最強に可愛い幼馴染と平凡な俺の告白予行練習。

海ゅ

最強に可愛い幼馴染と平凡な俺の告白予行練習

 突然だが現在12時25分昼休み、俺こと君嶋優希きみしまゆうきは覚悟を決めて教壇に上がり大きな声でクラスメイトに話しかける。


 「誰か俺の告白練習に付き合ってくれる人はいますか?」


 周りからは笑われたり、辞めとけと言ったりした冗談のつもりだと思ってる奴が大半みたいだが俺は大真面目だ。


 すると一人の手が挙がった。

 その手を挙げた人物を見ると俺を含めた皆は驚きのあまりフリーズした。

 なぜなら手を挙げた人物は銀髪碧眼に整った顔立ち。街で歩けば十人のうち十人とも振り返るほどの美少女。

 それもそのはず、この高校でも二大美少女と揶揄されるうちの一人、黒岩葵くろいわあおいだったからだ。


 彼女はこの告白練習の後の本命なので、いささかハードルが高すぎる。


 「……ねぇ、私でいいのか悪いのか早く答えてよ」


 おっと、一人でフリーズしていた時間が長かったのか答えを葵から急かされる。


 「い、いや悪いどころかこっちからお願いしたいくらいです!」

 「……なんで私にお願いしたいの?」


 そう聞かれる。

 たがまさか本命だからですなんか答えられるはずもなく仕方なく、ほんと〜に仕方なく嘘をつく。


 「葵みたいな美少女相手に緊張せずに告白出来たら誰にだって告白できるからです!」

 「……そう」


 葵は美少女という言葉に反応している!

 効果はそこそこだ!


 「それよりなんで敬語なの? 私たち、おさ……同い年じゃん」

 「それもそうだけど周りからの視線が……」


 何を隠そう俺はこのクラスでは陰キャまではいかなくとも陽キャともいかない。

 つまり、ちゅーと半端なのだ!

 そんな奴が二大美少女と対等に話していたら視線が痛くなるのも必須だ。


 「じゃ、じゃあ、また後で」

 「そうね。また後でね」


 そうして俺たちは自分の席に戻り、授業を受ける準備をした。

 ちなみに隣同士。めっちゃ気まずい。


 少しするとチャイムがなり、教師が入ってくる。そして授業の挨拶をする。


 「きり〜つ、れー」

 「「「「お願いしま〜す」」」」


 授業が始まる。俺は黒板の板書するフリをして隣の葵をみる。すると葵は何故かニヤニヤしていた。

 その様子を見て俺は。


 なんでニヤニヤしてんの? 心当たりはないことは無いけど……さすがにそれは無いはず……。


 そう思いながら授業を受ける。


 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 

 私の名前は黒岩葵。端的に言えば『美少女』と呼ばれているし、私はその事を自認している。


 自分で自分のことを美少女という人はいないという人もいるが私に言わせれば全く持っての風評被害と言わざるおえないと思う。


 ちなみに私には1人の想い人がいる。

 それは私の隣にいる君嶋優希。彼は気にしていないがけど幼馴染で、彼に助けられたことは両手の指だけでなく両足の指、5ダースでも足りないくらい。

 それに加えて助けられる度に「大丈夫か?」や「気を付けろよ」など耳元で囁かれる。

 そんなことされれば純情な少女ならば惚れる確率は100%。異論は認めません。


 そもそも当時子供だったのになんで耳元で囁くなんて高等テクニックができるんでしょう?


 まぁいいじゃないですか。今することは放課後のユキの告白練習とやらに付き合う。この私を差し置いて誰に告白しようと言うのだね。ユキよ。


 まさか私? 練習相手が本命なの?

 キャッ! カッコイイよ! ユキ!


 私は内心1人で盛り上がっていたので授業所ではなかった。

 なので教師の言葉は全くと言っていいほど耳には入らなかった。


 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 

 今日の授業はあっという間だった。いつもの3倍くらいの体感スピードくらい。

 緊張する時は普通逆だけど俺は普通の逆なんだ。ややこしいけど。


さて、現在時刻は午後4時。葵との告白予行練習まであと30分をきるところだ。

 

 俺にはしなければならないことがある。

 それは……特にない。ことも無い。と回りくどい言い方になっているが気持ちの整理くらいなものだからだ。

 

 それからしばらくソワソワしているともう午後4時20分。葵との約束の時間まであと10分だ。

 なので俺は移動を始める。場所はもちろんこのての小説でテンプレの屋上!

 やはり告白と言えば圧倒的屋上!


 ……とまぁ俺はかなりムードを気にするタイプ。

 なので俺は告白場所は屋上信者なのだ。


 そんな無駄なことを考えているとスマホに通知が来た。

 確認すると葵からだった。

 そのメッセージには一言、『たすけて』と葵がいるであろう場所のみ。

 変換すらない、大慌てで打ったことが分かるそんな雑な一言。

 俺はこのメッセージに危機感を募らせ、急いで屋上を後にする。


 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「そこのおねーちゃん。俺たちと遊ぼうよ」

「俺たちと『イイコト』しようぜ。気持ちいいよ?」

「ギャハハハ! お前それは気が早いって!」

「……」

「何とか言えよ。そこのねーちゃんよぉ!」

「やっちゃうよ?」

 

 私、黒岩葵は絶体絶命のピンチに陥っている。

 それは私を取り囲む数人の男たちの存在のせいだ。

 その男たちは横にも縦にも大きく、喧嘩では女の私はもちろん勝てるわけもない。

 そして、この男たちの目的は私……というか私の身体だ。

 私はウンザリする。

 こういうことが起きるたびに助けてくれた人を私は思い出す。

 黒髪で普通位の身長で顔も平凡。だけど……私だけが知っている。彼は一途で時折見せる拗ねる顔や笑顔がカワイイことを。

 こんなことになるなら……やっておけば良かったな。告白。


 そして私は目を閉じる。覚悟を決める。

 もうこんなのはイヤ!

 ……助けてよ、ユキ!

 

「フン。もうヤっちまうぞお前ら」

「「「おう」」」


 私に男たちの手が伸びて私に触れそうになった時、私に触れそうだった1人の男が吹っ飛んだ。

 それをやったのは……黒髪で普通くらいの身長で、顔も平凡。

 だけども、誰よりも頼りになるその背中には、何度も助けてくれたその背中には見覚えがあった。

 

「……ユキ!」

「お前ら……俺の葵に触れるな!」


 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「お前ら……俺の葵に触れるな!」


 危機一髪間に合った。葵を守ることが出来た。

 その事に喜びを感じながら男たちに俺は向き合う。

 

「なんだお前、そんなにやられたいならやってやるよ。やっちまえお前ら!」


 そうリーダー格らしき大柄な男が指示を出すと取り巻き達は俺に襲いかかってくるがその全てを避けて、首に手刀を入れる。

 そしてその次の瞬間には、取り巻き達は気絶していた。


「な……何が起こったんだ?」


 リーダーの男は俺のしたことに絶句している。

 だが、種も仕掛けもない。俺は全ての攻撃を避け、首に手刀を入れ気絶させただけに過ぎない。

 誰にでもできる。そんな平凡なことだ。もちろんそれには鍛錬をしたらという注意がつくがな。

 

 そう、俺は鍛錬をしている。それはもちろん葵を守るためだ。

 葵は昔から美少女でトラブルメーカーで好奇心旺盛、仕舞いには思い込みも少し激しいと来た。属性てんこ盛りなだけにかなりのトラブルに巻き込まれたり、性犯罪被害に合いそうになっていた。

 それを見かねた俺は知り合いの道場に通い、強くなった。全ては葵を守るためだけに。

 その時、俺の恩師である道場の師匠にはこう言われたのだ。

『男にはしては行けないことが二つある。一つ目は不味い飯を作ること。二つ目は女と子供を泣かすこと』と。

 その時の言葉は俺に深く突き刺さった。

 これが座右の銘になるくらいには。


 思考を切り替えて俺はリーダーに向き合い、こう告げる。


「葵に手を出したお前たちは許さない」

「手は出てないけどね、まだ」


 葵からのツッコミが入るが全くもって気にしない。

 そうして俺はリーダーの後ろに回り込み、取り巻きと同じように手刀で首を打ち、気絶させた。


 よし、これでもう安全か。そう思った直後。


「ユキ〜〜~! 怖かったよぉぉ」

「グフゥ!」


 普段鍛えている俺でさえ厳しい不意打ち。

 ボキッっと鈍い骨のなる音が聞こえたぞ?

 しかし、俺の体よりも葵を優先する。


「もう大丈夫だぞ、葵」

「……うん」

「落ち着くまでこのままでいいからな」

「……うん」


 俺は励ます。

 今までこういう大柄な男たちに囲まれるという経験がなかっただけにいつも真面目で自分を律している葵でも少し辛かったようだ。


 そして数分が経ったのち、葵が顔を上げる。

 涙と鼻水でくしゃくしゃだが、俺が渡したタオルで顔を拭いたため元の美少女の顔に戻った。


 葵はその銀髪を揺らしながら俺に感謝の一言を述べる。


「……ありがと」

「葵のためだ。当たり前だろ」


 そう返す。

 心無しか葵の顔が少し赤いが泣いたあとだからしょうがないだろうなとひとりで納得する。

 だが、次の葵の一言に俺はびっくりするではすまないくらい驚くことになる。


「……私ね好きな人がいるの」

「は?」


 驚きすぎて素が出てしまう。

 葵の前ではカッコよくするつもりだっただけに素を出したくはなかったが仕方ない。

 それほど驚いていたのだから。

 しかし、そんな存在を俺が許すはずもない。


「誰だそいつ! 名前を言ってみろ、俺が葵に相応しいか確かめてきてやる!」


 俺のそんな様子に葵は微笑を浮かべながらその名を言うべく口を開いた。


「その名前はね、君嶋きみしまって言うんだよ?」


 その名前に俺は訝しむ。

 俺と同じ名前だと? いい度胸だ。俺の葵を誑かしたことを後悔させてやる。

 俺はそう息巻く。

 そして下の名前を聞くべく葵に催促する。

 

「下の名前は?」

「下の名前は……優希ゆうき。私の恩人で幼馴染でいい理解者で可愛くてとーっても好きな人!」

「え?」


 俺の頭の中ではかつてないほど混乱していた。

 え? 俺? なんで? 片思いじゃなかったの? 葵の方から告白(?)させてしまった。などなど。

 そんな思いが溢れだしてくるがひとまずは葵に返事をしなければ。

 そのために俺は葵と真剣に向き合う。


「葵。俺はお前のことが……昔から、何年も前から好きだった。だけど、この思いが俺だけだったら、この関係が壊れてしまったらそう思うと告白したいって気持ちや好きって気持ちを押し殺してきた。けど……違うんだろ? 葵も俺も……両思いなんだよな? 俺と同じ気持ちなんだよな?」


 俺は何時になく弱気になっていた。

 どんな困難があってもそうそう動じなかった俺だがこのとこだけは動揺していた。

 そして、その答えを葵に求めた。


「うん。私もそう思っていた。この関係が崩れたらって。そう思うと私も怖くて……。ユキと関わることが私にとって希望になった。この気持ちは同じなんだよね?」


 俺は葵と思いを重ねる。


「ああ、一緒だ。俺も葵が好きだ。一生守ってやる。だから俺と……付き合ってくれ」


 葵は泣きながらこう答える。


「一生一緒だよ?」

「ああ!」


 そうして俺と葵は十数年という時を超えて結ばれたのであった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 そして。

 俺と葵は手を繋ぎながら学校へ行っていた。

 もちろん俺みたいな平凡な陰キャが二大美少女と一緒に、しかも手をつなぎながらとなれば周りからの視線を集めること必須だが見られる度に葵が有無を言わせない視線で黙らせていた。


 そうして教室に着くと、俺の悪友、早川 零夜はやかわれいやと葵の親友、未無草凛みなくさりんが待っていた。

 そして俺たちを見るなり安堵した様子だった。

 そしてふたり共々口を開く。


「はぁ。やっと付き合ったのかお前ら。周りからすればあんなイチャイチャしていたのになんでくっつかないのか不思議でならなかったぜ」

「そうそう。葵も良かったね。優希! もう離しちゃダメよ! 葵が何年待ったと思ってるのよ!?」

「はい!」


 有無を言わせない問だった。

 ちなみにこいつらは付き合っている。

 なのかわ知らないが、かなり息が合う。こういう時に結託されると厄介極まりない。

 俺はそう思うのだった――――

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