第二章 王都制圧編 序章

第11話 山を下ると…そこは戦場だった

 乱世である。

 あちらこちらで戦闘が繰り広げられる『ス・パゲテイ大陸』山を下れば戦場だった…よくある話である。

 リザードマン、オーク、ゴブリン、人間…入り乱れての乱世らしい乱戦具合である。

 頭蓋骨を砕く斧の旗『ペ・ペロンチノ王国』改め『ペ・ペロンチノ帝国』と『大統領エラバレタ・ミンシュ』が統治する『カ・ルボナラ合衆国』と交戦中であった。

「あらあら…旗色悪いわね~」

 自称大魔導士『クイ・コムト・グモーデル』16歳、見た目も性格もキツ目の美少女が戦況を分析する。

「ペの国か…あの旗を見るだけでムカッ腹が立つ‼」

 魔剣『ソウル・イーター』に魂を移された『ダレヤネン・ソーレ』かつて『ぺの国』騎士団長を務めた無敗の騎士が『ココ・ドコデスノン』14歳、ひょろ長い貧乳美少女の背中でうるさく喚く。

「どうする? 殺っとく?」

 ココが背中の魔剣を抜き放つ。

 オォォオォーン…

 禍々しいオーラが放たれ、異形の剣が怪しく輝く。

「行くよー‼ ダレヤネン‼」

「いよっしゃー‼」

 とんでもねぇ速度で戦線に駆け寄るココ&ダレヤネン。

「あぁ…行ってしまった…」

 トマが渋々後を付いて行く。

 はっきり言って参戦にメリットはない‼

「バカ…あんな先兵の小競り合いに参加しても得るものなんてないわよ」

 クイの言う通り、亜人種がメインの戦場で金目のものなどあるわけないのだ。

 大きな、ため息を吐きながら詠唱に入るクイ。

「イ・ツクルカ・ワカ・ラ・ナイ…ソンナ・ヒノ・ターメニー・ヨウ・イ・シタ…ショー・ツーノ・デ・バンガ…イーマー‼」

 クイの両手から漆黒の炎が放たれ、亜人を一気に焼き尽くす。

「よし‼ 後は好きにやれ‼」


 トマが2人目を倒した頃、黒焦げの戦場で立っていたのは魔剣を肩に担いだココだけであった。

「死ぬかと思ったわよ‼」

 ココがクイに向かって怒鳴る。

「魔法で敵味方を区別することはできないのよ‼ いいよく聞きなさいココ、魔法で乱戦の場合は魔法で荒く片付けてから参戦なさい‼」

「…なぜ?」

「無駄に長引くからよ‼」

「クイ殿の言う事も最もですな、その方が生き延びやすい」

「でしょ~」

「それじゃ…なんかつまらない…」

「最もだ‼ 俺は暴れたい‼」

 ココ&ダレヤネンは戦場で血が騒ぐタイプであるらしい。

「さすが、分身同士…似ているのね、仕方ないけど…馬鹿が分裂しただけだから」

 並の騎士トマ、強力な前衛と凶悪な後衛に挟まれ活躍の場は少ない。

(なんとか自分のポジションを確立しなければ…)

 違う悩みを抱えていた。

「今後の事も考えて、役割を決めておくというのはどうです?」

 常識的な並の騎士トマ、今、自分にできることは、まとめ役だと認識した。

「役割?」

 ココが面相臭そうな顔でトマを見る。

「バカに作戦とか無理だと思いますわ」

 クイが見下したようにココを見る。

「バカってのは俺の事か? 返答次第では生気を吸うぜ‼」

 鞘から抜かなければ比較的無害な魔剣ダレヤネンがクイに凄む。

「それでは、これから先少数で大軍を相手にはできませんぞ‼」

「オメェが戦力外なんだろうが‼」

 鞘に収まっていればうるさいだけの喋る魔剣が言葉のナイフでトマの胸をズブッと突き刺す。

 先天的な資質に優れたJC。

 元無敗の騎士団長、現魔剣に宿る猛者。

 敵味方無視で暗黒魔法をぶっ放つJK。

「戦力外…」

 凡人トマ、次回目覚めの時…。

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