第12話 とにかく授業がヘビーすぎる件。見逃してくれい!

 なんか会話をしなさいという訳ですよ。練習だからね。


 それはわかる。


 でもねえ。題材がねえ。

 そこを聞いてくるかって、ツボなのよねえ。


 先生、日本にちょっと行ったこともあって、個人的な興味も伴ってるらしい。


 Q: イタリア料理のレシピを知っているか?

 A: 知らない。パスタをゆでて瓶入りのソースを入れるくらい。


(「絡める」とか、言えないから)


 Q: 日本料理なら、レシピを知っているか?

 A: あまり知らない。

 Q: 知っているものは何か?

 A: みそ汁とか。


 Q: みそはどうやって作るのか?

 A: ――説明が難しいです。


 Q: ゆっくり考えて、いいよ。


(てか、逃がしてくれないのかよ!)


 A: えー、米とか、麦とかをボイルして、塩と「バイオ的なもの」を入れます。


(「麹」とか、言えるわけねえだろ!)


 Q: みそって、見た目はどんなもの?


(あ、知らないのか)


 A: ペースト的な。ピーナッツ・バターのような――。


 Q: ピーナッツ・バター? あれは、茶色いよ?

 A: みそは茶色です。

 Q: え? 白じゃないの?


(白みそってあるけど、薄茶色だし――)


 A: いろいろだけど、ふつう茶色です。黒っぽいものもあります。


(どうも、先生、みそというものを、理解していないらしい)

(豆腐と混同している?)


(というか、「みその作り方」とか、日本語でも説明できるか?)

(ちゃんと説明できる日本人は、何パーセントいる?)


(それを俺に聞く? 知ってそうに見える?)

(ムチャ言うなあ)


「麹」の段階で、心が折れた。

 1分間くらい、息止まるかと思った。「バイオ的なもの」は、我ながら良くひねり出したと思う。


 初心者コースなんだから、もうちょっと易しいテーマにしてもらえんやろか?

 今日もまた、めちゃくちゃしんどかった。

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