第33話 サークル(仮)で遊びに行く 2

 アトラクションが終わり、お昼ご飯を食べることにした。すっかり蓮も体調が回復しており、雪葉も冷静になったからなのか明るい顔を上げている。ご飯を食べた後はみんな楽しく遊園地が過ごせそうだと思った。


 お昼ご飯を食べる為に移動を開始したがどこに行くのかを決めておらず園内を迷走していた。マップを見てどのお店に食べに行くかを決める。


 結局ピザやハンバーガー、カレーなど様々な食べ物が置かれているお店に行くことに決めた。


 俺と雪葉はそれぞれ違う種類のピザ、星さんと雪斗はハンバーガー、蓮はチキンカツカレーを食べることになった。


「ねぇ、悠。ピザ一切れ交換しない? 私もそのピザ食べてみたいし悠もこのピザ食べたくない?」



 俺が食べているのはサラミの乗ったピザで雪葉が食べているピザはマルゲリータと呼ばれる種類のピザだった。確かに一切れくらいは交換しても良いなと思ったので交換することにした。


 俺は先に自分の買った種類のピザを一切れ食べた後、雪葉に貰ったマルゲリータを食べる。両方美味しかったし、お腹を満たすことが出来たので満足だった。

 他のメンバーも食べ終わったところで再び動き出すことにした。


 食後ということもあり次は出来るだけ落ち着いた乗り物に乗りたいと話し合った結果、地上十メートルほどの高さで園内をぐるーっと囲むように一周している機関車の乗り物に乗ることにした。

 平坦な道を一定の速さで走るこの乗り物は遊び疲れて休憩する為に乗るものとしてファミリーで来ている人たちにも、若い人たちにも人気があるようだった。


 俺たちはお店を出てそのアトラクションのある場所へ向かった。

 アトラクションに着いた時、人がかなり並んでいたので最後尾に続いて並ぶ。

 しりとりや指遊び、雑談なんかをして待ち時間を過ごした。かなり並んでいた列だったがあっという間に乗り場に着いた。

 この機関車の乗り物は昼ご飯前に乗ったボートの乗り物と同じで六人一列に乗れる仕様だったので全員同じ列に乗ることが出来た。


 機関車は一定のスピードでレールの上を走っている。俺は園内を歩いている人、ジェットコースターが猛スピードで駆けている所、舞台でショーをしている瞬間をのんびり眺めている。


「悠、ちょっといいかな」


 涼しい風を顔に受けながら園内を見渡している俺、列車がちょうど乗り場から見て半周を迎えた辺りで隣に座っている雪葉に声を掛けられた。


「どうしたんだ」


 風に髪を靡かせながら俺は雪葉の呼びかけに応じる。


「この後、二人で観覧車に乗りたいんだけど……ダメかな」


 さっき呟いていた観覧車のお誘いが今来た。

 紫都香さんとはまだ付き合っていないので浮気ではないと自分に言い聞かせて雪葉の誘いに対して首を縦に振った。


 乗り物を降りてから他のメンバーにに十分ほど二人で抜け出す事を伝えてから観覧車に向かう。

 観覧車は回転効率がいいのか人気がないのか、並んでいる人は少ない。俺は雪葉と二人で密閉の他に誰も乗ってこられない小さな箱の中に入る。


 頂点に近づいた辺りで雰囲気を変えた雪葉は話始める。


「ずっと、好きでした。初めて会った時から私を一人の女の子としてヘンに距離を取らずに友達として接そうとしてくれる悠の事が好きでした。私と、付き合ってください」


 雪葉からの告白に俺は頷くことが出来なかった。もうすでに心に決めた人がいるからだ。雪葉の好意には今ではなく少し前から気づいていた。なのに告白をさせるまで断ろうとしなかった俺は自分の性格が悪いと思った。


「ごめん。雪葉の気持ちは凄い嬉しかった。でも、その気持ちには答えられない。俺はもう心に決めた相手がいるから……」


 重い空気を割るようにして観覧車が開く。その瞬間、俺の唇に柔らかい感触が触れる。


「二度目のキスをした最初の相手は私だから。振られちゃったけど、それだけは覚えていて欲しい。……それととしてこれから大学ではよろしくね。私ちょっと皆の元に戻るの、遅れるから、皆に言っておいて……」


 俺が戻ってから皆に雪葉が遅れて来ることを伝えた。

 その後、雪葉は何事もなかった風に戻って来て、俺にも平然と話しかけて来る。


 最後は写真を撮ったりして遊園地を満喫することが出来た。

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