たわわなおっぱいは好きですか?

「ねえ、まさみん、さっきから何で黙ってんのぉ。にゃむ子つまんな~い……」


 康一こういちをシェアハウスの空き部屋まで運び、そのままベットに寝かせると、さっそくにゃむ子さんが不満げな言葉を口にした。


「お岩さんのメモを見せた途端、なんだか顔色が変わったみたい」


 普段はおちゃらけているようでも、こういうところは結構鋭い……。


 にゃむ子さんはその柔らかな風貌から天然キャラに思われるが、他人への気配りや空気を読むことが出来る人だ……。

 だから仕事には厳しいお祖母ちゃんからも全幅の信頼を受けている。


「そ、そんなことないよ、全然普通なんだけど。にゃむ子さんこそ僕に気を使いすぎじゃないの!?」


「そっか!! なら安心だねっ。じゃあお腹もペコペコだから、にゃむ子、ちゃっちゃと毒抜きを済ませちゃうよ」


 にゃむ子さんは、そのまま康一の上にためらうことなく馬乗りになった。


「コーちゃん、起きなさいっ!! ママのおっぱいの時間でちゅよ♡」


「うひゃあっ!!」


 前言撤回する。いったい何を考えているんだ、この人は……。


「ちょ、ちょっと待って!? にゃむ子さん。ママのおっぱいをあげるって、いきなり過ぎ!! それに恥ずかしくないのかな……」


「え~~、だって減るモンじゃないし。それに抜かないとコーちゃん死んじゃうんじゃないのぉ」


「一本って、知らない人が聞いたら誤解を招くから駄目!! 毒だよ、呪いの毒抜きだよ!! それにコーちゃんって康一のこと!?」


「そうよ、コーちゃん♡ あっ、まさみんもしかして嫉妬しちゃってる?」


「そんなんじゃないよ!! 僕はただ、自分のおっぱいを見せるなら好きな人だけって思うから……」


 ……やだ、僕は何を言っているんだ。頬が熱くなるのが自分でも分かる。


「ふ~ん、まさみんは本当にコーちゃんのことが大好きなんだ……」


 にゃむ子さんが、こちらの顔を覗き込むように聞いてきた。


「いつから好きになったの? にゃむ子、興味津々。可愛い恋バナが大好物なんだぁ、まさみん、教えて、教えて!!」


 にゃむ子さんの瞳が期待でキラキラする、まるでご褒美を待つ猫みたいだ。


「おせーてくれにゃいと、コーちゃんにおっぱいを授乳じゅにゅうしちゃうよん♡」


「もうっ、にゃむ子さんの意地悪!! それに母乳はまだ出ないでしょ」


「わっかんないよ~ 殿方にいっぱい揉まれれば想像妊娠しちゃって、母乳がぴゅっぴゅとか出たりとか、にゃはは、なんちゃって♡」


 にゃむ子さんが、たわわなGカップおっぱいを持ち上げて上下にたゆんたゆんさせる。服の上からでも圧倒的な存在感だ。

 でも乳首の付近を自分で揉み揉みしてミルクを出すジェスチャーはやめてぇ!!


 もう何でも話すから勘弁して……。


「康一と僕が幼馴染みっていうのは、にゃむ子さんも知ってるよね。だけど康一と一緒にいられたのは小学校高学年までなんだ……。冒険家のお父さんと世界中を流浪して苦労したみたい。高校入学前、帰国した康一は空港にひとりぼっちだった。お母さんは康一が幼い頃に他界しているから誰も頼る所もなかったんだ……」


 康一と再会出来た時は本当に嬉しかった。また同じ高校に通えることにも。

 でも康一は昔と全然変わってしまった。みんなのリーダーで正義感の強いガキ大将、僕を守ってくれたころの康一じゃなかった。


「今は良い意味で優等生、学校でも人気者で隠れファンクラブまである。だけど違うんだ。康一は人知れず深い痛みを抱えている。昔から康一だけを見てきた僕には分かるんだ……」


「まさみん……」


「そんな康一が昔みたいに生き生きとした表情に戻る瞬間があった。それはおっぱいなんだ!! おっぱいの話になるとあの頃の康一に戻るんだ。大好きな康一に笑顔を取り戻して欲しいから、僕は……」


 自分でもうまく説明出来ない。この気持ちは誰にも言わないつもりだった……。


「まさみん、一緒に頑張ろう。にゃむ子も恋を応援するよっ!!」


 明るい声を掛けられて一気に胸のつかえが取れた気がした。


「にゃむ子さん、ありがとう!!」


「だけどコーちゃんはこのままにしておけないよね?」


 あっ、大事なことを忘れていた。お祖母ちゃんのメモによると最低一日に一回はおっぱいを見ないと呪いの毒が全身にまわって、康一には内緒だけど、あの棒、そう、お、おちん、駄目だ、全部言えない!!


 が腐り落ちて使い物にならなくなっちゃうんだ……。


「にゃむ子からお岩さんにはうまく説明しとくから今回は、まさみんが解毒してね」


「う、うん……」


「大丈夫!! 大丈夫!! ファイト一発!! ばっちり一本いっちゃって♡」


「にゃむ子さん!! それが抜けちゃってるからぁ……」


「にゃははは!! 失敬、失敬♡」


 笑って手を振りながらにゃむ子さんは部屋を後にする。



 *******



 部屋には僕と康一だけになる。彼の意識はまだ戻らないみたいだ……。

 よし、起きる前に済ませちゃえ!! なに、何、メモによると呪いの対象者に意識がない場合は患部への接触で対応出来るみたいだ。


 んっ、患部への接触って、患部はアレ? だよね。

 さすがにそれは無理!! 一瞬にして決意が揺らぐ。


 だっておっぱいで、しないといけないんでしょ。ぼ、棒を!! 

 僕の脳裏に長ーいダックスフントみたいな犬が浮かんだ。

 それも四本足の間にビッグフランクを抱えているイメージ画像が……。

 まさにホットドック状態だ!!


 どどど、どおしよぉ……。


 僕はごくりと固唾かたずをのんだ。


「うっ、うう~ん……」


 ベットの上で康一が苦しそうに寝返りを打つ。もしや呪いの毒が進行しているの?

 急がなきゃいけない、悩んでる暇はない!!


「康一、もう少しだけ我慢してね、僕が絶対に守るから!!」


 そして僕はシャツの上着に手を掛けた……。



 次回に続く!! (大丈夫なの!?)

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