苦痛に感じずにできる都市づくりだからね。



 さて、軟水と硬水の違いにこだわる私がレンガつくりで何も考えてないわけがないYONE!!



 まぁ、レンガ作りの材料を混ぜる時に水を使うのは子供でも知っている話。

 では硬水と軟水。どちらがレンガ作りとしてはいいのか。これは結構知らないと思う。ぶっちゃけ、大学でもいって建築関係の専攻でも取らないと知らないんじゃね?ってレベルのコアな話。



 結論だけ言うと、軟水で混ぜているよりも硬水で混ぜたものは2~3%ほど耐久値が下がる。

 誤差の範囲といえばそうだし、中長期的に使うのであれば耐用年数に影響が出るともいえる。なんとも難しい範囲だ。


 

 ただ、今回は新しい試みとして貝灰を混ぜる。

 水の体積値に対して混ぜる、溶け込ませる量の最大値は軟水のほうが上であり、大量に使うのが前提であれば従来の材料の少量は減るはず。どうせ混ぜる量の調整に関しては手さぐりになるなら軟水、私が自作した調整水を使わせてみた。



 職人たちにも最初はいろいろと言われたけれど、混ぜる手間と混ぜる各材料の最終的数字を確認したことで今は受け入れてくれた。消臭効果に関しては目に見えてわかるものではないので、農村の肥料用肥溜めに既存のレンガと貝灰入りレンガを使った簡易倉庫を用意して検証中。倉庫の外周の匂いの強さに違いが出てくれれば納得するのではないだろうか。



「あぁ、耐火レンガに関しては硬水のほうがいいかも?」



 マグネシウムを含んでるほうが耐火レンガとしては優秀になる。化学物質などで適切にマグネシウムを用意して投入できない時代だから硬水からも混入できるからね。



 余談。

 レンガでありコンクリートで伝説的な存在がある。

 ローマ時代に作られたコンクリート。通称ロマコンなどと呼ばれているそれだが、現代のコンクリートの耐久年数が60-80年程度に対して、ロマコンは残存する遺跡で未だに現役。作り方などもほぼ不明の最強のコンクリートレンガだ。ローマこわーい。


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