第34話 兄の借金の担保として 1
遊園地から帰って来た次の日、俺は大学で蓮に呼ばれたので学食に来ていた。俺は紫都香さんのお弁当を食べ、蓮は学食で売っているきつねうどんを食べていた。
「それで、今日はどうしたんだ」
お昼時から少し経って生徒も減っており周りの席も空いている。そんな中で俺は蓮に呼び出された理由を聞くために口を開いた。
「実はお金を貸して欲しくてさ……」
「バイトをしてるのにお金がないのか?」
俺はバイトをしているのを知っていたのでお金が無くなるなんてどんな理由があるのだろうと気になって問うてしまった。
「実は給料日前なのにお金を使ってしまって、でも明日に買いたいものがあって、それで今日は頼む為に呼び出したんだ」
「理由は分かった。問題はお金の額といつまでに返してくれるかっていうことが常識の範囲内なら貸しても良いぞ」
出会ってからまだ一カ月程度しか経っていないが一緒にサークルを作るのに協力もしてくれているし、遊園地にも行った。
そして最初に同性の友だちになった相手である。条件付きだがお金を貸しても良いんじゃないかと俺は思った。
「それはもう既に考えてある。貸して欲しいお金の額っていうのは一万円。返すのはオレの次の給料日。それと、返すまでの期間はオレの大切な者を悠に預ける。これでどうかな」
一万円っていうのは少し高い金額だが、貸せない額ではない。それに次の給料日には返してくれるらしい。
付け加えて蓮の大切なモノを預けるという保証付きなので貸しても良いと思った。でも一つ確認したいことがあったのでそれを最後に確認する。
「その給料日っていうのはいつなんだ」
俺も直近での出費は無いが、万が一次の給料日が来月とかならば少し考える必要がありそうだと思ったので最終確認を取る。
「えーっと、ちょっと待って……今日から数えて三日後だ」
買い物をしたい明日の次の日、明後日だ。なら一日我慢すればとも思ったが明日が何かの発売日なら明日しか買えないかもしれないと思い、口を紡いだ。
「なら問題ない。……はいこれ」
俺はお金を貸すことに了承し、カバンに入っていた財布から一万円を取り出して蓮に渡す。
「ありがとう、絶対に返すから。オレの大事ないもう……じゃなくて者を引き取りに行く時に返すよ」
蓮はお金を受け取ると感謝を身体で表すかのようにペコペコお辞儀をしている。
「オレの大事な者はお楽しみってことで。買い物のついでに悠の家に寄って大事な者を預ける事にするから」
俺は今日お金を貸して、蓮は明日買い物に行き、そのついでに俺の家に寄って大事なモノを渡して、明後日にお金を返しに来る。
「じゃあ今日はこれで解散にするか」
俺はお弁当の蓋を閉じながら蓮がきつねうどんを完食していたのに気付いたので用が済んだこともあり解散することにした。
俺は大切なモノが何かは分からないが動物とかだった場合、紫都香さんになんて説明しようか、いや動物なんて渡してくるはずはないだろう。など言い訳考えたり何を渡してくるのかを予想して帰路に就いた。
俺は家に帰って来て普段のように夕食を作り、風呂を掃除し、大学の課題に取り組む。時刻が進むにつれてすべきことがドンドン終わって行く。
何もすることが無くなりテレビをつけて面白い番組がやってないかを確認している時、紫都香さんが帰って来たのだろう。玄関の方から音がした。
俺は玄関へ向かい『おかえりなさい』と紫都香さんを出迎えた。『ただいまぁ』と言いながら紫都香さんはラフな格好に着替えるべく洗面所に向かった。
俺は紫都香さんのカバンを受け取るとソファの横にカバンを置いて料理をキッチンから運び、夕食を食べる準備を整えた。
しばらくして着替え終わった紫都香さんが洗面所から出て来る。短パンに薄いスウェットを着た紫都香さんが席に着く。
「それじゃあ食べましょう」
「いつもわたしが帰って来るのが遅いとき、作ってくれてありがとう。そのおかげでわたし生活が凄い楽になった。本当にありがとう」
俺が料理を作ったり家事をして紫都香さんを待つ日は毎回こんな風にお礼を言ってくれる。それも嬉しくて、つい頑張ってしまう。
「いえ、一緒に住んでいるんですからこのくらいして当然です」
会話を交えながら食事を進める。
俺は今日、あった事も話した。
「……それで、大事なモノが何かを教えてくれなかったんで、もし万が一それが生き物というかペットとかだったらどうしようかなと思いまして……。紫都香さんは何だと思いますか」
紫都香さんに問うような形で生き物の可能性も示唆させることで、生き物であった場合に、少しは予想していたということで預かってから知るよりもマシになるだろうと思った。
「……んー、モノって言っているし、やっぱりものなんじゃないかな。あ、でも生き物もモノって言うのか……。どうして秘密にする必要があるんだろうね。いや秘密にする必要があるんじゃなくてわざと秘密にしただけなのか……」
疑問を抱えたまま翌日になる。今日は必修も選択した講義もなかったので今か今かと蓮が家に訪れるのを待っていた。昨日はすぐ解散してしまったので蓮は家を知らないのではないかと今になって思った。
家の方向だけ知っているが間違えずに来れるのかと思い、連絡を取るが帰ってこない。仕方なく間違えずに来られる事を祈りながら蓮の到着を待つことにした。
紫都香さんは今日仕事が入っているらしいので今は俺が家に一人の状態である。
ずっと玄関で待っている訳にもいかないのでサブスクでアニメを見つつ、スマホでvtuberの配信を垂れ流していた。
その時、家のインターホンが鳴る。遂に蓮が来たのか、と思いモニターを見ると同時に『待ってたよ』とモニターに向かって声を発すると『あっ……』と言う少女の様な高い声と女の子の姿が耳と目に入って来た。
モニターに映る女の子は…………俺が助けた女の子だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます