24.穴の向こうに何があるのか

 異世界に新たに現れた勇者。それはその名にふさわしくない、邪悪な奴であった。

 奴。新魔王ガカイヤー。元の世界での名前は我櫂谷独尊。


 奴は権力者の息子であった。

 人権を叫び散らかし、与党のセクハラ・パワハラを執拗に糾弾する反面、自分は支持団体や認可してやったNPOでセクハラ・パワハラを繰り返しては被害者を破滅に追い込む鬼畜外道の野党もとい野盗議員の、その息子であった。

 親に似たのか小学校の頃から学校を恐怖政治で支配し、気に食わない奴は野盗と狂育委員会とマスゴミのスクラムで更に破滅させる、親より恐ろしいキ〇ガイ。


 そのため地域から逃げ出す家族が続出する。

 すると今度は少子化対策と称して補助金を獲得し大部分を一族で占有する、無敵の外道。

 学校で合法ドラッグを売りさばき巨額を設け、気に入った女生徒を奴隷にして、上部が腐敗した県警察も手を出せず、現行犯の現場ですら見逃される。


 この男の娯楽は「他人を破滅させる事」「正義の名の元に悪を成す事」。


 自分は他人より○○で××、だから自分は優れている。

 自分の悪を暴けず黙認し金をつぎ込む政府や警察こそが悪。

 コイツ自身が何をしたい、そんな前向きな感覚は無い。他人を見下すだけ。他人の悪を嘲るだけ。

 そして、自分が無い。


 反吐が出る程に即座にブッ潰したくなる野郎だ、だが今は待とう。


 奴はダークナーの子分達だった魔族の敗残兵達をまとめ上げ、魔国に派閥を作ろうと企んだ。手堅い戦略だな。

 だが奴の目論見に叶う程、魔国の男たちは頼もしくなかった。

「きゃータスケテー」

「ごめんなさいー」

「おまわりさんこいつですー」

 男達は逃げた。魔国におまわりさんいるんだ。

「何だコイツ等…」あまりのヘッポコ振りと逃げ足の早さに、さしもの外道も唖然とした。

 奴は作戦を変更し、魔族や人族の情報収集に切り替えた。

 そして知った、今の魔王がちびっ子ロリっ子で人族と仲良くしたがっている事を。

「面白れぇ。ブッ壊してやる」


******


「なあレイブ。君達はどうやって集まったんだ?」

「愛の力よぉ」「君には聞いてない」「キモデブオヤジには解らないんですう~」

「おお、やっとクレビーに戻ったな?」「何ですってウッキー!」

「俺達は、大神官様に引き合わされました。

 そして各地を彷徨い、聖剣や聖杖、聖槍と聖盾を手に入れて、四天王を倒し、魔王を倒したんです」

「て事は奴も」

「恐らく…」

「わたくし達の力では、あの武器なしには四天王も魔王も倒せませんでした。

 もしあのガカイヤーという者が勇者の武器を手に入れたら、大変な脅威となるでしょう」

「どうにかして止めなきゃ」ウッキーがまたマトモになっちゃったよ!

「先制攻撃しかないか」レイブが嫌々ながら、といった風に呟いた。3人が寄り添う。

「自分から戦いを仕掛けるのは正直言って嫌だ。でも魔導士殿が邪悪な奴と見た者にあの武器は渡せない。

 きっと多くの人が殺されてしまう。だからその前に、

 奴を殺す」

 レイブは覚悟を決めた。3人はレイブの拳の上に手を乗せた。

「私は、君の決意を応援する!」

 私もその上に手を乗せた。

「イヤー!キモオヤジ触んなー!」一番上に手を乗せてたクレビーが喚いた。台無しである。

 笑うなレイブ。


******


「ササゲーさん、ペディちゃんの鉄仮面宜しくね!」念話でササゲーに告げるクレビー。

「ペディちゃんね、ササゲーさんの後ろで『許さんぜよ!』だって!カワイイね!」微笑みながら教えてくれた。微笑ましいなあ。

「マドーカーフォワードオン!」また何って言ってるかわかんないアナウンスがマドーベーサーの発進口に響く。

 格納庫が開きマドーカーがターンテーブルに進み出る。

 シルディーが運転し、私がナビを務める。他人の彼女と二人っきりなのは抵抗があるなあ。

 ジャッキが上がり、マドーカーが地上へ出る。

「サンキュー、グッドラック」とアナウンスに急き立てられマドーカーは爆走する。

 目指すは魔国、ガカイヤーの屯する元ダークナー基地。

「あのクソ野郎がどんな策を練って出て来るかだが、サッサとブッ潰そう!」

「魔導士殿でしたら奴がどの様な策を取るのかお判りなのではないかしら?キャッ!」

 トリスターの車輪でも岩に乗り上げたら揺れる。色々大きなモノも揺れて当たるので勘弁して欲しい。

「大体は解るけど、確かめたい事がある」


 作戦指令室にはホーリー。

『マドーカーが魔国に付いたわ。レイブ、クレビー、低空飛行でお願いね』

 格納庫の扉が開き、マドーキーが出現する。

「ビークイックテイクトゥーザバスター!レッツゴー!」

 またまた何て言ってるか分かんないアナウンスが響いて、レイブの乗るマドーキーが離陸した。

 続いてもう一機、クレビーの乗るマドーキーが格納庫から現れ、離陸した。

 ワンダバダバ。


******


「奴の嫌な魔力を感じる。場所は私達が四天王と戦った所」

「あ"~嫌な記憶が蘇るわ~」

「記憶だけならいいけどなあ」

「止めなさいよー!」

「多分奴はアンデッドを呼び出してテメェの配下にするつもりだ。

 レイブは君達が戦った敵の事を思い出してくれ。

 クレビーは過去の四天王の事を思い出せるか?」

「命令すんなー!キモデブハゲオヤジ!」「やっぱりクレバーじゃないクレビーだ。可愛いぜー」

「ゲエーキモイキモイ!」「魔導士殿!クレビーは僕の妻です!」「はっはっはー元気だねー」

 軽くアイスブレイクをかまし、マドーカーの魔力弾で荒野に立っているガカイヤーを撃つ!

 しかし攻撃は弾かれている!だがそれでいい!


「奴の魔力の集中力を削ぐだけでいい!出て来る奴もそれだけ弱体化できる!」

 二機のマドーキーは交互に攻撃し、反撃できない様フォローし合ってガカイヤーを撃つ!

 更に私がマドーカーのルーフへ上がって機銃座からヘッドショット!だが黒い鎧は魔力で強化されたのか攻撃を弾く!


「俺に歯向かう馬鹿野郎共。ここは古戦場だ。俺の部下を呼び出し…」構わず砲撃!爆発!

「うるせえ!テメェ等の相手はコイツだ!」

 マドーキーも攻撃を加えるが地面から現れたのは…


 3体の白骨。「砕いて!」ホーリーの叫びを受けて攻撃するが通じない!

「無駄だ無駄だ!勇者の力なめんなよ!」

 黒い靄に包まれた白骨に人の形が宿り、黒い電が攻撃を遮る!

「あ…嫌な感じが…消えた?!」ホーリーが呟いた。


 そこに立っていたのは、三人の美女、いや美少女だった。

 生気の無い虚ろな瞳の三人。

「いい女じゃん」ガカイヤーがどこに持っていたか甲冑を放り投げると、三人に装着された。

 ダークナー4人衆ならぬ、ガカイヤー4人衆!

「おい女共。俺の為にバラバラになるまでせいぜい戦え」

 跪く3人の少女、いや、アンデッド。

 

 レイブのマドーキーが着陸し、レイブが飛び出した。

「その子達はかつての勇者と共に戦った仲間だろう!」

「お~お~そん位は解るかあボケナス勇者でもよぉ」

「人々のため戦った彼女達の魂を汚すな!」レイブの怒りが渦巻く。

「偉そうに言うならコイツらバラバラにして葬ってやんな!」

 かつての勇者の仲間だった3人の少女達がレイブに襲い掛かる!

 優しいレイブには彼女達には手は出せないだろう。私は(中略)


「うおまぶし」

 等身大でも巨大な拳をガカイヤーにお見舞いし、三人衆の足元を光線(光る魔石)で吹き飛ばした!

 マネキンの様に受け身を取る事もなく吹き飛ばされて倒れる、遥かな過去に死した少女達。

「殴ったね、親父にも」うるせえ!再度パース付パンチ!無様に転げまわるガカイヤー。

「女共!俺を護れ!」命じると立ち上がり、ヤツの前に立ちはだかる三人衆。

 蘇った死体なので殴ろうが斬ろうが…だがそんな事は出来ない!

「へっ!甘っちょろい奴だぜ!よお~し、次の武器を召喚してやろう」


 コイツは外道だが情報収集能力と、観察力と、記憶力はバケモノ並だ。全く天はこんな畜生外道に凶悪な武器を付けてしまったものだ。

「バンサーイナー、ラメアラー、バーンサバンサイナイーダ!オオー!」

 何言ってんだかわかんない呪文を唱えるガカイヤー!

 地面に魔法陣を現出させ、自分を呼び出した魔法陣の一部を変更し、ヤツは勇者の武器を召喚し始めた!

 そして魔法陣の上空に、「穴」が開いた!


「へっへっへ!私はこの瞬間を待っていたんだ!」と宍〇錠っぽい事を言うイセカイマン。

「あ"ァ?」不愉快極まりなさそうな顔でイセカイマンを睨むガカイヤー。

「時間よ~、止まれ!」


 その瞬間、この世界の時間が停止した。まあ、変身の時毎度毎度やってるんで新鮮味はないが。

 上空に開いた穴は、この世界に勇者達の武器を送りこむ用意が出来ている。


「とぁー!」篠〇三郎っぽい掛け声と共に、ジ〇ン・ジャック・ペリーの版権フリーなシンセサイザーがグニュグニュ音を立てる感じの空間に飛び込んだ!

 ダーダバダーダバ!


 その空間には、様々な風景が流れ去っていた。二人のアイドル歌手が野球服みたいなホットパンツで踊って歌っていたり、チョンマゲ結った侍がチャンバラしてたり「懐かしいわ~」なんて眺めていたら、目の前に金属の棒が輝きながらバラバラと迫って来た!

「アイアンウォール突入!」異次元を繋ぐ穴から出る時にこの鋼鉄の棒の列と衝突し、これを押し曲げて別の空間に到達するのだ!…そうだ。


 イセカイマンは美しいオプチカルな映像で鉄のカーテンをへし曲げて、三次元世界に現出した!


 果たしてこの空間の先にあるものは過去の世界か?夢溢れる国か?!


…では また来週…

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