転生した俺はチートスキル『ダークヒール』を駆使して異世界を冒険、したかったのに身分証ないから街入れないしツノと尻尾生えたメスガキにたかられるしもうヤダお腹痛い誰か助けおい誰がザ〜コ♡だブッ飛ばすぞ⁉︎

美味いもん食いてぇ

第1話 い、異世界転生⁉︎


 ――異世界転生――それはこの世に居場所がない、全ての隠キャ、ボッチ、可哀想な奴らの夢の果て。


 トラックに轢かれ、神にチートスキルを貰い、冒険者になり、可愛い女の子達と旅をして、共に危険を乗り越える内にあんなことやこんなことを……ゲフンゲフンっ、そして魔王を倒し、世界を救うのだ!


 ああ、最高じゃないか。この夢が現実なら、どれだけ人生楽しかったか……。




 斯く言う俺も、そんな現実を逃避する可哀想な奴らの1人である。


「…………はぁ、」


 憂鬱な高校への登校中。俺は持っていたラノベを閉じ、小さく溜息を吐いた。


 田中たなか 晴彦はるひこ

 それが今は亡き父と母から貰った、愛すべき俺の名前。


 黒髪、黒目、身長165㎝、17歳、パッとしない顔つきにパッとしない性格、おまけに両親が他界、もう転生される要素しかないと言うのに、俺といったら……、


 学校とは名ばかりの拷問に毎日毎日せっせと通い、

 誰とも話さずお昼を迎え、

 便所でコンビニ弁当を食い、

 机に突っ伏し午後の授業を終え、

 誰とも話さず下校する。


 はっきり言って生きている実感がない。


 まるで鉄のおもりを引きずって歩いているような感覚。こんな現実に何を夢見ろと?


 だから俺達隠キャ、陰に生きる者達は、こことは別の世界に生の実感を探しに行くのだ。


 断じてハーレムでウハウハとか、チートスキルで俺何かやっちゃいました?とかやりたいわけではない。

 ただ、ただ俺という存在を認めて欲しいんだ。……ん?努力?努力はなるべくしたくない。当然だろ。


「…………はぁぁ、」


 俺はもう1度溜息を吐き、燦々さんさんと鬱陶しい太陽に手をかかげた。



「……俺もいつか、この世界に馴染める日が来るのかね、」



「え、何あれ?」

「きも」

「行こ行こ、関わっちゃダメな人だよ」


 いきなり角から現れたJKがそそくさと去ってゆく。


 ……はい終わった。俺の学校生活終わった。……いや待てよ?元から終わってんだから大差ないか!ははははははファック。


 俺はサッ、と手を引っ込め顔を伏せスタスタと先を行く。


 これだから現実はクソだ。これだからこの世はクソだ。


 あぁ、今日もクソみたいな1日が始ま「――ッビャルべっップギョっっ⁉︎」




 ――そうして俺は、突っ込んできたトラックにはねられ、綺麗な放物線を描きド派手に死んだ。



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