第10話 強奪権授与?

完「暗黒魔法…恐るべし…」

 身を持って、その威力を知ったトマが目を覚ました。

 第一声は頭部へダークマターを2発食らった感想であった。

「あっ、ケーキだ」

「やめとけ‼ 拾い食い娘‼また寝る気か‼」

 薬が切れて同じく目覚めたココ、テーブルのケーキに手を伸ばそうとしてダレヤネンに止められた。

「ケヒヒ、やっと揃ったのぉ…もはや深夜じゃ…」

「どうりでお腹が空いたと思ったら、もう寝る時間かぁ~夕飯食べてないよアタシ」

 ココの腹が空腹を自己主張するように鳴る。

「スゲェなオマエ、クスリ盛られた後に飯を所望するとは…尊敬するぜ」

「ケヒヒ、ダレヤネン、オマエの分身じゃぞケヒヒヒ」

「誰が分身? アタシが?」

「分身…俺の? 俺は拾い食いなんてしねぇ‼」

「うっさいわよ‼ いつまでもいつまでも、ネチネチとー‼ そんな暗い性格だから鞘に引き篭もることになるのよ‼」

「好きで収まっているわけじゃねェ‼ だが…意外と居心地はわるくねぇ」

「住めば都というやつだなダレヤネン、分相応というやつだ」

「言っただろトマ、好きで収まっているわけじゃねぇ‼」

「居心地はいいんだろ?」

「悪くはねぇ…収まりがいいというか、不思議と落ち着く」

「なんの話だったっけ?」

 勝手にキッチンでトカゲ肉でサンドイッチを作り食べながら戻ってきたココ。

「アンタ、人の家で勝手に料理しないで頂戴‼」

 クイがココに怒鳴る。

「何よ‼ アタシのトカゲ肉よ‼」

「肉の話じゃないわよ‼ ……その薬草……どこにあった?」

「どこって…そこの箱…ZZZZ…」

 突然、睡魔に襲われ倒れるココ。

「どんだけ学習しねぇんだ…俺の分身とやらは…」

「ケヒヒヒ…まぁ…娘は抜きで話を進めるかね…」

「バカなんですの? バカなんですわ‼ リザードマン以下の知能なんて…呆れるを超えて不憫‼」

 クイが目頭を押さえた。

「ケヒヒヒ、だからクイを同行させるのじゃダレヤネン」

「……おう‼ 心強いぜ‼ 不本意だが」


 経緯はともかく、自称大魔導士『クイ・コムト・グモーデル』パーティ入りである。


 翌朝、ココの目覚めを待って山を抜けた御一行。

 歩きながらクイから話を聞くには…。

 魔術に長けた女性を排出する『グモーデル』家には伝承が伝わっていたらしい。

『ソウル・イーターに魂宿り、器となりし乙女に助力せよ、さすれば巨万の富と名声が与えられん』

「伝承っていうか…占いじゃない」

「占いに長けた先祖がいたのよ‼」

「するとアレか…クイ殿は金のために同行したということか?」

「そうよ‼ お金が欲しいから‼」

「伝説の勇者的なノリじゃねぇんだな?」

「そうよ‼ こんな拾い食い娘が伝説とか在り得ない‼」

「自分でも驚いたわ、まさか三度も引っかかるとは…サンドイッチだけに?」

「引っ掛けたのは1度だけだけどね…ビックリした、眠眠草のサンドイッチとか知能の低いモンスターしか引っかからないから、人間が自ら食べたの初めて見たわ」

「うん、もうむやみに口にするの控える…なるべく」

「なるべくなんだな…とりあえず拾い食いはやめとけよな」

 背中の魔剣ダレヤネンに心配される主ココ。

「落ちてるケーキは、もう食べない‼」

「ケーキに限らずですわ…そして人の家のキッチンで勝手に調理しないでいただきたいですわ」

「いや、だがココ殿、伝説の勇者は他人の家に勝手に上がり込んでタンスを開けて必要なものを強奪してもいい権利を与えられるらしいですぞ」

「そうなの?」


 呑気な御一行が山を抜けた先は…戦場でした。


 第一章 完

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