第34話 十得ナイフ? 3得くらいで丁度いい
「で?」
クイが生首を魔剣ダレヤネンの切っ先でズブッと刺して持ち上げる。
「俺、アンデットに刺さっても意味ねぇんだわ…こいつ等、魂無いんだもんスカスカなんだもん」
「え~っ、そなの? おなか減っちゃうね~」
「おなかか~…俺の腹ってどの辺の事言うんだろう?」
「この辺りじゃない?」
刃の真ん中を指さすココ。
「ココ、オマエ、そこが腹なら俺の顔どこなんだよ…」
「さぁ?でも顔ついてるじゃん」
「オマエ、ソレ、オバはんの顔だろ‼ 顔って言うか…首だしなアッハッハッ」
「アハハハ、そだね、アハハハ」
どこまでも楽し気なココである。
この生き様こそ『
その愛刀『
「笑い…ごと…じゃないんだよ…バカ娘…」
「いいから、話しなさいよ」
クイが凄む。
「その…前に…普通に…喋れ…るくらいに…月にかざして…くれ…ください…」
「騙されてはなりませんぞクイ殿‼ ヴァンパイアですぞ‼」
「アンタもでしょ‼ トマ‼」
「そう、だからです、私、今絶好調‼なのですぞ」
「僕もです、なんか下半身が見つけて頂くまでもなく、生えてきそうなくらいムズムズするんです下腹部が」
猫のライカンの上半身も絶好調らしい。
「そりゃ…よござんした…大人しく下半身探しに行ってちょうだい」
「いいんですか? ヒィウィゴー‼」
バタバタと泳ぐようにライカンは城の奥へ消えていった。
「アタシも行こうかな?」
「では護衛致しましょうココ殿、今の私は頼れますぞ~」
「いいから…ここに居て頂戴」
クイの目が怖かったので従うことにしました。
「いいわ…喋る程度にならね」
魔剣ダレヤネンに刺したまま、溶けた生首を月光へ晒すクイ。
「ココ…抜けないように持ってなさい」
「うん」
魔剣ダレヤネンをココに返すクイ。
数十秒もすると溶けた生首がオバはんに戻る。
「ふぅ~…生き返った気分だね~」
「なんかしたらジュッといくわよ」
クイが石をちらつかせる。
「いいものをくれてやろうってのに、まったく…」
「殺せなくても封じるくらいならできるのよ立場を弁えなさいヴァンパイア」
「はいはい…」
………
オバはんの生首に案内されて城の頭頂部へ連れて斬られたクイ達。
「この鞘をやる…その代わりに、2度とこの城に来ないでおくれ」
「クイ殿、それは、このヴァンパイアを自由にするということですぞ」
「いいじゃない…べつに…金目のものは頂くし、その鞘に、それだけの価値があれば…ヴァンパイアなんぞ、いくら増えたって」
「無駄に増えはしないよ…人間あっての吸血鬼なんだから」
「で? その鞘が、どれほどのものなのよ?」
「この鞘は…古来より魔剣を封じてきた鞘さ、抜き身の魔剣は持ち主にすら仇になるからね」
「そうなの? ダレヤネン?」
「いや、俺は大丈夫、普段は喋るだけだから無害、無害」
「どうだか…ソウルイーターなんて使い熟せる剣士がいるのかね~?」
「私には無理でした」
トマ元気よく白旗。
「ソウルイーターは持ち主が強力なアンデットなら使い放題の魔剣だが人間じゃ数分で身体が朽ちる」
「その鞘は?」
「その魔剣を抑え込める…その石を使えば、さらに便利な剣となろうな」
オバはんの言うことにゃ…鞘に石をはめ込んで、納刀状態では『
「そんな簡単に? なぁ? ちょっとご都合よろしくないですか~?」
魔剣ダレヤネンの言うことなど誰も聞いてなかった。
「じゃあ早速…」
クイが鞘をグイッ握って石をグリグリと力任せに押し込む。
錆びた鞘が、凄い嫌がっているように抵抗する。
「クイ、なんか蛇みたいだね」
「思った以上に暴れるわ…コレ」
「暴れることは想定してたんですかクイ殿」
皆で抑えつけて格闘すること13分…石を、はめ込むことに成功したクイ。
「さて…まずは鞘の力を見てみようかしらね…コレで嘘なら殺すわよ」
クイが鞘をオバはんに向けた。
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