男子禁制のお嬢様女子高に潜入しよっ!!

 ……夢を見ているのだろうか?


「ふああっ!こんなのらめぇ、あっ、あたまがじんじんしちゃうのぉ、あふゅゆう、あ、あふれちゃうっ、 は、はじめてのぉぉ、おつかい……!!」


 言葉を発した物体は、先程まで親友と呼んでいた人の筈、だった……。

 乾いた笑いが張り付いてしまったようだ、精神の均衡を保つギリギリの行動。


「神様、何故、私達を試そうとなさるのでしょうか!? 本当にあなたがいらっしゃるのなら今この場で奇跡を起こしてください、どうかわたしを、私を救って……」


 くちゅくちゅと溢れ出す樹液に群がる蟲たち、苦悶の表情を浮かべて神託を待つ、

 ADAMの末裔に刻まれる五つの傷痕、見えざる杭にくちなわが淫らに絡みつく。


 楽園を追放された少女達の晩餐が始まった……。



 *******



「……康一こういち あっ、間違えた、康恵やすえちゃんで良かった?」


 聖胸せいきょう女子高等学校は交通の便が良いことでも知られている。

 最寄り駅から徒歩数分もかからない、駅前から続くアーケード街は

 通学時間ともなると女子生徒一色になり街の風物詩ともよばれ、

 いつしか指定制服の色に例えて藍色あいいろ天使の行進とよばれるようになった。

 聖胸女子は、中、高一貫の形態で、生徒数も増加の一途なのは、

 昨今、定員割れの高等学校が多いなかで特出すべき点だ。


 ここまでの話は全部、学校案内のコラムに書いてあったことの受け売りなんだよ。  康一みたいに読解能力がない人もいるから僕が代わりに説明しているんだ……。


「ああ、仕方がないよな、正面突破で男を入学させてくれないだろ。でも合法ロリばあちゃんも人使い荒いよな……。亀の湯に住み込みで働けると張り切っていた矢先なのに!! にゃむ子さんから番台や、三助のこと、手取り足取り、でレクチャー受けたかったぜ、ちくしょう……」


「まあ、ゆっくりお風呂のことは覚えていこうよ、亀の湯は逃げないからさ。それより急務なのは康一、もとい康恵ちゃんの身体のことだよ。だからお祖母ちゃんも今回女子校に潜入調査させたんだよ」


 そうなんだ、康一のことが最優先事項だ。呪いの余命宣告は一年だから、

 それまでに呪いを解毒出来るもっと効率の良い方法を見つけ出すんだ。

 今回の聖胸女子への不可解な転校もお祖母ちゃんの指令なんだ。

 今までお祖母ちゃんの言ったことで間違いはないんだ、今は全面的に信用しよう。


「それより正美、本当に大丈夫かな、周りにこれだけ女子高生がいると、俺が男だってバレやしないかってヒヤヒヤするんだよ!!」


 珍しく康一が弱気な声を漏らす。あ、面倒くさいので康一は女装中だから、

 呼び方を康江ちゃんに統一するね。隣にはお下げのメガネっ娘が佇んでいた。


「康江ちゃん、大丈夫、大丈夫、どこからどうみてもメガネっ娘の女子高生だよ。う~んそうだな、委員長キャラ? お下げ髪も似合うよ♡」


「そ、そう、いいんちょって言えばこうかな? こらっ、正美!! また遅刻よ、何度私が言ったら分かるの!! そ、そうね、お隣の私が毎朝、起こしに行ってあげてももいいけど……。と、特別よ、正美だけなんだからね、ありがたく思いなさい!!」


 ツンデレが入ってるのと全体的に八十年代のアニメ風だけどおおむね合っているかな。でも胸揺れはやめてね。ぼよんぼよん出来て嬉しいのは分かるけどおっぱいはおもちゃじゃないんだから……。


「正美、おっぱいって本当にいいもんですね。嬉しくて涙が止まりませんよ……。自分で自分のおっぱいを揉めるんだぜ。女の子ってズルいよ、こんないいモン、ぶら下げてさ、男なんて自分のおちん◯んを揉んでも面白くないからな……」


 その発想、さすがおっぱい星人、自分の胸を揉みたいなんて考えたことないよ。

 本当におっぱいが好きなんだな、僕は男装しなければいけないので自分の胸にマッサージは欠かせなかったが自分のおっぱいで興奮はしないな。そりゃあ、好きな人に弄られたらどうなるか分からないけど……。


 そういえば、聖胸女子卒業生ののにゃむ子さんが教えてくれたのは、

 女子校は友達同士でおっぱいを触るのが当たり前のスキンシップで、

 いつでもタッチOKなんだそうだ。特に大きい女子は揉まれる運命で、

 にゃむ子さんも挨拶替わりにGカップおっぱいを揉みしだかれていたそうだ。


(いや~~ん、おっぱいにタッチ!! からの、まいっちんぐだっちゅーの!!)と

 にゃむ子さんは意味不明な単語を交えながら僕たちに教えてくれた。


「正美にそう言って貰えるなら安心だぜ。じゃあ声もメガネっ娘になりきるかな。

 あっ、あー、てすてす、チェックワンツー、へーへー へーーッ!! よし!! イケるぞ!!」


 メガネっ娘委員長、三枝康恵ちゃんの爆誕です。声まで可憐な女の子に!!

 何ということでしょう!? 不思議……。


「正美ちゃん、私、三枝康恵さえぐさやすえ、ヤスミンって呼んでくれるかな。そうそう正美ちゃんのことは何て呼んだらいいのかな……」


 恐山のイタコ萌えバージョン!? みたいに憑依されているぅ!!


「や、ヤスミン……。 その女の子声をどうやって出してるの!? なにげに凄いんだけど……」


「あっ、この声ね、ミックスボイスなんだよ、ほら私、元から喉仏が目立たなくて、女声が出しやすいんだよ。男の娘化とともに、にゃむ子先生からみっちり叩き込まれたんだよ!!」


 そうだった、にゃむ子さんは短時間で、早変わりの舞台監督顔負けに康一を完璧な男の娘に変身させたんだ……。

 その顛末は傍から見て面白く、かつ恐ろしすぎだけど機会があればsideBで話すね。


「よし!! これでどこから見ても女子高生だっ。何でも出来る証拠だねっ!!」


 女子高生になれた喜びかその場で康恵ちゃんがぴょんぴょん飛び跳ねた。

 周りの女学生が一斉に注目し通学の列が乱れる。


「や、康恵ちゃん!! こ、コッドピースがスカートからっ」


 思わず泡を吹いて倒れそうになった……。


 ひ、ひゃああっ、最凶又袋!!

 メガネっ娘美少女、ヤスミンのスカートからぬっと顔を出してるよお!?

 朝のさわやかな陽射しに照らされて宝刀村雨丸譲りの鈍色にびいろがぬらりと輝いた。

 


「なにっ……。 正美ちゃん!?」


「康恵ちゃん、早くその場にしゃがんで!!」


 思わず自分のスカートで角隠しみたいにコッドピースごと覆い隠した。

 どうやら康恵ちゃんは女子のスカートをはき慣れていないようで、

 横のジッパーが開けっぱなしで前みごろになっていたんだ……。

 だからコッドピース様がにょっきり、おこんにちは!! したんだな。


 僕たちを中心に人垣が円形に出来る。ざわざわした女子高生の群衆。


「何、あの子たち、公衆の面前で恥ずかしい……」


「あの校章の色は二年女子ね……」


「まあ、はしたないわ、聖胸女子の恥だわ!!」


 即座に嘲笑の渦に包み込まれる……。 ど、どうしよう!?

 何とか股間のコッドピースは隠せたけど初日から大ハプニングぅ。

 潜入する前にどうにかなりそうだよぉ……。


「皆さん、ご静粛せいしゅくに!! 道を空けてくださらない……」


 透明な空を感じさせる澄んだ女性の声。

 あれだけ騒がしかった藍色天使達が一斉に黙り込んだ……。


 一体、声の主は誰なの!?

 声の方向を見やると制服姿の女子高生が立っていた。

 僕は彼女を一目見て思わず絶句するしかなかった。



 次回に続く!!








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